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特別企画(対談):キーパーソンが語る“DXB(DNP×BIPROGY)” の挑戦──人財交流編(前編)

2026年4月13日

新入社員合同研修が育む次世代人財。その狙いと舞台裏

DNP藤田様、BIPROGY川端

大日本印刷(以下、DNP)とBIPROGYは、2012年の業務提携以降、「DXB」(DNP×BIPROGY)の姿勢で多面的な取り組みを続けている。2023年度には両社の「新入社員合同研修」がスタートし、2025年度で3回目を迎えた。本対談では、大日本印刷株式会社情報イノベーション事業部とBIPROGY人的資本マネジメント部のキーパーソンに、この研修の狙いや次世代人財の育成に向けた展望を聞いた。全2回でお届けする。前編では、大日本印刷株式会社情報イノベーション事業部 価値創造推進本部の藤田智子本部長とBIPROGY人的資本マネジメント部の川端絵美部長が取り組みの意義や手応え、これからに向けた思いを語り合った。

入社早々の外部交流が生む、将来への種まき

—まずは、DNPとBIPROGYがそれぞれどのような人財育成に力を入れているのか、教えてください。

藤田 氏

情報イノベーション事業部グループには、現在約9500人が所属しています。その中で私たちは、主に営業・企画部門向けの人材育成や教育の役割を担っています。「自律的な学習」を特に意識し、一人ひとりが学ぶことによって個の成長のみならず、チーム力や組織全体の成長につなげることを目指し、3つの取り組みに注力しています。1つ目が階層別研修プログラムです。
本研修においては、すぐに業務の実践で生かせることを意識したプログラムを実施しています。

大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部
価値創造推進本部 本部長 藤田智子氏

次にチーム力の強化として個々の学びを共有し合い、全体の力を高める取り組みです。その1つが、お客さまへの価値提供や提案における成功・失敗両方の事例を共有する「CX勉強会」です。成功事例は多く共有されますが、失敗事例はなかなか表に出てきません。今後、失敗からも学ぶ文化を育てていきたいと考えています。

最後に、特徴的な取り組みとして「人材育成会議」があります。これは、現場の社員が教育プログラムの企画・運営に参加する取り組みです。私たちのような人材育成を担当する部門だけがプログラムを企画・提供する場合、受講者にとって「やらされている」という感覚が強くなってしまいがちです。そこで、人材育成会議では、事業部グループ員自身が日々、営業・企画など現場で感じている課題を反映し、必要な教育プログラムを自ら企画し、私たちスタッフと共に運営まで担います。これは、現場主導のボトムアップ型の取り組みです。

川端

BIPROGYでは、2024年度から人的資本経営に大きくかじを切り、その道筋を「BIPROGYグループ人財戦略レポート」にまとめて社内外に発信しています。BIPROGYグループ全体で、約8400人の社員が在籍していますが、全社員に期待する人財像として「志追求型人財」を掲げています。「志」というと少し仰々しく聞こえるかもしれませんが、例えば、「お客さまの役に立ちたい」「こんな技術を極めたい」、あるいはプライベートで「いい母親でありたい」「趣味を充実させたい」といった身近なもので構いません。そのことを考えると自然に前向きな気持ちになれるような、自分の心を動かす目標や思い、と定義しています。

BIPROGY株式会社
人的資本マネジメント部 部長 川端絵美

自分の志と現在の業務のつながりを考えることで、「会社から与えられた仕事」から「自分の志につながる仕事」へと、意味づけを変えることができます。そうすることで、1日の大半を費やす仕事の時間が少しでも楽しく、ワクワクするものに変われればいいなという思いでこの概念を打ち出しています。「志追求型人財」という言葉は少し長いので、より身近に感じてもらえるよう、「ココツイ人財」という愛称で呼んでいます。

ココツイ人財を増やすために、志の「探求フェーズ」「言語化フェーズ」「追求フェーズ」の3つに分けて施策を打ち出しています。アンケートの結果、志のようなものを持ってはいるもののハッキリ認識できていない社員が多いことがわかったので、2025年度は特に言語化に力を入れてきました。他部署のメンバーとの対話を通じて自分自身の志を言語化する「志言語化ワークショップ~ココカフェ」を開催し、社員の約半数が参加しました。

—両社では、約3年前から新入社員の合同研修を実施しています。その経緯と狙いを教えてください。

藤田 氏

2012年の業務提携以降、両社では、エリア内での交流や、営業、エンジニアなど同じ職種内での連携は進んできたと思います。しかし、社会が大きく変化し社会課題が複雑化していく中では同じ属性での交流だけでなく、より多様な人が集まり固定観念にとらわれない交流が重要になると考えていました。そんな発想から、2023年度にBIPROGYさまとDNPの新入社員合同研修(以下、合同新人研修)がスタートしました。

これはまだお互いに自社の文化に染まり切っていない、入社1年目の5月、正式配属前のタイミングで実施しています。先入観のないフラットな状態で交流し、気軽に情報交換ができる関係性を築くことが、将来のビジネスにおける協業にもつながっていくのではないかと期待をしています。

川端

社会人になった早い段階から、自分の世界がすべてではない、自分の当たり前が他の人にとっての当たり前ではないことを体感してほしいという狙いがあります。その価値観があれば、将来が見通しづらい時代においても、より柔軟な発想で新しいチャレンジができるようになるのではないかと思っています。また、社外のネットワークの大切さを1年目から理解してもらうことも狙いの1つです。

