BIPROGY Foresight in sight BIPROGY Foresight in sight

3章 再生型ネットポジティブ社会に向けたリジェネレーション・デザイン 四つの視点×デジタル技術のケイパビリティ(2)

共生

デジタル技術は、さまざまな価値の可視化、経済化、そして循環を可能にすることで、人や社会、環境の共生関係を実現する。共生とは、いわば価値が円滑に流れるネットワークそのものである。現在は、原料・部材・生産・物流・販売等に分かれるサプライチェーンや、業務基盤・オペレーション・顧客接点等に階層化されたビジネスモデルの中を、各社保有のアセットや互いに提供し合えるノウハウが一定の価値として流れている。そうしたモノや情報の「流れ」は、今後そこに含まれる潜在的な価値が可視化されることで、新たな価値が循環する「ネットワーク」へと成長する。ネットワークでは、企業としてのさまざまな取組み、例えばCNや資源循環の推進、生物多様性や人権順守に関する対応、地域社会への貢献等も、アセット=価値として認識される。そうした価値がダイナミックに循環することで、ネットワークに関わる人や企業、環境等の共生関係が成立する。

共生×「つなげる」 〜ネイチャーポジティブを進めて互恵関係を強化する

人・企業・地球の互恵関係の強化に、ネイチャーポジティブは不可欠な要素となる。ネイチャーポジティブの実現に向けた「気候変動対策」「循環経済への移行」「生物多様性の確保」等の取組みは、次の三つの観点をふまえて推進される。すなわち「国のルール整備」「企業のオペレーションとテクノロジーの活用」「消費者の環境意識」である。

気候変動対策の代表的な取組みであるカーボンプライシングは、自然資源が持つ価値を可視化し、その価値をカーボンクレジットにより循環させることで、大規模植林や森林保全活動を促してCO2吸収量を増大させる。そのためには炭素税やクレジット取引といった国による制度整備が不可欠であり、価値の循環にはデジタル技術の「つなげる力」が必要となる。

循環経済への移行は、製造・流通のサプライチェーンを中心に進展していくだろう。資源の循環利用と付加価値の最大化を目指し、原料調達から製品再利用までの一連のプロセスで、資源・部品の残存価値や品質レベルといったさまざまな情報が可視化・管理されていく。同時に、廃棄物の再資源化、バージン材使用量の削減、カーボンリサイクルやケミカルリサイクル技術の導入等、各種テクノロジーを最大限に活用した企業オペレーションが積極展開され、利用分相当以上の資源再生=ネイチャーポジティブが進められる。生活者の環境意識も年々高まっていくだろう。矢継ぎ早に商品を買い替えるトレンド追従型の消費行動は見直され、再生品の購入やサブスクリプション製品の利用等、いわゆるエシカル消費が拡大していく。製品の利用可能期間や再生率、資源の再利用率がメーカー評価の対象となり、循環経済への移行を後押しする。

生物多様性の回復に向けた取組みにおいても、その効果が可視化・価値化されはじめている。例えば、住宅メーカー、グリーンテックのスタートアップ、環境意識の高い消費者の連携により、地域の生き物と相性のよい在来樹種の植栽を、町づくり・家づくりに活かす取組みが進められている。ここでの生物多様性の回復度合いが、動植物の種数や多様度指数等を用いたシミュレーション分析により可視化されることで、経済的価値と結びつく。とりわけ緑地劣化の著しい都市部における「生物多様性の回復」に大きな価値が見出され、それが循環することで人・企業・環境の互恵関係がより強固なものになる。

共生×「最適化する」 〜地産地消を支えて持続的な共生を実現する

デジタル技術の「最適化する」力は、需給バランス最適化や、生産現場の効率化を通して、資源のロス削減、労働力不足の解消等に寄与し、共生の持続的な成長に貢献する。

生活必需エネルギーはこれまで、電力なら電力会社が、食料なら各生産地が集中的に大量生産し、消費地へと輸送・運搬されてきた。これらエネルギーの需給バランスは今後、デジタル技術により地域ごとに最適化され、例えば再生可能エネルギーの域内消費を可能にするマイクログリッド(小規模電力網)等の普及を加速させる。

また、ビルの屋上等で栽培された野菜を一定地域内で消費する都市農園の取組みでは、日照量・土壌水分量・土壌温度等、リアル空間でセンシングされたデータが仮想空間上でシミュレーション分析され、農園運営者から栽培者へのアドバイスに活かされている。デジタル技術は、限られた耕地・生産者による栽培を可能にするだけでなく、耕作する喜びや楽しさの共有、さらにはイベントを通じたコミュニティ形成等も促しながら、都市型農業を進展させる。地産地消が促進される中で、輸送に伴うCO2排出の削減、緑化による環境再生等も実現していく。

  • *Technology Foresightは、BIPROGY株式会社の登録商標です。
  • *その他記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。