BIPROGY Foresight in sight BIPROGY Foresight in sight

トップメッセージ

学びからさらなる飛躍を実現しデジタルコモンズで社会課題を生まない世界へ

BIPROGY株式会社
代表取締役社長
CEO CHO
平岡 昭良

大きな課題から学びを得て、新たな高みを目指す

2022年4月に社名を日本ユニシス株式会社からBIPROGY株式会社へ変更して1年が経ちました。ステークホルダーの皆様には、機会あるごとに社名を変更した理由や、新社名に込めた思いをお話しするとともに、社員とも対話を深めました。そのようななかで、社名変更は私たちが目指す世界を実現するために、しっかりと取り組んでいく覚悟の表れであるということが皆様に伝わった1年間だったと思います。

その一方で、2022年6月に発生したUSBメモリー紛失事案※につきましては、多くの関係者の皆様に大変なご迷惑とご心配をお掛けしましたことを深くお詫び申し上げます。
本事案の発生を受けて、現在グループで再発防止策の取り組みを進めています。それぞれの現場やプロジェクトにおいて、情報管理体制が現実にどのように運用されているかを常に確認していく必要があることを、改めて胸に刻みました。また、役職員一同が、当社グループがこれからお客様や社会からの信頼をもう一度獲得するために、何をしていくべきかについても議論を重ねました。その結果、私たちが目指すべきは、世界最高水準の情報セキュリティレベルと、サプライチェーンの皆様との協力関係を築いていくことであると認識しました。「世界最高水準」としたのは、この目標にゴールはなく、常に最高を追い求めていくからです。
日々振り返りを行いながらも、常に新しいテクノロジーや仕組みにチャレンジしていきたいと思っています。この思いは社員や協力会社の方々にも徐々に浸透しており、お客様から激励のお言葉をいただくようになりました。また、株主の方々からも、「これから前を向いて、さらに高みを目指してほしい」というメッセージをいただいています。このような応援を受けて、私たちは「世界最高水準」の目標を言葉だけでなく、行動で示していきたいと考えています。

※ 2022年6月21日に、当社協力会社の委託会社社員が暗号化処理された個人情報データを記録したUSBメモリーを紛失する重大な情報セキュリティ事故が発生しました(同メモリーは3日後の6月24日に発見され、個人情報漏洩は確認されませんでした)。

「経営方針(2021-2023)」の2年目を振り返って

「ビジネスエコシステム」の創出と拡大に手応え

「経営方針(2021-2023)」の2年目を終えましたが、2022年度は「Vision2030」に向けた手応えを強く感じられた1年でした。まず、お客様のデジタルトランスフォーメーション(DX)案件の旺盛な需要に対してしっかりお応えすることができたとともに、私たちからも積極的にDX 推進についてお客様に働きかけることができました。これに加えて、お客様に対し、新規プロジェクトの立ち上げや社会課題解決に向けて、当社グループと共に取り組むことを提案できる社員が非常に増えてきたと感じています。私たちはこれまで、お客様の要望に応える事業活動だけではなく、ビジネスエコシステムのカタリストとしてお客様と共に社会課題の解決に取り組む企業となることを標榜してきましたが、今やこうした提案が通常の活動になってきたという実感があります。また、お客様からも当社グループは面白いことに取り組んでいるという評価をいただくようになっており、それが相乗効果を生んでいると感じます。自社の課題解決だけでなく、企業理念や「Purpose」を実現する際のパートナーとしても付き合いたいと言っていただけることが増えてきました。

さらに、オープンイノベーションに主眼を置いたスタートアップ投資やCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)の取り組みを通じて、彼らが持つ強みと当社グループが持つ強みを掛け合わせることで、新たなマーケットを創出し、社会的価値を生み出そうとする活動も増加してきました。
当社グループは ITやデジタルを専門とする企業ですが、実はディープテックやリアルテックのスタートアップ起業家の方々に対しても積極的に投資し、情報交換を行っています。近年はこれを通じて、IT・デジタルとディープテック、リアルテックとを掛け合わせた取り組みにチャレンジできるようになってきました。これはまさに、私たちが「Purpose」で掲げた「先見性と洞察力でテクノロジーの持つ可能性を引き出し、持続可能な社会を創出」の実現につながることです。
2022年度は、「先見性と洞察力」「テクノロジー」「ビジネスエコシステム」の3つの組み合わせが大きく動き出した1年であったと評価しています。

