ネットマークスのソリューションと技術
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2009年11月発行 Vol.29 No.3 通巻102号ネットマークスのソリューションと技術
2007年6月に新たに日本ユニシスグループに加わった株式会社ネットマークスは、前身は住友電気工業株式会社の情報通信部門であり、1997年4月に独立しました。住友電工時代から国内のFDDI敷設で先駆的な役割を果たし、独立後はネットワークソリューションプロバイダーとして、国内外のネットワーク機器を活用したソリューションを提供してきました。国内初のIPテレフォニーやユニファイド・コミュニケーションの実現に携わり、近年では、自社の海外拠点を基盤としたグローバル企業ネットワークサポート、ネットワークの仮想化やWAN高速化の技術を用いたデータセンターの構築、アウトソーシング事業の技術を基にした運用管理ツールの提供など、ネットワーク専業の枠を超えたトータルソリューションプロバイダーとして活躍の場を広げつつあります。 今回の特集では、ネットマークスが持つソリューションと技術を網羅しています。データセンター構築・運用に関わる認証基盤、ストレージとネットワークの仮想化、WAN高速化、運用管理や、企業活動の生産性向上に関わる文書管理システム、ユニファイド・コミュニケーション、それらを支える品質管理やIPコンタクトセンターについて、ネットマークスの現場の技術者が最新の技術を書き下ろしています。
ネットワーク技術の変遷とネットマークスが提供するソリューション
コンピュータ関連技術の発展により、コンピュータを動かし利用する基盤としてのICT基盤も発展してきた。コンピュータ同士、コンピュータと周辺機器、コンピュータと端末を接続するネットワークは、取り扱うデータ量の増大によって高速化・大容量化が求められてきた。また、その重要性も増している。一方でネットワークはオープンシステムにより低価格化・一般化・高機能化が繰り返され、インターネットの普及により利便性・生産性は向上したものの、セキュリティなど検討課題が現れ、対応策が取られてきた。 本論文では、技術要素の観点から、ネットワークインフラ、インターネット・ブロードバンド、ネットワークセキュリティ、ストレージネットワーク、サーバファーム、ユニファイド・コミュニケーションの各技術の変遷を述べる。また、これらに対応した商品を選定もしくは開発・インテグレーションし、顧客に提供するネットマークスの取り組みとソリューションを紹介する。
セキュリティと利便性を両立させる統合認証基盤
企業内には数多くのシステムが存在し、その中には部門独自で管理しているシステムが見受けられる。これらのシステムには社外秘などの重要な情報が格納されており、適切な管理を要求される。さらにはネットワークの整備が進んでいることもあり、これらのシステムが容易にインターネットにさらされる環境にもなりえる。一方で2005年4月施行の個人情報保護法や内部統制などの外部要因により、情報セキュリティマネジメントが企業の経営にとって必須の条件となった。そのマネジメントを支える技術としてシステムのアクセスコントロールおよびID管理の基盤を整えることが急務である。また、セキュリティを意識するばかりでなく、利便性と両立する必要がある。 ネットマークスでは統合認証基盤として、IDの管理を行う仕組みであるID管理基盤と、認証サービスを提供する仕組みである認証基盤を定義し、セキュリティと利便性を両立するシステムの構築に取り組んでいる。ID管理基盤は、IDのライフサイクルを管理し、必要なときに必要なタイミングでIDを付与し、不要なIDはすぐに使用できないようにする。認証基盤は、確実な本人認証と利便性を高めるためのシングルサインオンやデバイス認証の環境を提供する仕組みである。さらに、近い将来に必ず訪れるクラウドコンピューティング時代を迎えるにあたっての統合認証基盤の構築についても取り組んでいる。
システム基盤の最適化を実現するネットワーク仮想化
