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コラム|柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第10回

柿尾正之【かきお・まさゆき】

小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務を経て1986年4月、JADMA:公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。
おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年6月退任。
2016年12月 合同会社柿尾正之事務所 設立。現在、企業顧問、社外取締役の他、コンサルティング、講演、執筆等。

〔著書〕『通販~不況知らずの業界研究~』(共著:新潮社)等多数。
〔主な所属学会及び社会的活動等〕日本ダイレクトマーケティング学会理事
〔大学講師歴〕早稲田大学大学院商学研究科客員准教授、関西大学大学院商学研究科、上智大学経済学部、駒澤大学GMS学部、東京国際大学商学部、他多数。

柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第10回

2021年8月19日

通販企業にとって、多くの課題があるかと思いますが、事業そのものに大きく左右することは「いかに新規顧客を獲得するか」に尽きるのではないでしょうか。しかも「低コストで、かつ効率よく」というのが本音でしょう。ひと昔、いやふた昔(20年以上)前で通販事業に参入された方々は、CPOが当時、数百円だったことを懐かしむように話される方がいます。時代環境、個人情報に関する規制等々が異なり、比較することは無理があるかもしれませんが、二桁も異なると事業そのものに対する考え方も変わらざるを得ません。ここでも何回か触れましたが、ネット通販においてはプラットフォームに出品、出店することが王道かのように思われがちですが、新規顧客の獲得という視点では、周知のごとくこの販売チャネルからは期待できません。現在、コロナ禍で健闘している企業は顧客リストを保有しているところです。その原点ともいうべき新規顧客獲得、ということを今一度考えてみることにしたいと思います。

新規顧客獲得の中心となるのは、昔とは異なり、名簿企業からの取得が無くなり、マス4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)と自社サイトでの獲得が中心となります。商品力と制作(クリエイティブ)力は、今回は除外して考えるとして、いかにコストと効率性のバランスから、自社、あるいは商品のターゲット(顧客)にフィットした媒体を選定して集客できるかがポイントとなります。マス4媒体では、テレビ、新聞の出稿量が多くなっていますが、よく指摘されるネットの影響により、さらに出稿料が低下していくのではないか、という点ですがシニア層をターゲットにしている商品群については、当面(10年はわかりませんが、5年ていど)は獲得媒体の中心であるのではないか、というのが私の考えです。
それからマス媒体の中での面白い存在がラジオ媒体です。マス媒体がネットに押されて広告料が低下する中で、落ち幅がもっとも低いのはラジオで、比較的、出稿料も安価であり、番組のパーソナリティの選択ということを考慮して展開すれば、面白い媒体であるかもしれません。媒体の選定については代理店任せではなく、自社の顧客ターゲットを考慮して地域を考慮して選んでいくことが重要です。
つぎにネットの自社サイトでの新規顧客獲得ですが、前述したようにブランドがある企業以外は、より戦略的に集客を目論んでいくことが求められます。最近では売上高の半分くらいをネットでの広告費や販促費に投下する企業もあり、自社サイトはコストや手間をかけなければ、それなりの結果でしか出ないということを忘れてはなりません。ネットだけではなく、マス媒体も含めて、表面的なコストを優先させすぎると、それなりのレスポンスしか得られず、新規顧客獲得として失敗した事例は多々あります。

最後に今では大手企業となった創業者の方のお話を紹介します。事業のスタート時に資金も広告出稿もできない中で、顧客を求めて何をしたかというと一日中、歩き回ってポスティングをして、その中で少しずつ反応があったのがきっかけとなった、とのことです。
顧客を求める真剣さこそが事業の原点といえるのはないでしょうか。