「経営方針(2021-2023)」の最終年度で 目指すこと

2023年度は「経営方針(2021-2023)」の最終年度となりますが、次の経営方針でのさらなる飛躍を実現するため、R&Dや人的資本への積極的な投資を行うことと、現在活況であるDXにリソースを集中させて未来につながるさまざまなアセットを積み上げることにこの1年を使うべきと考えています。そのため業績については、現時点においては、経営方針策定当初に目標として掲げた売上収益3,400億円に対して3,500億円、アウトソーシング売上1,000億円に対して750億円、調整後営業利益率10% 以上に対して9.1%の予想としています。アウトソーシング売上、調整後営業利益率については目標値を下回る予想となっていますが、調整後営業利益率2桁の達成は私たちの悲願であり、諦めてはいません。今は十分な利益を確保したうえで、恵まれた環境を活かすべきであり、利益率の目標達成にこだわるあまり未来への投資を抑えるべきではないと考えています。

「デジタルコモンズ」の社会実装が進展

2023年の夏は日本全国で猛暑日が続き、集中豪雨による災害も相次ぐなど、気候変動への対応が喫緊の課題であることを改めて実感しました。当社グループは長年、気候変動に起因するさまざまな社会課題に対して、「賢いエネルギーマネジメント」を行うべく、次世代のエネルギーソリューションや各種サービスを提供してきました。近年、これに賛同してくれる企業が増え、グリーンエネルギーを利用しやすい形で社会に提供するサービスでは、他社と提携する事例が増加しています。

また、カーボンニュートラルに関しては、企業には今後一層の情報公開が求められるようになります。そうした社会状況に対応するため、当社グループがすでに作り上げたアセットと、お客様やパートナーが持つアセットを組み合わせた取り組みが動き始めています。さらに、ここに新たなソリューションを付加することで、ビジネスエコシステムを活用し、デジタルの力で作り上げた「賢いエネルギーマネジメント」という共有財を、社会に実装するフェーズに入ってきました。これは当社グループが掲げる3つの社会インパクトのうち、「ゼロエミッション(デジタルを活用した環境貢献、環境負荷の軽減)」に貢献するものです。

2つ目の社会インパクトは「レジリエンス(自律分散した生存力・復元力のある環境)」で、危機に対する社会の強靭化をどう進めるかという課題に関連します。例えば、社会インフラや各種設備の管理・保守・点検について、日本は人手不足と技術者の高齢化という問題を抱えています。
この課題を解決するため、当社グループでは、IoTデバイスやAI による業務生産性の向上や効率化・省人化を図り、技術者を支援するための仕組みづくりを始めており、これが今、本格的に世の中に浸透し始めています。今後はこれらの仕組みが、ビルやトンネル、橋梁、道路以外の、さらに広い分野にも応用されることで、防災・減災にもつながっていくと考えています。防災・減災は当社グループだけでは実現できません。業種・業界の垣根を越えて多様なパートナーが連携することで、ビジネスエコシステムが拡大して防災・減災を実現することが「デジタルコモンズ(社会の共有財)」につながっていきます。今、そうしたことを夢見る社員も大勢現れており、手応えを感じています。

最後の「リジェネラティブ(再生型ネットポジティブ社会へ)」は、再構築という意味です。社会課題で言えば、小売業やサービス業における人手不足、廃棄ロス問題、海洋プラスチックごみ問題などへの対応が相当します。これらの社会課題を解決するには、生産・消費・物流でのバランスをとっていくことが必要となります。そこで、発注のコントロールをAIでサポートする自動発注システムのほか、商品の値札を電子棚札に切り替えることで、これまでは人力で行っていた値引きの際の修正作業を大幅に効率化し、ダイナミックプライシング※にも対応できる仕組みを導入しており、小売業のお客様に非常に好評をいただいています。発注データから売れ筋の商品や、売れ行きがいい時間帯を分析し、分析情報をサプライチェーンに提供することで、廃棄ロスや物流コストの低減を実現し、さらに生産コントロールにつなげることができます。これらの仕組みにより、利益は保ちながらも地球環境にやさしいサプライチェーンを構築するための第一歩を踏み出せたと思います。