2001年に端を発したITバブルの崩壊以降、ICT基盤の運用コスト削減を目的とした、エンタープライズデータセンタの統合やサーバ機器の集約化が進んでいる。VMwareやXen、更にMicrosoft社によるHyper-V等、サーバの仮想化環境を実現する技術は日々進歩しており、基幹系システムにおいても仮想化されたサーバ基盤の導入が珍しいことではなくなった。この動きはネットワーク機器も同様であり、更にシステム運用に掛かるコスト、作業効率化、一元管理という観点からも、仮想化の動きは今後ますます加速するものと思われる。 本論文では、ネットワーク基盤の基本的な仮想化技術を解説した後、様々なネットワーク仮想化技術を分類し、分類毎の製品動向について解説する。またネットマークスの取り組みについても紹介する。
アプリケーションレスポンスを改善するWAN高速化装置
企業は、コンプラアンスの実現、情報漏えい対策、あるいは仮想化によるサーバ統合の実現など、内部統制と同時にコスト削減も求められ、ますます情報の集中管理を行う傾向にある。多数拠点に展開した企業をサポートするITシステムは、WAN経由の通信が必然となってきた。LAN通信を想定して設計されたプロトコルでは、通信がWAN経由となった時、距離による遅延の影響を受け、きわめて非効率となる。 「WAN高速化装置」は新しいカテゴリーで、その機能も発展途上にあるため、対象となる装置の範疇は不明瞭である。したがって本稿では、Webキャッシュ、TCP冗長性の排除、圧縮など、単一の機能を実装した製品ではなく、アプリケーションレイヤーまで高速化し、それらを複合的に実装した装置をとりあげる。
ビジネス継続を実現するストレージソリューション
今日、コンピュータシステムが扱うデータは増加の一途をたどっている。このデータが損なわれることは、ビジネスの継続性に大きく影響を与えうる。しかし、現状の肥大化したコンピュータシステムのデータをバックアップしリストアするのに数日を要することも珍しくない。 これらの事実を踏まえた上で、迅速なデータ復旧を目指す必要がある。本稿では、データストアであるストレージシステムとして、ビジネス継続に必要な可用性を確保するための方式及びネットマークスの取り組みと事例、今後普及していくクラウドストレージを含む様々な技術について論ずる。
文書を可視化する高速表示ソリューション“DATA-COSMOS”
現在、世界では多数の文書管理システムが存在する。日々更新される文書を時系列に沿って系統立てて管理するドキュメントシステムである。多くの利用者の細かい要望に応えるために改良が加えられ、今後も有望なツールとして期待できるソリューションである。近年ではセキュリティ機能が必須となり、内部統制需要の影響により、大規模向け市場の拡大が続いている。また、文書管理システムは広義ではナレッジ管理システムとしての側面もあるため、企業の知的財産を有効活用するツールとして期待されている。 CMS(Content Management System)やポータル等のアプリケーションと連携して広がりを見せる一方、増大する文書数により、利用者が目的の文書にたどり着くまでの時間が長くなっているのも事実である。そのため、対象コンテンツの視認性や表示応答速度の向上、全文検索などの追加機能が今日の文書管理ソリューションには必要不可欠な要素となっている。 本稿では、目的の文書ひいては情報を得るまでの時間が増加している現状の課題に対し、文書管理ソリューション“DATA-COSMOS”を取り上げ、その特長を示すとともに、文書の可視化、視認性及び高速表示についての技術的な手法を述べる。
ワークスタイル改革を実現するユニファイド・コミュニケーション
めまぐるしく変化する経営環境のなかで各企業は、企業改革やワークスタイル変革を実現するために、ユニファイド・コミュニケーションの検討や導入を行っている。企業にてユニファイド・コミュニケーションを導入する狙いは、日々の企業活動において欠かすことのできないビジネスコミュニケーションを通じて、ビジネスプロセスの改善や従業員ワークスタイル変革を促し、企業の競争力を強化することである。 検討するポイントは業務効率化や生産性向上、コスト削減、ビジネスプロセスの改善、顧客サービスの向上といった側面である。本論文では、ユニファイド・コミュニケーションが企業のビジネスコミュニケーションにどのような効果もたらすのか、導入する課題や今後の展望について述べる。
コールセンター業務を効率化するIPコンタクトセンターシステム
