一般号
技報サイト内検索
2016年9月発行 Vol.36 No.2 通巻129号一般号
本号には、技術論文の社内コンクールであるテクニカル・シンポジウム2015の入賞論文3編と、社内外から寄稿いただいた論文、技術解説、記事各1編を掲載しています。
ポリゴンモデルの精度保証簡略化
ポリゴンモデルの簡略化とは,縮約を繰り返してポリゴンモデルのポリゴン数を削減する処理のことである.簡略化による元形状からの離れの問題に対応するため,精度保証簡略化の手法を開発した.精度保証とは「元形状から簡略化後形状への距離の離れが指示した範囲内に収まること」である.精度保証を実現するために,縮約前後の紐付け処理や位相不正の感知,縮約対象リスト管理を採り入れた.その結果,本手法は従来のものよりも優れた精度を実現した.
ソフトウェア開発プロジェクトの生産性評価に関する事例 ──真の価値と工数削減効果を計測する手法
生産性向上に伴う開発コストの削減は,多くのIT企業にとって共通の目標である.したがって,生産性評価の主目的は,生産性向上による開発工数の削減量を確認することでもある.しかし,IT分野の代表的な生産性指標であるFP生産性では,プロジェクトの真の価値を完全に表現できず,生産性の変化に伴う工数の削減効果が計測できない.この問題を解決する新たな生産性指標として「標準工数」を用いた「工数生産性」を採用した.本稿では,FP生産性の問題点と,工数生産性を評価するためのツールである「工数生産性評価モデル」の概要について紹介する.
負角自動解消機能の開発
自動車の燃費性能向上,衝突安全性向上を目的として,車体部品への高張力鋼板(High Tensile Strength Steel:ハイテン)の適用拡大が進められている.ハイテン材は普通鋼板と比べプレス加工後の弾性回復(スプリングバック)が大きいため,大きな見込みを必要とする.しかし,大きな見込みを加えるとプレス金型形状がプレス方向に対し垂直未満の角度の部分「負角箇所」を持ってしまう場合があり,絞り工程ではプレス成形が難しくなる.このため,顧客から「負角箇所の自動解消機能を作れないか」との要望が挙がっていた.
これに応えるため,弾性変形解析技術と補間変形技術を用いて,CAD形状から負角箇所を自動的に検出,解消する機能を開発した.依頼元が本機能を評価した結果,作業時間を従来の10 分の1に短縮する効果が得られた.
衛星画像データを利用した日射量推定モデル
太陽光発電量の予測方式は二つあり,そのうちの一つである間接予測では実況の日射量の把握を目的とした日射量推定,日射量予測,日射量から発電量への変換の三段階を経て,太陽光発電量を予測する.間接予測の入力データとしては数値予報モデル,衛星画像データ,天空画像の三つが用いられ,衛星画像データを用いた手法では,数時間先の発電量を精度高く予測できることが分かっている.衛星画像データを利用した従来の日射量推定手法は,快晴や雲種等の各条件を定義し,各条件における大気外日射量から地上日射量への低減率を補正係数として用い,日射量を推定するものであるが,曇天時の雲種で補正係数の不確かさが大きいことが分かっている.
本稿では,補正係数算出のためのサンプル数を増加させ,雲種を判別する式に対して変数を追加し,機械学習を行うことで従来の日射量推定手法を改良した.気象庁の日射量観測値を用いて手法を評価した結果,提案した日射量推定手法は従来の日射量推定手法より高い推定精度を示した.太陽光発電量予測において,予測開始時の観測値を取り込むことで,予測精度の改善が期待できるといわれている.観測値が不足する場合において,提案した日射量推定手法を用いて算出された推定日射量を観測値の代わりに利用することで,太陽光発電量予測の更なる精度向上が期待できる.
【技術解説】3Dプリンタ造形に必要なポリゴン編集機能
3Dプリンタの入力データはポリゴンモデルと呼ばれ,造形物の表面を三角形群で表現するモデルである.CADや計測から得られるポリゴンモデルは,細長い三角形,三角形同士の重なりや交差,ポリゴンの欠損など問題のある箇所を含むため,3Dプリントするとエラーになることや,望ましくない形が造形されることがある.このような箇所を検出し,編集する必要がある.さらに,三角形数を削減することや,厚みの薄い立体にする処理も必要である.この文書では,3Dプリンタで造形するケースを例に,ポリゴンモデルの形状を編集する機能について解説する.