※ 需要と供給を考慮して、商品やサービスの価格を変動させる手法のこと。

ビジネスエコシステムの拡大

「社会課題を生まない世界」の実現へ

私たちが「Vision2030」で掲げた「デジタルコモンズ」は、これまで当社グループとして培ってきた強みや独自性、さらには他社に先んじて積み上げてきた取り組みという土台の上で、今後の社会環境の変化や新しいパラダイムにも対応し、当社グループが5年先、10年先、20年先もより成長して、より社会でのポジションを高めた企業として生き残っていくために必須の戦略と考えています。2030年に向けて、このような仕組みづくりに着実に取り組んでいくことで、間違いなくデジタルコモンズにつながる世界の実現が見えてきます。そしてデジタルコモンズがさまざまな課題を解決する、あるいは課題そのものを生まない世界を実現する可能性が、2030年には見えているかもしれません。私たちは「デジタルコモンズは地球を救う」という壮大なテーマを掲げていますが、今その実現への手応えを十分に感じています。

情報共有の動きが組織間の連携を生む

先が見通しにくい時代において、さまざまなサービスを生み出していくなかでは、実は成功したものよりも失敗したもののほうが多いのですが、後者はデータベースとして「生け簀」に残し、再利用できるようにしています。最近ではクラウドベースで運用しているので、残しておくための運用コストもそれほど必要ありません。また、過去のサービスを利用する際には新たに大きな投資をする必要がないことから、まさにデジタルの特徴である「限界費用ゼロ」モデルが実現できています。実際に、上手くいかなかったプロジェクトで生まれたアセットが、ほかの新たなプロジェクトで活用されるという動きも出始めています。また、過去のさまざまなビジネスやアセットをデータベース化して、お客様やパートナーへの課題解決のご提案にも利用しています。

さらに、企業内スタートアップやベンチャー企業について学ぶために、社員が早朝から集まって意見交換を行う「Morning Challenge」という勉強会を開催しており、毎回数百人が出席しています。こうした取り組みを通じて情報共有が活発化し、その結果、事業部の縦割りの壁を越えて連携したプロジェクトがいくつも始動しています。例えば、非化石証書の調達と管理業務を支援するサービスは、エネルギーマネジメントに関わるチームとファイナンシャルテクノロジーに関わるチームの連携によって生まれたプロジェクトです。これは社員が現場で声を掛け合って自発的に始めたもので、いわば、情報共有による行動変容が生まれているのです。

自律型人財をいかに増やしていくか

代表取締役社長 CEO CHO 平岡 昭良

仕事は「Must(しなければならない)」で語られがちですが、人間はMustで「頑張れ」と言われると、やる気をそがれるものです。ですから、自律型人財を増やしていくには、いかにMustから「Want」「Hope」にしていくかが重要だと考えています。そのための施策として、コロナ禍をきっかけに、時間や場所に縛られない就業形態を推進する「働き方の自律」を図ってきました。経営計画を「経営方針」としたのも、具体的な事業への取り組みや仕組みの構築について、社員がそれぞれで考えてほしいという考えに基づいています。また、当社では管理部門を「グループデザイン部門」と総称していますが、これも各自が持つノウハウにより、当社グループをデザインしてほしいという思いによるものです。これらはすべて、自律型人財の育成という目的でつながっています。

個人の中の多様性を養う「ROLES」制度で組織と人が進化

BIPROGYの人事制度の根幹には、「ROLES」という概念を組み込んでいます。ROLESは「役割」という意味の言葉の複数形で、1人の中に多様性を持つことを表します。1人が複数の役割を持つことで、その人自身の中に多様な価値観が生まれます。多様な価値観を内包する人は、自分とは異なる他者の価値観を見いだし、尊重することができます。

そして、異なる価値観が交われば、さらに面白いものを生み出せる、そうしたことを実感してほしいと考え、「イントラパーソナル・ダイバーシティ(「個」の多様性)」という概念を非常に大切にしています。