コンタクトセンターは、企業の顧客に対するフロントラインとして機能し、企業の経営戦略上、重要な位置付けを担っている。 コンタクトセンターは、顧客とのコミュニケーション機能とそれを最適化するルーティング機能、外部システムとの連携・統合機能、センター業務に関わる分析機能から構成されている。電話システムとコンピュータを連動させるCTI(Computer Telephony Integration)技術とIP技術の応用により、電話以外の多様なチャネルも使って顧客との関係づくりを強化し、拡張性と信頼性を備えたIPコンタクトセンターへと進化した。IP技術のうち、IPコンタクトセンターを支える技術が、音声に対応したVoIP技術である。SIP、RTP、QoS、コーデック、VoIPゲートウェイ、IP-VPNがある。 大規模なIPコンタクトセンターは、システム機器を集約し、各オペレータセンターをIPネットワークで結んだIPセントレックス型が主流となりつつある。IPコンタクトセンターのシステム化における考慮点としては、耐障害性、パフォーマンスの確保、音声品質の確保が重要である。これらの非機能要件は、初期の段階での検討が必要なものである。 導入事例に挙げた大規模なIPコンタクトセンターはIPセントレックス型であり、複数のシステムセンターと複数のコールセンターで構成されている。オペレータの増加に容易に対応し、サイトの立ち上げも短期間に低コストで実現した。仮想的に一つのコールセンターとして機能し、オペレータを統合的に管理でき、全体でバランスよく機能している。 音声を主体とする総合的なコミュニケーション手段において、SIPの可能性は非常に大きい。今後、SIPをベースとしたIPコンタクトセンターは、コンタクトセンターのみならずバックオフィスとの連携を含めた業務に拡張していくことも可能になる。
高品質システムを実現するネットワーク機器検証手法
情報システム基盤を支えるネットワークインフラの重要性は日々増している。そのため、インフラを構成する各種ネットワーク機器について導入前に十分な検証を実施し、機器の特性を正しく理解して最適なネットワークを設計することや、機能の正常動作を確認しトラブルの芽を事前に摘んでおくことが重要な活動となる。ネットマークスではこれらの事前検証を、検証目的の策定、検証項目の策定、手順検討、判断基準策定、検証作業実施、結果考察の六つの工程に分類し、手順の標準化を進めている。標準化された工程に沿った検証の実施によって質の高いネットワークシステムを提供すると共に、万一導入後に何らかのトラブルが発生した場合でも迅速な対応が取れる体制を構築している。
海外メーカー製品に対する品質確保への取り組み
コンピュータネットワークは企業活動において、重要度を増し欠かせない基盤となっており、より高い品質が求められている。ネットマークスはメーカーではないが、海外製品については、国内顧客の求める品質水準に近づけるべく、ネットマークス設立後早期から独自の活動を行っている。 また、メーカーが行う機器自体の品質の作りこみや機器の品質設計にはネットマークスは係れないが、自社で実施した検査結果や顧客に納入後発生した障害情報に基づき、メーカーへの品質改善を要求し、提供する機器の品質向上を図っている。 ネットワークインテグレータであるネットマークスが自社の提供する機器に対し、今まで実践してきた検査の内容、方法及び工程改善への取り組みについての具体例を紹介する。
システム運用者の管理業務を効率化するCMDBツール“PLANETIMAS”
ICTシステムの運用において、ITIL(Information Technology InfrastructureLibrary)と呼ばれるICTシステム運用・管理業務に関するガイドラインが注目を浴びている。ITILには、ICTシステムに関する必要な情報を管理する統合データベースとしてCMDBが定義されており、構成管理プロセスにおいてCMDBが中核をなしているが、ITILでは概念として規定しているに過ぎない。 ネットマークスでは、システム運用者の実運用に照らし合わせ、また長年の運用管理ノウハウを取り入れ独自にCMDBツール“PLANETIMAS”を開発・提供している。PLANETIMASは、日々の運用を司っているサービスデスクの管理レベルを向上することに主眼を置いており、このツールを利用することによりICTシステム運用に必要な情報を効率的・一元的・自動的に管理することが可能となる。