Java 適用技術
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1999年11月発行 Vol.19 No.3 通巻63号Java 適用技術
Java技術と適用技術の現状
本技報に納められている論文は,Java を実システムに適用した体験をまとめたものである.特に業務システムへの適用を中心にしている.本論は,二つことを目的に書かれている.一つは,Java 技術が特に基幹系システムを担当している技術者にはまだ十分には広く知られているものにはなっていない現状を踏まえ,各論文の主題を理解しそこに現れる用語・概念の簡単な理解を得られるようにJava の発展の歴史に触れている.これは本特集を読みやすくするためのものである.もう一つはこれからのコンピューティング環境での重要な技術となるコンポーネント開発技術について触れている.これはこれからのソフトウェア開発への提言である.
コンポーネント指向のJavaアプリケーション開発技法
日本ユニシスで開発したコンポーネント指向開発技法に基づくJava アプリケーション開発方法を紹介する.コンポーネント指向の基本は,インタフェースと実装の分離である.この開発技法は,以下の特性を持つ.1 )インタフェースとユースケースを対応させることにより,開発プロセスは見通しよく,開発環境の支援を行ないやすい.2 )情報隠蔽とカプセル化の単位を区別することで,データを保全しやすく,効率的で柔軟なコンポーネント・モデルを提供している.3 )アーキテクチャを絞り込むことで,適用可能な手順を具体的に示している.以上の特性により,Java 言語の能力を活用したアプリケーション開発が実現できる.
Java/CORBAアプリケーション開発環境の実現
インターネットを基盤とする企業ビジネスが活発化する現在,Java やCORBA などの技術を取り入れた本格的なビジネスアプリケーションの開発に期待が集まっている.この分野では,市場の変化を的確にとらえたビジネスのサービスを実現するために,低コストで迅速な開発が求められる. 本稿では,CORBA を実行基盤とし,サーバ開発言語にJava を使用したビジネスアプリケーションの開発環境の実現について述べる.この開発環境では,特定のアプリケーションモデルに基づき,そのアプリケーション構造と制御ロジックをテンプレートに埋め込み,プログラムの自動生成を行っている
基幹系向けミドルウェアのオブジェクトモデル
オブジェクト指向技術を基幹系ビジネスアプリケーション領域に適用する気運が高まっている. アプリケーション構造は大きくAP 本体,AP 制御構造,システム制御構造に分割することができる. 基幹系ビジネスアプリケーションを支えるミドルウェアは,メインフレームシステムで提供している厳しい機能,性能,品質要求を満たすと同時にAP との境界面を明確にする必要がある. AP 本体部分のモデリングに関してはよく議論されているが,同様に基幹系ミドルウェアの領域へのオブジェクトモデリングは有益である. 本稿では,実績のある基幹系ミドルウェアから機能要件を抽出し,システム制御とAP 制御構造をAP から分離する基幹系ミドルウェアのオブジェクトモデルを提示する.
JavaとCORBAによるシステム開発
Java とCORBA を使用したシステム開発が失敗するのは,CORBA の使い方に原因がある場合が多い.本稿では,失敗しない現実的なCORBA の使用方法について考察する. 本稿でCORBA の本質的な問題と考えているのは,ネットワークやライブラリのコストがかかることである.そこで,どのような方式を採用したとしても同等のコストがかかってしまうネットワーク通信に,CORBA の適用範囲を限定することを検討する.また,その際に考慮しなければならない点や実装の方式についても考察する.
クライアントサーバシステムにおけるJavaの適用
Web 技術を中心としたビジネスシステムが増えてきている.インターネット上では,企業の広報活動をはじめ,業務システムも稼働し始めている.このようなシステムにおいてJava をどう適用していくかは,システム開発における重要なポイントである. 本稿では,まず検証モデルを設定し,システムで採用するJava の技術要素の選択と解説をおこなう.そして,検証モデルの実証評価をもとに,Java のクライアントサーバシステムへの適用について論じる.
Javaによるドキュメント作成ツール
本稿では,Java で実装したアプリケーション「データシート」でいかにJava 技術を用いたかを報告する. 「データシート」と呼ぶこのアプリケーションは,ドキュメントを作成することを目的としたものである.「データシート」の大きな特徴は,ドキュメントを作成するための部品を追加することができることである.現在,「データシート」で作成できるドキュメントは,文字列とグラフィックスイメージから成るもの(文字列とグラフィックス用の部品がある)であるが,部品はアプリケーションと独立して開発でき,今後必要に応じて部品を増やすことができる. 「データシート」には,いくつかのJava 技術が使用されており,本稿ではアプリケーション開発の紹介を通して,それらの技術を報告している.「データシート」における主な技術は,JavaBeans ・イベント・MVC ・シリアライズである.
勤務票システムの業務要件とシステム要件
日本ユニシス株式会社ではJava とCORBA をベースとして社員の勤怠管理をWeb上でおこなうシステムを開発した. このシステム開発経験をもとに,Java やCORBA を基幹業務システムに適用することのメリット,適用する際の課題と対応策について紹介する.また,基幹業務システムへの適用を前提とした場合に,現時点でJava を適用すべき場面/適用すべきでない場面について言及する.
勤務票システムのアーキテクチャ
日本ユニシス株式会社は,1998 年にJava,CORBA を用いて全社員の勤務票を管理するシステムの開発を行った.当システムの開発には,レスポンスの確保と社内イントラネット基盤としての普遍性の確立という二つの課題が課せられた. 業務システムの開発には,アーキテクチャが必要になる.アーキテクチャを構築する事によって,さまざまな課題・要件の解決を図る. 本稿は,Java,CORBA を要素技術に,勤務票システムのアーキテクチャをどう構築したかについて報告する.
勤務票システムにおける技術課題
国内においても,Java を用いたミッションクリティカルな業務への適用が出始めている.当社でもJava とCORBA という先進技術を用いた勤務状況報告・管理システムを開発した. この開発経験から得た現在のJava 適用における問題点と対処方法について報告する.
Javaにおけるネーミングサービスとディレクトリサービスのためのインタフェース
最近,普及が加速してきたJavaTMアプリケーションサーバでは,多様なリソースを利用するAPI が充実してきた一方,それに伴う開発者の負担が大きくなってきている.また,コードの移植性も重要なテーマである.ここでは,JNDI (TM )を利用することにより,統一的なインタフェースでリソースにアクセスすることにより,コードの移植性を高め,開発者の負担を軽減する可能性について検証する.