データエンジニアリングV
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2021年12月発行 Vol.41 No.3 通巻150号データエンジニアリングV
ユニシス技報では,2009年に発行した技報101号で最初にデータエンジニアリングを特集し,これまで4回にわたって本テーマを継続的に取り上げてきました。IoTや無線通信の発達によりさまざまなデータが取得され,AIによる認識技術により,多くの事象がデジタルデータとして記録・共有されることで,データを根拠としたオペレーションや意思決定が行われるようになってきました。その中でセンサーデータやビジネスデータの分析はますます多くの企業で行われ,企業の垣根を越えてデータを共有し活用することで,その活動は単一企業のデータ活用のみならず,街や産業全体にも広がってきています。本特集号では,社会や企業や産業を変えていくデータ流通と高度なデータ利活用を紹介する5編の論文及び記事を収録しています。
官民のオープンデータとパートナーシップで住民の備える暮らしを支援する「まちケア・コモンズ」
新型コロナウイルス感染症により様々な分野で社会と価値観の変容がもたらされ,地域の企業や住民もデータを活用した社会変容へのスピーディな対応が求められている.DXの取り組みがはじまり,国は「デジタル社会の実現に向けた重点計画」において,「つながる」「安心して使う」「共に創る」というデータ活用3原則を示した.強靭なデジタル社会の実現には,データ利活用力がキーとなる.データを根拠とすることで,様々な組織や立場の人々が地域の課題を共通認識として捉え,共通のゴールを目指して解決方法を共に検討していくことができるようになる.
VUCAの時代を先取りしたDX化成功事例であるA社「CX基盤」の紹介
航空A社は「お客様向けデジタルサービスプラットフォーム(CX基盤)」を構築し,同基盤を活用した諸施策の運用を2018年11月に開始した.A社では,旅客サービスの分野において,基幹系のバックエンドシステムが保持するデータの利活用を推進することができていなかった.CX基盤は,データ仮想統合技術を採用することで,各システムに散在しているデータを,あたかも単一システム上に存在しているかのように取り扱えるようにした.また,会員・非会員を問わず,利用者の“個”を把握することで,サービス品質とマーケティングの両面において,A社が目指す「顧客と1 to 1で対応すること」が実現できるようになる.その取り組みは,運航便のロードファクター(搭乗率)の向上や同社ブランド力の強化につながるだろう.
電力消費削減に向けたEV利用状況予測
SDGsなどによる環境問題への意識の高まりから様々なリソースを用いたエネルギーマネジメントの取り組みが始まっており,電気自動車(EV)は移動できる電源として高く期待されている.EVを活用して家庭や法人の事務所,工場,店舗などのエネルギーマネジメントを行うには,EVの出発時刻・帰宅時刻や,各外出で消費する電力量(SOC)を把握しなければならない.
出発時刻・帰宅時刻の予測は,機械学習の一手法であるRNNを応用して行った.また,消費電力量の予測では,出発時刻と帰宅時刻が近い過去の実績データを検索し,統計的処理を行った.ユーザの行動は不規則で,完全には予測できないものの,走行データでの評価を通じて実用への道筋を確認できた.
パーソナルデータ流通基盤“Dot to Dot”による共創の未来
日本ユニシス株式会社はパーソナルデータ流通を促すための特性を独自に考案し,スマートシティ構想を進める三井不動産株式会社とパーソナルデータ流通基盤「Dot to Dot(D2D)」を共同開発した.Dot to Dotは,ハイブリッドP2P(peer to peer)型のアーキテクチャであり,データ連携機能や同意管理機能,ID連携機能などの機能を提供している.2021年8月に総務省のデータ連携促進型スマートシティ推進事業にも選定された柏の葉データプラットフォームの中では,住民向けポータルサイトと提携サービス間,提携サービスとパーソナルデータ管理基盤間でのデータ連携や他システムとの連携を実現している.