トップメッセージ
持続可能な社会の創出に貢献する 唯一無二の企業へ

BIPROGY株式会社
代表取締役社長
CEO CHO
平岡 昭良
「経営方針(2021-2023)」の初年度は、増収増益で終えることができました。2022年度は新たな社名「BIPROGY」として出発する最初の年となります。デジタルコモンズを誰もが幸せに暮らせる社会づくりを推進するしくみに育てることで、持続可能な社会の実現に貢献できるよう、BIPROGYグループ一同、誠心誠意取り組んでいきます。
USBメモリー紛失事案について
2022年6月に発生した、尼崎市における個人情報を含むUSBメモリー紛失事案に関しまして、尼崎市民の皆様、尼崎市様をはじめとする関係各位には大変なご迷惑とご心配をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。ステークホルダーの皆様の大切な情報を扱う企業として、あってはならない重大な事故の発生を重く受け止め、BIPROGYグループの役職員一同、深く反省しております。リスクマネジメント体制に基づき、CEOの私自身が本部長を務める対策本部を設置し、是正すべき点をしっかりと把握するとともに、役職員全員のマインドチェンジを図り、信頼回復に全力で取り組んでいます。
情報セキュリティ対策の三大原則として、「お客様の情報には直接触らない」「可搬(持ち運び可能)メディアは使用しない」「情報は限定した場所から持ち出さない」があります。これまでも情報セキュリティを推進する体制や従業員への教育を常に行っておりましたが、そのような中において今回の事案が発生してしまいました。原理原則の重要性を改めて認識し、三大原則のリマインドを徹底して行うとともに、今後、お客様の状況によりやむを得ずこの原則に抵触せざるを得ない場合、十分な情報セキュリティが確保できるよう手順と体制を定めた特例運用と認定できた場合に限り、該当するサービスを提供するよう徹底してまいります。
さらに、これらの安全管理対策が形骸化しないよう、情報セキュリティや契約の遵守等に対する週次のモニタリングを徹底することを緊急対策として定めました。また、今回の事案で浮き彫りになった委託先管理の問題についても改めてグループ内で見直し、改善を図ってまいります。道のりは決して平坦ではありませんが、将来は、今回の事案を乗り越えた会社ならではの十分な情報セキュリティサービスを世の中に提供し、「情報セキュリティならBIPROGYグループ」とお客様に言っていただけるよう、信頼回復に努めてまいります。
社名変更に対する社内外の反応
当社は2021年の5月に、2022年4月1日付で「BIPROGY株式会社」へと社名変更することを社外に発表し、同時に社内への伝達を行いました。お客様からは、「多様性をベースにイノベーションを起こして、未来に光を当てていくという意思が表れた良い社名だ」というお声とともに、Purposeで掲げた目標をぜひ達成していってほしいという応援をいただいています。社員も、経営陣や社員同士での対話を通して「BIPROGY」という名前に込めた願いや考えについて理解を深めています。今後、新生BIPROGYを名前の通り、社会の中で新たな道を照らし出し、社会や環境変化に応じて提供する価値を変えていく企業とし、持続的な価値創出を実現するべく、取り組みを進めていきます。
「経営方針(2021-2023)」の初年度を振り返って
2021年度は、「経営方針(2021-2023)」の初年度でした。2021年度の連結業績は売上収益および営業利益、調整後営業利益、当期利益とも前年度比増となり、増収増益を達成するなど、業績面では一定の成果を出すことができました。
また、2021年度はコロナ禍の2年目でもあり、働き方や社会生活について、さまざまな工夫がなされた年だったと思います。そうした中で注目を集めたのがデジタルという言葉でした。業界によっては新型コロナウイルス感染症などの影響もあり、デジタル分野の投資に慎重になったり、先送りしたりするお客様もあった一方で、デジタルを武器にして、ビジネスモデルや顧客との関係性、働き方、企業文化を変えるデジタルトランスフォーメーション(DX)が非常に注目を集めました。「経営方針(2021-2023)」は、DXの推進とともに、DXサービスの形で、お客様や社会に役立つ仕組みとして提供していきたいという思いから策定したものです。
初年度を振り返ると、お客様のDXを推進する「For Customer(顧客DX)」および社会課題を解決する「For Society(社会DX)」につながる領域である「企業DX 型」、さらに、「サービス型(事業創出型)」アウトソーシングの売上収益が拡大しており、DX 分野でかなり力強い手応えを感じています。お客様のDXを通じて得た知財、あるいはお客様が持つアセットと組み合わせることで、ビジネスエコシステムの発展形を創り出していきたいと考えています。
