日本ユニシスグループの力I
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2020年3月発行 Vol.39 No.4 通巻143号日本ユニシスグループの力I
本号と次の144号は「日本ユニシスグループの力」と題し,日本ユニシスの各部門とグループ各社,そして提携先の大日本印刷の注力技術を選り抜いてお届けします.本号では,金融機関のデジタル化構想,MaaSによる地域交通課題の解決,トンネル施工の効率と安全性の向上,SDNと新世代ネットワークインフラ,IoT機器のセキュリティ対策,企業と研究コミュニティとの関わり,そして日本語文章の読み速度向上についての論文及び記事を掲載しています.
日本ユニシスが目指す金融機関のデジタル化構想
スマートフォンなどでデジタル取引がいつでもどこでもできる時代になり,金融機関のデジタル戦略にも変化が求められている.日本ユニシスは「生活に融け込んだ金融」を目指して金融機関のデジタル化を支援する.具体的には対面,非対面のチャネルを融合し「いつでもどこでも利用できる金融サービス」や,「パーソナライズされたデジタルサービスの提供」を実現することで,顧客の金融機関に対するエンゲージメント向上を目指す.
モビリティサービスによる地域交通課題解決への考察
MaaS(Mobility as a Service)や次世代モビリティに代表される,新しい技術やサービスモデルの進化により,移動の概念が大きく変わろうとしている.それらは,現在抱えている交通に関連する様々な課題を解決する手段,特に人口減少と高齢化で公共交通が縮小している地方部の課題解決として注目されている.単に移動の利便性を向上させるだけでなく,事業の継続性や地域を活性化するという本質的な課題解決のためには,移動目的の創出,車両やドライバーの有効活用が欠かせない.それらを実現するためには地域の各ステークホルダーが地域を活性化するという視点で,次世代のモビリティに取り組むことが肝要である.
トンネル計測点群評価機能の開発
国土交通省の推進するi-Constructionの取り組みにおいて,3次元スキャナで取得した計測点群の活用は重要な要素のひとつである.日本ユニシス・エクセリューションズは,i-Construction対応を進める佐藤工業株式会社と共同で,トンネル建設中に取得した計測点群の形状評価を行う機能を開発し導入した.本機能は,打設コンクリート量の見積もりと,打設したコンクリートの厚み分布評価をCADシステム上で実現するものであり,本機能を活用することで,トンネル施工のコスト削減や,コンクリートの厚みを安全かつ効率的に評価できるようになることが期待できる.本機能は,導入後佐藤工業からも高い評価を得ており,今後も機能追加や改善を進めることが予定されている.
DX時代に求められるネットワークインフラ
企業価値を高めるため,自律的な要素を効率的に組み込んでインフラの利用プロセス全体を包括することが,新世代ネットワークアーキテクチャのあるべき姿である.クラウドサービスや仮想基盤の発展により,ハードウェアに依存せずソフトウェアで制御できるネットワークインフラが登場した.ソフトウェアとしての価値は,利用者が容易に利用できるように「連携」,「可視化」,「自動化」を統合することである.技術視点だけでなく利用者視点で評価することが重要である.
IoT機器のライフサイクル全体をカバーする包括的セキュリティ対策
サイバー攻撃のターゲットがIT機器からIoT機器へと変容し,その攻撃の件数は増加の一途をたどっている.IoT機器のサイバー攻撃対策は,IoT機器のライフサイクル全体をカバーする包括的なソリューションであること,多層防御を提供すること,費用と時間のかかるプロセスを避けるために全自動のソリューションであること,が望ましい.この考え方を具現化するソリューションとして,大日本印刷は,IoT機器の設計・開発段階から導入後まで,ライフサイクル全体を通じてセキュリティと信頼を提供するイスラエルのVDOO(ヴイドゥー)社の「IoT機器の脆弱性対策ソリューション」に着目し,2019年4月からVDOO社と提携し,同社のソリューションを提供している.VDOO社ソリューションは,開発段階でIoT機器のファームウェアを分析し,その機器の構成に特化した脆弱性を視覚化,また製品リリース後の機器へのサイバー攻撃のモニタリングや保護までを一貫して行うものである.
【記事】研究コミュニティとの架橋による企業ケイパビリティの作り方
読みを速くする日本語文章レイアウトシステムの研究開発
文章を快適に読むためにはスムーズな目の動きが欠かせない.読書中の目の動きを調べると,無意識のうちに発生してしまう頻繁な停留や逆行が,読み速度や読み心地の低下につながることがわかってきた.そこで本研究では,日本語文を読むときの視知覚メカニズムにもとづき,自然と目の動きがスムーズになるような様々な表示方式を考案し,視線移動を分析しながら効果を検証してきた.その結果,読み心地や内容の理解を低下させることなく,自然と1分あたり約1,000文字の速さで読める表示方式を見出した.また,見出した表示方式をシステム化し,Webニュースや展示解説ラベルなどへの適用実験を通じて,効率よく読むニーズや受容性を確認した.