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コラム|柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第4回

柿尾正之【かきお・まさゆき】

小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務を経て1986年4月、JADMA:公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。
おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年6月退任。
2016年12月 合同会社柿尾正之事務所 設立。現在、企業顧問、社外取締役の他、コンサルティング、講演、執筆等。

〔著書〕『通販~不況知らずの業界研究~』(共著:新潮社)等多数。
〔主な所属学会及び社会的活動等〕日本ダイレクトマーケティング学会理事
〔大学講師歴〕早稲田大学大学院商学研究科客員准教授、関西大学大学院商学研究科、上智大学経済学部、駒澤大学GMS学部、東京国際大学商学部、他多数。

柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第4回

2021年2月19日

今回はコロナ禍で注目されているライブコマースについて考えてみたいと思います。
ライブコマースはそれ以前から行われていたライブ配信を利用する商品のプロモーションを使って、中国で2015年頃に始まったものとされています。その翌年あたりから、利用するユーザーが増加して中国ではライブコマース企業に対する投資も活発化して、2017年にはライブ配信サービスのユーザーが約4億人にも上り、有力なプラットフォーム企業がユーザー獲得競争を繰り広げました。

なぜ中国でライブコマースが支持されたのでしょうか。
まず第一にはライブ配信中は配信者とユーザーが双方向的にコミュニケーションを自由に取ることができることです。一般的にECサイトとは異なり、その商品に興味を持った人はリアルタイムで質問することが可能で、商品についてより深い理解を得ることができるため、購入へ繋がりやすいという効果があります。
第二は、中国の場合はとくに大量なユーザー(数百万、数千万を超える観覧者がいる配信もある)がいることから、伝達する範囲が広いことです。この点、テレビショッピングが一方向的な配信で視聴者の温度差があるのに対して、ライブコマースはその商品に興味があるユーザーが視聴するため購入へのコンバージョンが容易になる、という利点もあります。そして第三には使用するデバイスはスマホが中心となっているため、場所を選ばないことが特長となっています。

さて、日本でのライブコマースの市場ですが、世界的にみてもまだまだユーザー数が少ないのが現状です。それにはいくつかの理由がありますが、まずライブコマースに取組む企業自体が少なかったことが第一です。「卵が先か鶏が先か」という選択で言えば、鶏(取組む企業)が先である必要があるのではないか、と思います。それはインフルエンサー個人としての販売促進は成功しているケースもあるので、ニーズが無いわけではない、というのが理由です。さらには若い世代ほど認知度は高い傾向にあり、今後、SNS等でライブコマースの情報が拡散されれば、認知度が上がって市場規模も拡大していくものと考えられます。
もうひとつ、日本の特長は店舗、あるいは通販サイトとの連動を図っていることです。例えば小田急百貨店では視聴者に向けて、ライブ動画を発信し、接客を希望する視聴者とコミュニケーションができたり、紹介している商品のURLをクリックすると「通販サイト」に遷移してショッピングができる、という仕組みになっています。

いずれにせよ、コロナ禍の状況で、ECの利用の仕方も大きく変化していく中で、ライブコマースへの期待度は大きいものがあるのではないでしようか。