ますます先が読みにくい混沌とした社会となり、さまざまな制限のもと社会課題が次々と発生する中で、こうした課題をデジタルの力を使って解決する「デジタルコモンズ(社会の共有財)」を創造し、社会のためのDXを世の中に広める第一歩を踏み出すことができたと考えています。
ビジネスエコシステムとデジタルコモンズの発展
ビジネスエコシステムへの取り組みから気づきを得て
ビジネスエコシステムを着想したのは8年ほど前ですが、私たちが当時GAFA※と呼ばれた巨大プラットフォーマーに立ち向かい、競争していくには、1社だけでは難しい時代になるのではないかと考えたことがきっかけでした。エコシステムをビジネスに応用すれば、それぞれが業種、業界の壁を超えて、得意なものを持ち寄ることによって、競争優位を作ることができます。そこで活動を進めるうちに、競争優位だけではなく、一企業、一団体では解決できない社会課題の解決にも挑戦できる可能性があることに気づき、これをさらにデジタルと組み合わせることで、ビジネスエコシステムの概念が生まれました。
例えばシェアリングサービスも、デジタルの力によって、貸したい人と借りたい人をマッチングでき、確実に返却させ、使用料金を回収することでサービスが成立しています。シェアリングサービスは新たに投資するのではなく、稼働率の低い資源を活用しており、限界費用ゼロモデルでもあります。低稼働の資源は太陽光など、自然環境にもまだまだ多くあります。我々は環境問題においても、デジタルを用いてエビデンスを付けることで、人々の気付きを促すことができると考えています。そこで、新マテリアリティにおいて、「ゼロエミッション社会の実現に向けた、デジタルを活用した環境貢献と事業活動にともなう環境負荷の低減」を定めました。限界費用ゼロモデルで、デジタル時代にふさわしい社会の共有財(コモンズ)を作っていくという思いからたどり着いたのが、デジタルコモンズというコンセプトです。
※ 米国の主要IT企業であるGoogle、Amazon、Facebook(現Meta)、Appleの総称
デジタルの効果を発揮するには
日本では、企業などの組織間が縦割りになっていることや、行政サービスの壁によってデジタルの効果が十分に発揮できていないと考えています。例えばオーストラリアでは、コロナ前は、公共交通機関を利用する際にプリペイドカードを購入して現金でチャージする必要がありました。それが現在では、改札でクレジットカードをタッチするだけで精算ができるようになり、現金を使う機会がほとんどありません。日本でも徐々に電子マネー決済が増えているものの、地方に行くとどんな電子マネーや決済方法が使えるのか迷うことがあります。
日本の産業構造を見ると、サプライチェーンの中に壁があり、デジタルの効果が薄れている状態です。これをサプライチェーンではなく、バリューチェーンとしてデジタルの力が発揮でき、かつシームレスに、あるいはシェアリングできるような考え方のもとで運用すれば、デジタルの効果が存分に発揮され、社会の共有財に変化していくと考えています。
例として、当社では新たに会社を立ち上げ、国産木材の流通経路の見える化や、国産木材のみを使用したオフィス家具でワークスペースを作るなどの取り組みを進めています。現在、木材価格が高騰しウッドショックと言われていますが、国産木材は原木は非常に安価なのに、流通や加工過程で値上がりし、最終的に洋材より価格が高くなってしまうのです。しかし、各過程をデジタルで見える化することで、ボトルネックがどこにあるのか一目で分かるようになります。国産木材を適正価格で流通できるようにすることは、ひいては国内の森林資源、水資源を守ることにもつながります。まだ大きなうねりにはなっていませんが、成功モデルを作るべく奮闘しているところです。
Vision達成に必要な人財とその育成について
個人の中に多様性を生む「ROLES」制度
こうしたことにチャレンジするには、IT だけでなく世の中全体をイノベーションによって、より良い社会に変えていくための仕組みづくりが必要となりますが、成功までの道のりは遠くても、失敗を繰り返しながら乗り越えていくことが大切です。私自身もこれまで多くの失敗を経験してきましたが、その失敗を乗り越えるために必要なものは多様性だと思っています。一つの観点から物事を見る人しかいなければ、失敗すると叩かれて終わってしまいます。しかし、社内に多様性があれば、失敗から学べることに気づき、支援したり応援したりする人たちが出てきてくれます。今の方向性では上手くいかなくても、そこで方向転換することによって成功への一歩を見つけられるかもしれません。自分の中に多様性があれば他の人の多様な価値観を認めることができ、尊敬でき、さらにそれを求めるように変わってきます。