例えば今までプロジェクトのQCD(品質・コスト・納期)の確実な実施に携わっていたエンジニアが、新規事業の立ち上げにも関わるようになれば、事業を軌道に乗せ、利益を上げるまでの過程がいかに困難であるかを実感できるでしょう。ROLESの概念を組み込み、個人が複数の役割を持つことで、プロジェクトが目指す成果そのものを意識し、自分がプロジェクトを運営していくのだという自覚を持てるようになります。これは、人財として大きな成長だと言えます。ROLES は、すでに組織の育成計画やアサインメント、社員の自律的キャリア形成を促すための成長支援策として活用していますが、今後はローテーションや採用などにも活用を拡大していきたいと考えています。このように計画的にROLESの拡大を推進することで、社員のイントラパーソナル・ダイバーシティを高めていく考えです。

また、当社では学びの機会も多く設けています。先ほど挙げたデータベースの「生け簀」への蓄積や「Morning Challenge」のほか、1週間に一度、「連続3時間は今の仕事をしない」という「T3(Time to think)活動」というルールを設定し、その時間には「Want」や「Hope」の活動をして自己研鑽に努めるよう呼び掛けています。これが組織で発揮されれば、組織全体での学習になります。「働き方の自律」「ROLESの推進」「学習する組織」の3つが揃うことでイノベーションを創出する多様な人財が生まれ、さらに学習により組織全体が強くなっていくことが期待できます。

ROLESとは

次期経営方針では「Vision2030」実現を加速

 「経営方針(2021-2023)」の最終年度を迎え、次期経営方針の策定に向けて動いています。何カ年の計画になるにせよ、柱は「Vision2030」の実現を加速するための経営戦略になると考えています。

次期経営方針については、私は具体的な方針は示さず、自律的に、当社グループの未来を考えたい人たちに作ってほしいと考えています。実際、社内の至るところで自然発生的にタスクフォースが生まれています。こうした「勝手タスク」に対し、アドバイスを求められたときには「このようなところを考えたらどうか」といった程度にとどめ、指示は出さないようにしています。社員たちはすでに、全員が相当に自律的に考え、行動できるようになっている実感があることと、社長が過去の成功体験に基づいて口出しをしてはいけない時代になっていると考えるからです。次期経営方針について、自らタスクフォースを立ち上げて議論をしている中には、将来の経営リーダー候補者を育成するための「経営リーダー育成プログラム」を受講したメンバーも含まれており、まだ30代の社員もいます。彼らがそれぞれに生み出した「勝手タスク」によって、どのような経営戦略を構想してくるのか、私自身も非常に楽しみにしています。

非連続の成長にチャレンジしていく

これまでは、私たちがすでに持っている資産の延長線上にある、オーガニックな成長によって業績を伸ばしてきました。それは、利益を上げてキャッシュ・フローを増やし、財務体質を強化することが第一の目的だったからです。そして、その段階は完了したと考えています。これまでの取り組みで投資余力も大きくなり、ある程度の失敗も許容しながら、インオーガニックな成長にもチャレンジできる基礎固めができてきました。

実際に、オープンイノベーションの取り組みを通じて、スタートアップやベンチャーキャピタルの活用が進み、スタートアップが持つ先端のビジネスモデルやテクノロジーを、当社グループが持つ品質マネジメントによって日本のお客様の要求に応えられる水準にまで高めるという相乗効果も創出できています。オープンイノベーションは今後もさらに強化していきますし、IT・デジタルとディープテックやリアルテックとを掛け合わせることで、新たな社会的価値も創出していけると考えています。

また、これまでは当社グループだけでは解決が難しい社会課題に対して、ビジネスエコシステム形成を通じて、イノベーションや新たなサービスで解決に取り組んできましたが、今後は、M&Aなどを通じて私たち自身の範囲やアセットを広げることも必要であると考えています。当社グループはIT化やデジタル化、その運用・保守は得意ですが、それを運用するためのOT(Operational Technology)はピースとして欠けている部分です。「Vision2030」の実現に向けて、さらに大きな社会的価値を創出するために、事業ポートフォリオを一層磨いていくことが重要になってくると考えています。

コーポレートステートメントである「Foresight in sight」の精神を忘れずに、私たちは未来に向かってしっかりと洞察をしながら、さまざまな企業や団体とビジネスエコシステムを形成し、持続可能な社会に貢献していけることを誇りに感じ、「Vision2030」の実現に向けて進んでいきたいと思います。