UELのエンジニアリング・ソリューション
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2024年9月発行 Vol.44 No.2 通巻161号UELのエンジニアリング・ソリューション
製造業を取り巻く環境は大きく変化しています。各企業は人材育成や技術伝承に課題を抱える中で、製造技術の進化や素材の多様化に対応し、業務革新や生産性向上によって競争力を高めて、持続的な成長を実現していかなければなりません。UEL株式会社は、BIPROGYグループの中で主に製造業向けのエンジニアリング・ソリューションの企画・開発・販売・支援および関連サービスを提供しています。本号では、UELが提供するエンジニアリング・ソリューションを紹介します。
製造業顧客における価値創造を実現するDX戦略
製造業を取り巻く環境は目まぐるしく変化し,日本のものづくりが大変革期を迎える中,DXを実現して変化に対応しようと各企業が様々な取り組みを進めている.その中でも金型メーカに代表される中小企業では,DXに向けたシステム化やソリューション選定,データマネジメント,データ連携・活用に活路を見出しながらも対策に苦慮する日々が続いている.顧客の付加価値を高めるDXを実現するため,UELは,データマネジメントからデータ活用までの方向性をデータ連携基盤の整備や活用ソリューションへの連携といった形で見出し,技術情報やデータの見える化,プロセスの最適化,設計から製造現場までの業務効率化・自動化を実現するソリューションを展開している.その効果は,ビジネスモデルの変革や経営の高度化といった事業機会の拡大である.UELのDX戦略は,エンジニアリングプラットフォームを柱として,人,モノ,コトをデジタルでつなぐことで,顧客の全社プロセスを最適化し,新しいものづくりのプラットフォームとして製造業を下支えして,日本のものづくりの価値を変革や,未来へつなぐDXを実現していく.
プレス金型製作期間短縮を支援するUELの取り組み(CADmeister/PRESS機能の紹介)
近年,カーボンニュートラルや安全基準の厳格化により自動車ボディの骨格部品への高張力鋼板(ハイテン材)の採用が増加している中で,金型納期の短縮や熟練技術者の減少等により,プレス金型メーカを取り巻く外部環境は大きく変化している.これらに対応していくため,プレス金型メーカはプレス金型設計製作プロセスを見直し,効率改善に取り組んでいる.UELはプレス金型設計製作プロセスの全工程でモジュール提供している強みや,CADmeisterユーザとの密接なリレーションに基づくニーズの把握,CAEベンダーとの協業等によって,3Dデータを正とした新たな金型づくりを提案している.
成形品の取り出しに着目したMOLD金型設計効率化の取り組み
樹脂射出成形のプロセスには,金型内への樹脂の充填,保圧,冷却,型開,離型がある.成形品を金型から取り出す離型工程では,成形品が金型に密着して残ろうとする力(離型抵抗)や,成形品を突き出すときに部品へかかる荷重バランスを考慮して,突出部品を配置する.しかし,離型抵抗や部品の荷重状態は定量化することが難しく,突出部品をどこに配置するかは熟練者の経験則に頼ってきた.そこでUELでは,株式会社先端力学シミュレーション研究所からソルバの提供を受けて離型抵抗や部品の荷重状態を定量化する解析機能「離型解析(CAE-EJECT)」を開発し,2021年にCADmeisterのオプション機能としてリリースした.そしてその離型解析と連携させて,突出部品の自動配置機能を今後提供する予定である.
切削加工の無人化と加工データ作成の自動化に向けた取り組み
金型製作の納期短縮のため,金型業界では無人加工の実現や加工データ作成工数の削減等の取り組みが行われている.したがって,CAMシステムのメーカーには切削加工の無人化を実現する加工データを作成する機能,および加工データ作成の自動化機能を開発することが求められている.金型製作における切削加工工程は,金型部品毎に加工要件が異なるため,CAMシステムに求められる機能要件も異なる.CADmeisterのCAMには,機能要件に応じた専用機能が揃っており,最適な加工データを作成することができる.また,製品と工具との干渉を自動で回避し,干渉回避した箇所の加工残りを安全な工具系で加工するパスを自動作成する機能を開発することで,加工機オペレータが担っていた作業をシステム化し,無人加工をできるようにした.さらに,加工データ作成の自動化を実現する機能を開発することで,データ品質の安定化と加工データ作成工数の削減を実現した.