当社では人事制度に「ROLES」という概念を組み込み、社員に複数の役割(ROLES)を持つことを呼びかけています。これは、「個人の中に多様性がある」とするイントラパーソナル・ダイバーシティ、つまり組織や会社の多様性の原点は、個人の中の多様性を養うことから始まるという考えに基づいています。社内にはようやくROLESという言葉が根付き、失敗から学べることは多くあるという考えが芽生えており、目指すべき人財育成の道筋ができたと感じています。社員にはすでにROLESのひな形を提示しており、それを見ながら一人ひとりが、自分はA ROLEとB ROLEをやりますとデータベースに登録します。それをもとに個人目標を設定したり、業務計画を作ったりしていくという仕組みで運営をスタートしました。今までにないROLESは作ってもいいことにしているので、新たな多様性が生まれることを楽しみにしています。
サクセッションプランについて
優秀な人財は積極的に出向させ会社の外での経験を積ませていますが、そうした人財が帰ってきてくれるくらい魅力的な会社になっていなくてはならないと思っています。当社には指名・報酬委員会があり、私が指名するのではなく、サクセッションプランに基づいてどういう社会を望み、その中でどういう価値を提供する会社にしていきたいかというビジョンを持つ、トップにふさわしい人財を育成することが必要だと考えています。
そのため、今後のビジョンを日頃から発信できるような場を設けるとともに、社内だけではなく著名な大学に向けても発信し、さらにアカデミアの専門家とも議論できるレベルになってほしいという考えから、将来の経営リーダー候補者を育成するための「経営リーダー育成プログラム」を実施しています。後方で助けてくれる役職員は多くいますから、むしろビジョンでは暴走するぐらいの経営リーダーが現れてくれることを望んでいます。今、社内では次のステージを考えているメンバーが、さまざまなタスクフォースを自発的に立ち上げて勉強会を行っていると聞いており、非常に頼もしく感じています。外部から経営者を呼ぶ必要はないというほど、内部から候補者が出てくれれば嬉しく思いますが、今後世の中がどう変化していくのか、またどんな業界再編があるのかは予測できないので、その選択肢を完全に否定するつもりはありません。
取締役会の運営について
取締役会にも多様性を作っていくために、属性だけではなく経験や価値観も含めて、さまざまな方に社外取締役や監査役をお引き受けいただいています。現在は、取締役8人のうち独立社外取締役は4人と50% を占めていますが、いずれは過半数が社外取締役かつ独立役員という構成にしたいと考えています。多様性が確保できれば、内部からの目線だけでは陥りがちな部分を違う目線からご指摘いただくことで、取締役会での議論をバージョンアップさせていくことができます。現在でも取締役会では社外役員の皆さんが積極的に発言されており、提案が否決され、次回大幅に内容を変更して提案し直すことも珍しくなく、雰囲気はとてもいいと思います。そのため、取締役会の時間はどうしても長くなりますが、今後もこうした流れは止めることなく続けていきたいと考えています。
当社の社外取締役の方々は、取締役会の出席だけでなく、さまざまな社員とコミュニケーションを図り、経営上で必要な情報を自ら積極的に取りに行っています。時には社員が悩んでいるときに、社外取締役がお持ちの情報やネットワークで補完いただくなど良好な関係性が築けていて、社員もモチベーションの点で良い影響を受けていると思います。
BIPROGYグループが目指す未来
私たちは「BIPROGYグループ」を売上や規模によるのではなく、持続可能な社会の創出に貢献する、唯一無二の企業グループにしていきたいと考えています。そのために、さまざまな業界のお客様やパートナーと良い関係性を築いていること、多様なテクノロジーを組み合わせてワンストップでサービスを提供できる力、それを最後までやりきる力、そして新しいサービスをデザインし実現する力の「4つの強み」をもとに、イノベーションの創出に取り組んでいきます。そして、我々が標榜するPurposeや、デジタルコモンズの提供者となり、より良い社会を築いていくための取り組みが一歩一歩進んでいることを、ステークホルダーの皆様にご理解いただき、共に活動いただけるよう取り組んでまいります。
「Vision2030」に掲げるように、「デジタルコモンズを誰もが幸せに暮らせる社会づくりを推進するしくみに育て」ることで、持続可能な社会の実現に貢献できるよう、着実に行動を続けていきたいと思います。