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コラム|柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第7回

柿尾正之【かきお・まさゆき】

小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務を経て1986年4月、JADMA:公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。
おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年6月退任。
2016年12月 合同会社柿尾正之事務所 設立。現在、企業顧問、社外取締役の他、コンサルティング、講演、執筆等。

〔著書〕『通販~不況知らずの業界研究~』(共著:新潮社)等多数。
〔主な所属学会及び社会的活動等〕日本ダイレクトマーケティング学会理事
〔大学講師歴〕早稲田大学大学院商学研究科客員准教授、関西大学大学院商学研究科、上智大学経済学部、駒澤大学GMS学部、東京国際大学商学部、他多数。

柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第7回

2021年5月20日

今回は、第5回でテーマとさせて頂いた「定期購入における離脱防止について」を、さらに考えてみたいと思います。多くの通販企業の悩みは「CPOが悪くなった」、「離脱する顧客が多くなった」等々、だいたいどの企業も同じです。
通販市場はコロナ禍での追い風もありネット通販を核に成長していますが、既存の通販企業にとっては競合する事業者の参入が増加し、取扱い商品やその事業者のポジショニングによっては厳しくなるところも多くなっています。もうひとつは通販事業に限らず、どの事業もそうですが、まずは購入者の母数が市場規模の枠となることから、日本の現状は人口減少のフェーズに入っており、何の戦略もなければ今後、成長していくことはありえません。

そして、コロナ禍で加速していることは、マス媒体による受け身の情報収集からネットによる能動的な情報収集、かつSNSのような情報共有へのシフトがおこっていることです。このことは、マス媒体での広告出稿により、新規顧客を獲得していた通販企業にとっては、大袈裟に言えば、地殻変動がおこっていくようなことといえます。人口という総枠の減少、あるいはメディア環境が変化する中で顧客は当然、変化してきており、その状況下で、企業側が変化せずにいる場合、数字が悪化していくことは、当然ではないでしょうか。

定期購入あるいはサブスクリプションもそうですが、顧客は離れにくく、定期的な売上が確保される、という部分だけフォーカスされます。どうも日本では供給者論理のビジネスモデルを盲目的に受け入れてしまうところがあるようですが、顧客の満足度が基礎であり、そのうえで購入がある、ということを忘れがちになるようです。
つまり顧客としてのメリットを根底から考える必要があるのではないでしょうか。
「一度、獲った魚に餌はやらない」という発想はいかがなものでしょう。魚は餌があるから、そのエリアで生き続けるわけで、そこに魅力がなくなれば、その場所から移っていくのは当然です。
通販事業的に言えば、餌は様々なものがあるわけです。キャンペーン、クーポン、プレゼント等、さらにはお客様への情報提供等がありますが、第5回でも触れましたが多くの通販企業が初回購入の顧客も、数年間、購入し続けている顧客も送られる情報は一緒、というところが多いようです。
それから、もうひとつ重要なことは、同じ商品を継続的に長く利用して頂くことは、有難いことではあるのですが、いずれその商品のライフサイクル(寿命)は尽きていきます。それを防ぐためには、その商品自体の商品力を高めていくこと、さらにはシナジーがある商品をラインアップとして追加していくことが必要です。この展開が遅れることは、顧客リストの減少にも繋がっていきます。