BIPROGYグループの力Ⅱ
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2023年3月発行 Vol.42 No.4 通巻155号BIPROGYグループの力Ⅱ
本号は前号に引き続き「BIPROGYグループの力」と題し、BIPROGYの各部門とグループ会社の技術やソリューションを紹介します。内容は、EC事業者向けコマースサービス、金利指標 LIBOR 廃止対応、IT資産管理ソリューション、さらに、ITによる社会課題解決の事例として、深層学習による橋梁劣化判定、医師の労働負荷軽減と患者の満足度向上、サーキュラーエコノミーの実現、そして、社会のデザインと設計手法の提案です。また、提携先である大日本印刷からの寄稿も掲載しています。
OMO時代のコマースサービスOmni-Base for DIGITAL’ATELIER
ほとんどの経済活動にデジタル技術が使われ消費者体験にオンラインとオフラインの境界がなくなりつつある.対応する事業者はITシステムが複雑化してシステム投資,人材の確保に課題を感じている.EC分野は既に様々な仕組みがサービスとして提供されているが,店舗と連携させつつ顧客との強い関係を持ち,自社サイトとして構築して運営していくためのちょうど良いサービスは少ない.Omni-Base for DIGITAL’ATELIER はOMO施策に対応できるECのオールインワンサービスであり,稼働までの適用のコンサルテーションから稼働後の運用支援まで,情報システム部のECシステム運営チームとして活用してもらえるサービスである.
LIBORの恒久的廃止に伴う市場系商品管理システム「Siatol」の対応
2021年12月末,世界で最も参照されていた指標金利の一つである「LIBOR(London InterBank Offered Rate:ロンドン銀行間取引金利)」が主要5通貨において恒久的に廃止された.これは,2017年にFCAのベイリー長官(当時)が「パネル行に対しレート呈示の強制権を行使しない」と発言したことに端を発するものであった.LIBORの恒久的な廃止は世界中の金融システムに大きな影響を及ぼした.当社が長年我が国の地域金融機関に提供している市場取引管理システム「Siatol」も例外ではない.当社は金融規制と金融工学の両方に知見を有するエイファス社とともに,グローバルでの対応のリサーチに動きつつ,国内金融システムに求められる対応を整理し,Siatolに改定を施した.
深層学習を利用した画像からの橋梁劣化判定
橋梁の点検業務は有資格者による現地点検と診断が義務付けられ,熟練の技術者や予算の確保,技術者による結果のばらつきの抑制などが課題である.BIPROGYは深層学習を利用して画像から劣化の要因および損傷の程度を判定することで,課題の解決を目指した.深層学習モデルやその前後処理に対し,点検業務の専門知識を取り込むことで,最終的に劣化の要因については90.8%,損傷の程度については84.4%の精度を達成した.これは技術者による判定と同水準である.開発した判定技術は業務プロセスへ取り込むにあたってプロトタイプを用いた実地検証と,処理速度改善を経て,システムサービスとしてリリースした.開発したシステムサービスを活用した実証実験では国土交通省の第4回インフラメンテナンス大賞の優秀賞を受賞し,社会的にも高い評価を得ることができた.
Dr.アバターによるインフォームドコンセント支援サービス
BIPROGY株式会社は,内閣府の国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期に2018年度から参画し,医療現場での課題である医師の激務において,原因の一つとして挙げられる「患者(家族)への説明対応(インフォームドコンセント:IC)」シーンでの医師の負荷軽減と患者満足度の向上を実現するサービスの検討に取り組んでいる.この取り組みの中で具現化した「Dr.アバターによるIC支援サービス」は,2018年度の現場ヒアリング,2019年度の環境整備と倫理審査対応を経て,2021年度から現場運用評価を開始した.現場から一定の評価を得ており,社会実装の実現を目指している.
資源循環経済の実現に向けたSaaSプラットフォームの企画開発
近年,カーボンニュートラル(CN)や資源循環経済への移行促進の議論が活発となってきており実現の施策として資源生産性の高い社会への転換があげられている.2020年12月に資源循環経済の実現を目指して資源循環システムズ株式会社(以下,RCS社)が設立された.国内では資源循環経済へ移行する際の課題が複数存在するが,RCS社による業界標準のSaaSの提供により,調達した資源を利用し製品を供給する動脈産業と不要物を処理・リサイクルして資源に戻す静脈産業の情報連携が促進されることで再資源化促進に資する事を目指している.提供するサービスはコンプライアンス,業務効率化といった「守りのDX」の領域と,リサイクル促進やデータ利活用といった新しい領域のサービスを提供する「攻めのDX」に区分している. RCS社の強みが活かせる分野のサービスは自社で開発し,それ以外の分野は社外のサービスプロバイダと協調戦略をとることにより,企画からサービスインまでの時間を極力短縮し,低コストでサービスを提供する事を目指している.
社会をアーキテクチャでデザインする
複雑化する社会的課題を解決するためには,デジタル技術を前提に,法規制,ビジネス,情報システムといった社会そのものを,System of Systemsと呼ばれる一つのシステムとみなして一体的に設計しなければならない.デジタルを前提とした社会構造のアーキテクチャ設計を担う組織として,2020年にデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)が発足し,アーキテクチャの設計と,アーキテクチャが社会実装されるための取り組みを行っている.社会構造の設計においてアーキテクチャ設計が求められる理由は,背景や関心の異なるステークホルダ同士の認識を揃えることと,相互矛盾を解く場を作ることにある.アーキテクチャ設計プロセスでは,ビジョン構築,設計範囲の合意,非機能要件の定義,設計情報の管理が課題となる.また,アーキテクチャ設計をマネジメントする際の要点として,人材育成,ステークホルダの早期参画,アジャイルな管理が挙げられる.
ビジネスエコシステムにおける社会的・経済的価値循環設計手法の提案
BIPROGY株式会社とグループ会社は,社会DXを推進する企業としてさまざまなステークホルダーと協働し事業活動を通した社会課題の解決に取り組んでいる.本稿では,事業活動の設計を行うためのガイドとその適用事例を構造化してまとめるリファレンスアーキテクチャ構想を提案する.また,リファレンスアーキテクチャにおいて活用するモデル間の連携により,検討の段階ごとに事業活動の継続に不可欠な価値循環の有無を検証する手法を開発した.手法の適用により事業構想におけるステークホルダーへの価値循環の欠如という問題を発見することができ,ビジネスモデルの持続可能性を高めることができる.
自然言語処理AIと知識グラフを活用した商材情報検索の効率化
DNPでは自然言語処理技術と知識グラフを活用し,曖昧な知識でも多岐にわたる商材を検索できるサービス(「スマートレファレンスサーチ」と呼称)を開発している.このシステムは商材DBの他に商材を説明するキーワードタグである「商材関連用語」のDBを持つことで,入力テキストに関連する可能性の高い「商材関連用語」をサジェストして商材の検索をアシストする.ユーザテストを実施した結果,「提示されるサジェストに納得感はあるか」「直感的に使用できるか」等の設問で高い満足度が得られた.今後は時系列を含めたより複雑なデータ構造を構築するとともに,商材検索以外のサービスにも本システムを発展させていく.