CLEARPATHサーバHMPシリーズ
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1998年2月発行 Vol.17 No.4 通巻56号CLEARPATHサーバHMPシリーズ
HMP NXシリーズ実現の基礎技術
Aシリーズは,1990年代の当初から「メインフレームのオープン化」を進めてきた.Aシリーズの後継機であるHMP NXシリーズは,二つの開発目標を持っている.一つは,シームレスなオープン化を実現するために,アプリケーションやデータベースインタフェースのレベルで,Aシリーズのオペレーティングシステム環境(以下MCP環境)を,Windows NTサーバオペレーティングシステム環境(以下NTサーバ環境)やWindowsクライアント環境(以下Windows環境)と統合させることである.これによって,MCP環境がもつ基幹業務サーバとしての長所や過去の資産を継承しつつ,Windows/NTサーバ環境のもつ先進性・業界標準としての利点,豊富なアプリケーションという長所を統合することができる.もう一つの開発目標は,Aシリーズアーキテクチャを,たとえばインテルプロセッサなど,Aシリーズ以外のプロセッサ上に実現するエミュレーション技術の実装である. 本稿では,AシリーズからHMP NXシリーズへの技術的変遷を述べ,Windows/NTサーバ環境との統合を可能にしている技術と実装形態を紹介する.最後に,HMP NXシリーズの今後を展望する.
HMP IXシリーズにおける開発環境
HMP IXシリーズのサーバ(シリーズ2200ノード,WindowsNTサーバノード)のアプリケーション開発環境は,ソース・プログラムをPCに保持することを前提にし,核となるコンパイラやデバッガとそれを支援するツールや部品から成る.プログラムの作成/編集/コンパイル/デバッグといった一連の作業は相互連携しながら,すべてクライアントPCのGUI(Graphical User Interface)環境から実施できる統合開発環境である.PC上の各種開発支援用ISV(Independent Software Vendor)製ソフトウェアを利用できることもメリットの一つである. PCのGUI環境とHMP IXサーバ環境の連携では,LAN(Local Area Network)上の業界標準であるTCP/IPをベースにした,TELNETおよびFTPプロトコルを利用している.また,マイクロソフト社のOLEやActiveX技術を採用している.本稿では,HMP IXシリーズにおける開発環境について,基本的な考え方とそれを実現する方法について説明している.また,今後の方向性と課題について言及している.
ホスト連携ActiveXコントロールによる開発支援ソフトウェア NX/ESPEC,IX/ESPEC
メインフレームのアプリケーション・プログラムにおいて,PCのビジュアルな環境を活用することは,GUIによるオペレーションの統一や操作員の負荷軽減,画像・音声データによる情報の活用などが可能となる有効な手段である.また,反対に,PC側のアプリケーション・プログラムから考えると,メインフレームの信頼性,強固性は,基幹業務を考えると必要不可欠となる. ESPEC(Enterprise Server and Pc Environment Construction tool)は,このようなホストシステム(Aシリーズオペレーティングシステム(MCP)環境またはシリーズ2200オペレーティングシステム環境)とPCが連携したアプリケーション・システムの構築支援ソフトウェアとして提供された.ESPECは,ホストシステムが持つシステムサービスをWindowsクライアント環境のコンポーネントとして提供し,PC側の一般的な開発環境(ツール)を使用して,ホストシステムと連携するアプリケーション・プログラムの開発を可能にする. 本稿では,ESPECの機能概要と,それの基礎となっている技術,ESPECを使った開発方法を解説し,ESPECの今後を展望する.
異種OS環境間での異種データベース連携
近年企業内の情報システムは急速に変化しようとしている.とくにUNIXを中心とした部門サーバやPC(パーソナル・コンピュータ)の仕事場への普及は,情報システムのあり方を大きく変えようとしている.これまでの,限られた人々に対し定型的な情報を提供するシステムは,不特定の人々からのアドホックな問い合わせに情報を提供するシステムへ変化しようとしている. このような環境の変化に対応するため,HMPシリーズではUNIXやPCとのデータベース連携機能を強化しており,HMPシリーズとデータベース連携に必要なソフトウェア群が提供されている. 本稿では,データベース連携を実現するために必要な技術,解決すべき課題,および将来への課題をHMPシリーズへの実装を中心に論じていく.
HMP NXシリーズにおけるイントラネットの構築
企業情報システムの連携基盤として1996年に話題となったイントラネットが,1997年を迎えてから,その期待に応えられるかどうか,試されようとしている. イントラネットの適用領域も,単なる情報共有からトランザクション処理,データベース連携,グループウェア連携といった高度な分野に広がり,さらに企業内のシステム構築から他企業とのネットワーキングに拡大したエクストラネットへと広がっている. 本稿では,HMP NXシリーズを利用した場合,企業情報システムの技術基盤の変化に対応して,どのような技術を基幹システムに取り入れることができるかを明確にする.このため,基幹システムにおけるイントラネットでの活用領域および実現上の留意事項をトランザクション処理とデータベース連携に焦点を当てて明らかにする. 次に,HMP NXシリーズによるイントラネット構築の実装技術を,現在提供されているソフトウェアをもとに解説する.この実装技術の解説では,HMP NXシリーズのホスト(MCPオペレーティングシステム)環境とWindowsクライアント環境やWindows NTサーバオペレーティングシステム環境の技術的連携・統合の現状も明らかにする.最後に,インターネット構築やコンポーネント技術の実装に向けてHMP NXシリーズの方向を展望する.
