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コラム|柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第5回

柿尾正之【かきお・まさゆき】

小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務を経て1986年4月、JADMA:公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。
おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年6月退任。
2016年12月 合同会社柿尾正之事務所 設立。現在、企業顧問、社外取締役の他、コンサルティング、講演、執筆等。

〔著書〕『通販~不況知らずの業界研究~』(共著:新潮社)等多数。
〔主な所属学会及び社会的活動等〕日本ダイレクトマーケティング学会理事
〔大学講師歴〕早稲田大学大学院商学研究科客員准教授、関西大学大学院商学研究科、上智大学経済学部、駒澤大学GMS学部、東京国際大学商学部、他多数。

柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第5回

2021年3月19日

現在では通販の主力商品となっている、いわゆるリピート商品である健康食品や化粧品の販売方法として多くの企業が採用しているのが定期購入です。購入者側のメリットとしては、継続的な利用が商品の価値であることを前提として、購入することを忘れずに手許に届く利便性が第一にあげられます。さらに第二は、その都度に購入することに比べて割引されることのコストとしてのメリットが挙げられます。また販売する側としては、何よりも顧客の継続率を上げ、顧客を囲い込めることがあけられるでしょう。

実際、ネット通販における定期購入についての利用者のアンケートによると、定期購入を利用した経験者は、96.7%に達し、商品別でみると「健康食品関連」が61.2%、「化粧品、美容品関連」が31.4%で、1位、2位となっています(※)。
このように定着している定期購入ですが、問題がないわけではありません。2019年に全国の消費生活センターなどに寄せられた相談では「定期購入」関連が4万4370件に上り、前年から倍増しています。(18年は2万1977件)相談に持ち込まれるケースは、ほとんどが確信的に定期購入と気づかれないように作為的に広告を制作するものが多く、一般的な事業者とは異なるのかもしれません。ただ、多くの事業者でも定期購入を利用して頂いている顧客との関係性を改めて見直す必要があると考えます。具体的に言いますと、一度、定期に申し込んで頂いた顧客だからと言って、決して満足度は自動的に継続していくものではない、ということです。

初回の顧客と、数回、利用した顧客、さらに数年間、長期的に利用している顧客とではその事業者、あるいは商品との関係性は異なります。しかし、実際は多くの事業者で、顧客に送るDМ、あるいはメッセージを含めたコミュニケーションが画一的に同じであることが多々見られますが、これはどう考えてもおかしなことではないでしょうか。
例えば、交流が浅い友人と、何年も付き合っている友人との会話の内容は同じではないように、そのコミュニケーションの内容を変えるべきだと思います。別の視点から見ると、定期購入で忘れがちなことは、定期購入で継続している顧客に対しても、常に商品の品質面での特長を伝えて、使い続けていくことに価値を見出してもらうようにすることです。
なぜかというと、定期購入が重荷となっていくのは、商品が使いきれなくなって残ってしまったりすることから始まる場合が多々あります。さらには、そのうえで商品をグレードアップしたり、関連商品を推奨したりするアップセル、クロスセルが可能となります。そして、もっとも重要なことは定期購入の顧客であるからこそ、常に耳をそばだてて顧客の声を聞き続けることです。
定期であるから、離脱することは少ない、ということは事業者側の過信にすぎません。皆さんが顧客の立場になれば頷けることでしょう。
※出典:「定期購入型電子商取引に関するアンケート結果」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 2017.12.20)