新入社員で実績、次はリーダー層で共創加速へ

—業務提携した2社による合同の新入社員研修は世の中でもまだあまり例のない取り組みです。立ち上げに当たってどんな課題に直面しましたか。

藤田 氏

他社と連携して新入社員研修を実施するのは、初めての経験でしたので、会場をどうするのか、実施時期をいつにするのかなど細かいことですが、1つ1つ決めていくことが大変でした。最も苦労したのは、半日という短い時間の中で、学んだことをしっかりと持ち帰ってもらうためのプログラム設計です。

—過去3回の研修を実施して、社員たちにどのような変化や成果を感じていますか。

川端

研修を実施してみて、まずはこのような取り組みが新入社員のエンゲージメントに良い影響を与えることが分かりました。例えば、2025年度実施の研修後のアンケート結果では(1)約9割が相手の会社の概要を理解している、(2)参加者の半数以上が今後も連絡を取り合える人脈ができた、という前向きな回答がありました。社会に出たばかりで不安や悩みの多い時期に、違う会社の社員たちも同じように悩んでいることが分かれば、「みんな同じなんだ」「自分はこれでいいんだ」という安心感につながるのだと思います。

また、入社後、自分の会社や事業について一生懸命学んでいるタイミングに他社の文化や価値観に触れることで、客観的に自分の会社を見ることができ、自社理解が深まるきっかけにもなっていると感じます。自社の良さや強みを見直し「この会社に入って良かった」と思えたり、「もっとこうしていきたい」という意欲につながったりしているようです。

合同新人研修(2025年度)の様子

当日の様子:DNP資料より

藤田 氏

2025年度の合同新人研修を見学したのですが、参加者の皆さんが、誰がどちらの会社なのかわからないほど、活発に意見を交わし、生き生きと取り組んでいる姿がとても印象的でした。社内研修が続いているタイミングで、いつもとは違う社外の人と会ってコミュニケーションを取ることが楽しいのだろうと感じました。

—合同新人研修で得られた人的交流やノウハウを生かすための新たな組織設計や人財育成に関する構想があれば教えてください。

川端

研修後のBIPROGY社員アンケートでは、協業の課題として上位に「コミュニケーションの難しさ」や「組織文化の相違やその理解不足」といった回答がありました。コミュニケーションでいえば、そもそも両社が触れ合う機会が少ないため、合同新人研修のような場を会社が積極的に用意することが大事だと考えています。

今後、リーダー層や管理職層にも対象を広げた取り組みができないか、DNPさまと検討を進めています。ただ、より経験豊富な層を対象にするならば、単なる交流にとどまらず、いかに共創につなげていくかがポイントになります。そのためには、両社が日ごろ持っている課題を持ち寄って解決策を考えるなど、テーマ設定の工夫も必要になるでしょう。また、その場だけで終わらせず、自律的に両社で活動を続けていけるよう、参加者のリーダーシップを引き出すことも大事です。

もう1つの課題である「組織文化の違い」は、課題ではなく前向きにとらえることもできると思っています。イノベーションには多様性が不可欠なので、違いを面白がるような発想に変えられると、良いものが生まれる可能性も高まるのではないかと思います。

藤田 氏

両社連携の最大の目的は、社会に新しい価値やビジネスを提供していくことです。そのためには共創が必要です。両社の強みを生かした共創が進む場づくりや仕掛けづくりに取り組んでいきたいと考えています。例えばですが、お客さまと対話をし、共創を進める場として、パートナーとの共創事例を紹介するプライベート展示会「DNP THE SESSION」(参考「DNP THE SESSION 2026」)を開催しています。BIPROGYさまも毎年「BIPROGY FORUM」を開催していますよね(参考「BIPROGY TERASU」)。これらの場を活用して、両社の強みの理解を深め、具体的なディスカッションをする機会を作ることで、新たな共創の種が生まれ、両社の強みをうまく掛け合わせた価値提供にもつながっていくのではないかと思います。

—ビジネスパートナーとして両社の未来像について、3年後、5年後にどのように進化していたいか、両社の展望をお聞かせください。

藤田 氏

情報イノベーション事業部は、リアルとデジタルを融合し、最高のCXの実現を目指して「DX for CX」というキーコンセプトを掲げています。社会に新しい価値を提供していくには社内だけでは難しく、社外のパートナー企業との共創が不可欠です。その重要なパートナーの1社がBIPROGYさまです。新入社員同士の交流から一歩進んで対象を広げていくこと、そして一緒に社会課題に取り組み、新しい価値を創出していくことを目指していきたいですね。

川端

今はどの企業も人財の獲得に苦労されていると思います。BIPROGYでも特にエンジニアの採用は難しい局面に入っています。将来的には、DNPさまのように業務提携している企業と会社の垣根を越えて、例えば両社から適任の人財を集めて新しいプロジェクトを進めていくようなことができるといいなと思っています。そのためには、両社のどこにどんな人財がいるのかを可視化していく必要があります。その上で、必要な人財を一緒に育てていく──そんな取り組みが実現できれば、両社のパートナーシップがより本質的なものになるのではと考えています。