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コラム|柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第8回

柿尾正之【かきお・まさゆき】

小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務を経て1986年4月、JADMA:公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。
おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年6月退任。
2016年12月 合同会社柿尾正之事務所 設立。現在、企業顧問、社外取締役の他、コンサルティング、講演、執筆等。

〔著書〕『通販~不況知らずの業界研究~』(共著:新潮社)等多数。
〔主な所属学会及び社会的活動等〕日本ダイレクトマーケティング学会理事
〔大学講師歴〕早稲田大学大学院商学研究科客員准教授、関西大学大学院商学研究科、上智大学経済学部、駒澤大学GMS学部、東京国際大学商学部、他多数。

柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第8回

2021年6月22日

コロナ禍になって、はや2回目の夏を迎えようとしています。コロナ禍の生活は日常化しており、かつて夏の日差しを浴びて、何の制約もなく、自由に誰とでもどこへでも行ける生活であったのが、遠くの彼方に霞んでしまっています。感傷的に浸るのはさておき、今回は、そんなコロナ禍で売れる商品をキーワードとして、通販の売り方について考えてみたいと思います。
小売業全体で見るとコロナ禍での勝ち組商品には昨年から今年にかけて変化もみられます。いわゆるコロナ禍の3種の神器といわれる「マスク」「消毒剤」「非接触型体温計」の傾向を見ると「マスク」「消毒剤」は昨年の㋇以降は需要が低下し始めましたが、「非接触体温計」は堅調な需要が継続しています。コロナ禍でポジションが変わった商品としては、たとえば血圧計があげられます。血圧計は、公共施設、職場、スポーツジム等に置かれていましたが、コロナ禍では不特定多数が接触する機器として撤去され、個々人が持つ機器に変わっていきました。外出、あるいは不特定多数の人が出入りするところが敬遠された施設の1つとして美容院がありますが、その結果ヘアトリートメント関係の商品は売れる結果となりました。また家で過ごす時間が増えることはPC機器、ゲーム関連、冷凍食品、さらには運動不足からの便秘解消関連の商品の需要が増加となりました。

さて、こうした一般的な商品の動きと通販では違いがあるのかどうか、ということですが、コロナ禍の背景は同じであり、売れ筋商品の基本的な傾向として変わりはありません。ただ健康食品、化粧品といったいわゆるリピート商品は、コロナ禍以前から通販の主力商品であり、とくに健康をキーワードとしていたことが、コロナ禍で店が敬遠されることにより、さらに通販に対する需要が強くなったことがあげられます。健康関連の分野は、機能性表示食品の展開等もあり、高齢化社会の中での重要性はますます強くなっていくなかで、より通販事業での重要な位置づけとなっていくと確信できます。ただ最近の健康食品の売り方で考慮すべきことを以下、三点、あげさせていただきます。
1つ目は競合の参入により、市場が飽和になりつつあること、2つ目は単一メディアでの顧客の獲得効率が悪化していること、そして3つ目は薬機法等により、表現の規制が強化されていること、です。

通販は、メディア上で「顧客に対する説得の手法」を極めることとも言えます。これまでの規制ギリギリの効能効果をイメージできるようにする広告手法のみでは限界に近づいています。このことに対して、顧客の内面的な欲求(悩み、あるべきライフスタイル、こうなりたい)を的確に表現化する、いわゆるインサイト型広告の手法は、ひとつの解決策となる可能性があります。コロナ禍という特別な状況の変化が起こる中で、通販の売り方も進化していく必要があります。顧客の不安感を解消していくための訴求の仕方を考えていくことは通販の必要性が高まるからこそ、意識すべきものであると思います。