IoT-Visualizationを活用した金型IoTの取り組み
成形加工(プレス加工,樹脂成形加工)では,新材料対応や成形の高精度要求により,これまでの勘と経験によるものづくりが通用しなくなり,IoTによる加工のデジタル化や可視化への期待は高い.UELはパートナーと共に金型関連のセンサーを開発し,センサーで取得したデータをIoT-Visualizationで3次元的に可視化して,金型設計の最適化や保守時期の予測に活かしている.また,データを分析する機能として金型IoTプラットフォームをユニアデックスと共同開発し,成形加工に関する業務の効率化に寄与している.
3次元形状へのAIの取り組み
画像や言語モデルに対するAIが隆盛している一方,学習の対象に3次元の形状データを扱った事例は広く知られていない.3次元データの利活用促進が活発な複数の業務領域において,点群の深層学習の適用範囲と有効性を実証した.設計製造フィーチャの認識では,CADの面形状から生成した点群データの学習で自動認識が可能になる.類似形状検索は非AIの技術がソリューションとして有効でありつつも,全体形状検索において点群AIによる特徴量が匹敵する性能を持っており,非構造データへの注目すべきAIの適性を示唆している.歯科臨床では,点群AIによるランドマーク点の推定という新手法を開発し実用化を進めている.
3Dプリンタ用スライス処理ソフトウエア「AMmeister」の紹介
現在3Dプリンタは,製造あるいは試作として,工業分野やホビー向けなど様々な分野で活用されている.その3Dプリンタの入力データを作成するのがスライス処理ソフトウエアであり,3Dプリンタ特有の課題に対応する機能やデータ編集機能を備えるのが一般的である.UELは,3Dプリンタのスライス処理を行うソフトウエアとしてAMmeisterを開発した.特にスライス機能では可変ピッチ・可変複数輪郭,サポート形状作成機能では効率的なアルゴリズムとサポート形状の拡充,データ編集機能では位置合わせ/自動配置やZ軸方向補正などの工夫を行い,性能も十分なものとなった.今後は未着手のプリント方式への対応やより多くの分野への進出を計画している.
ポリゴン編集ソフトウエア「POLYGONALmeister」の紹介
ポリゴン編集ソフトウエア「POLYGONALmeister」は,UELと理化学研究所との共同研究成果を取り入れて開発された.設計者や研究者といった熟練の専門家が操作することを前提とした従来のCAD・CAMシステムと違い,操作に慣れていない利用者でも簡単にポリゴンデータの編集作業ができるように構成されている.POLYGONALmeisterは,UELの主たる活動領域である製造業だけでなく,土木測量分野や医科歯科分野でも活用されている.また,要望に応じて,ポリゴン編集機能をAPIとしても提供している.今後はポリゴンデータだけでなく,点群データや断層画像も直接扱えるようにすることと,機械学習等の新しい技術を取り入れて,利用者の業務のさらなる効率化に寄与することを目指す.
含有化学物質管理システム「グリーン調達マイスター」の紹介
含有化学物質管理とは,環境へのリスクを低減させるために,製品中に含まれる化学物質を把握し,人の健康や生態系を害する恐れがある化学物質をサプライチェーン内の全ての工程で抑制することである.2023年9月の第5回国際化学物質管理会議で,化学物質の適正管理に関する世界的な枠組みが採択され,製造業を中心とするサプライチェーン全体で,化学物質の含有状況を把握,伝達することとなった.そのため,国内の製造業界でも,製品含有化学物質の管理や情報伝達に関する環境整備が急務となっている.
UELは,化学物質情報の管理とサプライチェーン間コミュニケーションの支援を行うソリューションである「グリーン調達マイスター」を2006年より提供している.化学製品や電化製品,自動車等,数多くの業界標準フォーマットへの対応,標準基準や企業独自基準の管理と適合判定,サプライヤへの調査依頼と情報収集といった機能を継続的に改善しており,製造業界における含有化学物質の管理と情報の伝達に貢献している.