3章 再生型ネットポジティブ社会に向けたリジェネレーション・デザイン

リジェネレーション・デザインに欠かせない四つの視点
再生型ネットポジティブ社会の実現に向けて、各企業・社会・個人がそれぞれのリジェネレーションを推し進めていく。それに先立ちリジェネレーションがどのようなメカニズムで機能するのかを整理しておくことは、個々の取組みをより適切にデザインするための助けになるだろう。そこで着目したいのが「共創」「共生」「成長」及び「ガバナンス」の視点である。
共創:共通のビジョンや目的のもとに集った人や組織が、互いに新しいアイデアや解決策を出し合うことで価値創出がなされること。
共生:人や社会、環境が、互いに利益を得られる互恵関係を形成し、それが持続可能な状態になること(花と蜜蜂の関係)。広義においては企業のアライアンス関係、さらにそのサービス利用者を含めた関係も共生と捉えられる。
成長:共創・共生に関わる人や企業、社会、環境、それぞれが持つ価値が可視化され、持続的に循環することで全体がより良くなっていくこと。従来可視化されている価値に加え、既に消費財としての役割を終えた廃棄物等の価値、顕在化していないもしくは活用されていない遊休資産等の価値 、あるいは自動化・最適化により発生した余剰リソース等の価値も可視化され活用される。
ガバナンス:共創による価値創出や、共生の互恵関係を持続させるための、モラルやルールを生み出す機能のこと。

「共創」は「共生」を生み、共生は新たな共創を誘発する。そこに「ガバナンス」が利いていることで持続的な「成長」が可能になる。四つの視点を適切に連関・連動させることで、より効果的なリジェネレーションがデザインされる。経済的価値・社会的価値・環境価値が循環し、それらの総体が増大(スパイラルアップ)する再生型ネットポジティブ社会が実現する(図4)。
リジェネレーション・デザインにおけるデジタル技術のケイパビリティ
デジタル技術のケイパビリティ(つなげる/最適化する/拡張する)は、いわばリジェネレーションの動力である。上記の四つの視点に、デジタル技術の力を組み合わせることで、より効果的なリジェネレーション・デザインが可能になる。

例えば、人(社会)・企業(経済)・地球(環境)を一つの生態系と捉えたとき、デジタル技術は、まず地球のアセットである森林の環境価値を可視化することで、社会と環境とを「つなげて」共生への端緒を開く。同時に志を同じくする人や企業も「つなげる」ことで新たな共創を生み出す。共創に関わる人の能力を「拡張する」のもまたデジタル技術である。共創コミュニティは、可視化された環境価値を流通させるために、デジタル技術を活用して経済活動を「最適化する」。活発に流通し増大した価値が環境に還元されることで、人・企業・地球の共生が実現する。その共生を持続的に成長させるために、デジタル技術を活用した適切なガバナンスが構築される。
四つの視点×デジタル技術のケイパビリティ
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