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2章 リジェネラティブな未来を拓くテクノロジー リジェネレーションを加速させるテクノロジー(5)

トラスト

リジェネレーションを推進するうえで不可欠なのが、相手が期待を裏切らないと思える状態、すなわちトラスト(信頼)である。デジタル情報や情報システムが、セキュリティ、プライバシー、セーフティ、リライアビリティ、レジリエンス等により、その期待に応えられること、つまり「トラストワージネス」を確保するためのテクノロジーや方法論が進化していく。

拡大し変容するトラストワージネスの対象範囲

デジタル技術の進化はリジェネレーションを可能にすると同時に、トラストワージネスの対象範囲を急拡大させ、その在り方も変容させる。例えば、生成AIには事実と異なる結果を生成してしまうハルシネーション現象のリスクがある。今後普及していく生成AIが生成内容を自律的に仮想空間上に記録するようなことがあれば、不完全な情報=フェイクの横行につながる恐れがある。また、アバターやデジタルヒューマンにおける操作者への信頼性、あるいは自動運転車、AI、ロボットの判断・動作に対する信頼性や安全性も確保されていなければならない。

トラストワージネスを実現するアーキテクチャー

トラストワージネスの実現に向けては、「ゼロトラスト」「デジタルトラスト」を前提としたアーキテクチャー設計が推進される。

ゼロトラスト

全ての通信及び通信先は信用できない(だからその安全性を検証する)とする「ゼロトラスト」の考え方に則った防護システムの導入は、サイバー攻撃の起点となるメールやリモートアクセスからのネットワーク侵入を防ぎ、信頼性・安全性が確保された環境を提供する。実装にあたっては、現状のセキュリティ対策レベルを診断したうえでの、目指すべきレベルの明確化、さまざまなクラウドセキュリティソリューションの組合せ、目標達成度の検証を繰り返すPDCAアプローチが有効となる。ゼロトラストシステムは、「可視化と分析」「自動化と調整」「ガバナンス」の各機能を実装し、システムリソース(ID/デバイス/ネットワーク/アプリケーション/データ)への全てのアクセスを認証・監視・制御することで、信頼性や安全性を確保する。IDごとにアクセスできる通信を厳密に制御し、ログ分析等により不正アクセスの兆候を検知して自動対応する。

デジタルトラスト

膨大な情報が飛びかうデジタル空間において、さまざまなリスクに対応できる体制の構築が喫緊の課題となっている。デジタル空間上の人材、プロセス、テクノロジーに対する信頼保証=デジタルトラストは、「本人・本物であること(対象真正性)」「内容が事実・真実であること(内容真実性)」「振舞い予想・対応可能性」の3つの側面に整理できる。

対象真正性を確保する方法の一つである分散型ID(DID)は、サービス等の利用者側がブロックチェーン上で自分のIDを発行・管理できるテクノロジーである。自治体等が保有する本人確認データと紐付けられるため、例えば学生が就職希望先への提供情報を自分で管理する仕組み等で活用される。問題発生時の責任の所在をどうするか、といった課題は残るが、従来のプラットフォーマーによる中央集権的なID管理から生まれるリスクは回避できるため、今後データの信頼性を確保するサービスとして定着していく。

内容真実性は、フェイク検知等データ・コンテンツ問題対策の中心的なテーマとなる。生成AIによるフェイク検知技術が進化する一方で、「どこまでがフェイクに当たるのか」といった許容範囲に関する政府のルール整備や個人のリテラシーも重要性を増していく。

自動運転を担うAIや、判断根拠を明らかにできるXAI(説明可能なAI)等の、いわゆる「信頼されるAI」においては、振舞い予想・対応可能性が今後の技術進展の鍵となる。AIの機械学習が複雑化していく中、ビッグデータの偏り防止や質の高い学習データの収集等、機械学習の品質管理・安全性確保が推進される。リジェネレーションの実現に欠かせないAIの信頼性を高めるテクノロジーが、トラストの枠組みの中で進化していく。

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