HMP IXシリーズにおけるWWWサーバ
インターネット・イントラネット時代に対応して,ユニシスはClearPath HMP IXシリーズのシリーズ2200ノードで稼働するWWWサーバ,WebTS(Web Transaction Server)を開発している.このプロダクトは,UNIXやWindowsNTサーバをフロント・エンドに必要とせずに,シリーズ2200ノード上のミッション・クリティカルなトランザクション・アプリケーションをWWWブラウザからアクセスする機能を提供する. 本稿では,このWebTSの将来計画を含めた構想とイントラネットへの適用上の検討事項について述べる.
HMPシリーズの耐障害性
HMP IXシリーズは,シリーズ2200ノード(以降2200ノード)とWindows NTサーバノード(以降NTノード)から構成され,HMP NXシリーズはAシリーズノードとWindows NTサーバノードから構成される. HMPシリーズの耐障害性は,2200ノードおよびAシリーズノードのみを対象とするのではなく,NTノードも含めて考慮しなければならない.長年培ってきたシリーズ2200とAシリーズの耐障害性を高めるための機能は,完成されたホットスタンバイ・システムとして実現され数多くのユーザで活用されている. 一方,Windows NTサーバの耐障害性を高めるための様々な製品が,各種ハードウェア・ベンダー,ソフトウェア・ベンダーからリリースされており,それらの製品によってWindows NTサーバの信頼性を向上させている. 本稿では,2200ノードとNTノードあるいはAシリーズノードとNTノードを融合したHMPシリーズの耐障害性を高めるために実装した方法と将来実現されるであろうクラスタリング機能について述べる.
HMP NXシリーズにおける運用管理
HMP NXシリーズのように,Aシリーズ・オペレーティングシステム(MCP)環境とWindows NTサーバ・オペレーティングシステム環境という異なったオペレーティングシステムを統合したシステムでは,システムの運用・管理において,単一のオペレーティングシステムとは違った要件が発生する.たとえば同期を取った双方のシステムの起動・終了シーケンスや自動化の仕組み,統一したシステム操作や資源管理などである.HMP NXシリーズにおける,このようなシステム運用・管理の要件に対する解決方法,技術および運用で重要な効率について解説する.
HMP IXシリーズにおける運用管理
近年クライアント/サーバーシステムの普及により,複数コンピュータによる大規模なシステムが構築されている.複数コンピュータを使用して実行環境を構築する場合は,コンピュータ間のインタフェースに十分な考慮を必要とするのは当然であるが,システム全体を安全にかつ効率よく維持管理するためにはその運用管理の面に関しても,より慎重な注意を払わなければならない.運用管理には様々な機能が要求されるが,特に複数コンピュータによるシステムの運用管理という面では 1.同期を取った各コンピュータの立ち上げ/終了 2.同一ポイントからのオペレーション操作 3.他ノードの迅速な障害検知 4.同一インタフェースによるリソース管理 等が求められる. HMP IXシリーズは同一筐体内に,シリーズ2200ノード(以降,2200ノード)とWindows NTサーバノード(以降,NTノード)を搭載した構成を持つので,複数コンピュータで構成されるシステムの運用管理と同じ課題を持つ.このため,これらの要求を充たす以下の機能を実装している. 1.両ノードの稼働状況を1台のPCから運用・操作するSPO(Single Point Operation)機能 2.2200ノードから一定間隔でNTノード上のNTサーバオペレーティングシステムおよびアプリケーションの稼働状況を監視するNTノード制御・監視機能 3.両ノードの立ち上げ/終了を行う自動運転制御機能 4.Webをインタフェースとするリソース管理機能 本稿では,これらのHMP IXシリーズで実装している運用管理の機能について紹介をする.
UMS (Universal Messaging System)の概要
現代のビジネス社会においては,情報交換のための手段が多様化している.多種な手段からの情報を効率よく活用する必要がある人には,情報を秩序だてて処理する要求が存在する. CTI(Computer Telephony Integration)は電話とコンピュータを融合させる技術であり,新しいビジネス基盤として適用の気運が高まっている. UMSはCTIを実現するユニシスの概念であり,またHMPシリーズの特徴であるオープン性とメインフレームでの強固なアーキテクチャを活かした現在開発中の製品名である. 本稿では,UMSの概要をユニファイド・メッセージ機能の観点から解説する.
HMP NXシリーズにおけるAシリーズ・アプリケーション進化の最新動向
HMP NXシリーズは,汎用機としてのAシリーズプロセッサとインテルプロセッサを内蔵し,高速バスで結合した異機種結合型のマルチプロセッサ(HMP: Heterogeneous Multi Processor)システムである.このシステムでは,Aシリーズプロセッサ上のオペレーティングシステム(MCP)環境と,インテルプロセッサ上のWindows NTサーバオペレーティングシステム環境(NTサーバ環境),あるいは,Windowsクライアント環境が,アプリケーションインタフェースレベルで統合されている.このため,既存アプリケーションをソフトウェア資産として生かしつつ,オープンシステムの技術や市販ソフトウェアを利用することができる. 両者のシームレスな稼働環境を提供する仕組みの中核は,ファイルサービスにおける共有ディレクトリ機能である.共有ディレクトリに登録されたファイルは,MCP環境上のアプリケーションからもNTサーバ環境上のアプリケーションからも同時に参照・更新が可能である.このため,両者は動的に連携・協調して,相互に仮想化された計算機資源を共有し合うことができる.すでに,この異機種結合マルチプロセッサシステムの長所を生かしたシステム構築の模索がユーザの間で始まっている.ここでは,2事例を紹介するが,一方は物流システムにおける納品伝票発行システムであり,他方は情報系システムにおける基幹データベースからデータ・ウェアハウスへのデータ抽出,展開システムである.両事例ともMCP環境とNTサーバ環境との間でファイルを共有することで,動的な連携・協調の仕組みを実現しており,HMP NXシリーズの有効利用の拡大を予感させる.