BIPROGY Foresight in sight BIPROGY Foresight in sight

コラム|柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第2回

柿尾正之【かきお・まさゆき】

小売業・外食産業等のリサーチ・コンサルティング業務を経て1986年4月、JADMA:公益社団法人日本通信販売協会(所管:経済産業省)に入局。
おもに調査、研修業務を担当。主任研究員、主幹研究員を経て、理事・主幹研究員。2016年6月退任。
2016年12月 合同会社柿尾正之事務所 設立。現在、企業顧問、社外取締役の他、コンサルティング、講演、執筆等。

〔著書〕『通販~不況知らずの業界研究~』(共著:新潮社)等多数。
〔主な所属学会及び社会的活動等〕日本ダイレクトマーケティング学会理事
〔大学講師歴〕早稲田大学大学院商学研究科客員准教授、関西大学大学院商学研究科、上智大学経済学部、駒澤大学GMS学部、東京国際大学商学部、他多数。

柿尾 正之氏のダイレクトマーケティングview 第2回

2020年12月21日

この原稿を書いている時点で、今年もあと2週間しかありません。
今年はコロナ禍に明け暮れた1年であり、いまだに出口は見えてはいませんが、この特別な年を振り返っておこうと思います。コロナ禍の初期、4月の朝日新聞による一都三県での「コロナ禍におけるメディア市況」調査によると、直近1カ月で増えた行動として「テレビを見る」「インターネットの利用」「家族との会話」「新聞を読む」が上位となっていました。インターネットによる利用が通販の中心というイメージが強いですが、じつはテレビ、新聞といった既存メディアでの接触が増加している点が興味深いです。
つぎに、同調査で「行動や生活意識の変化」の結果をみてみると消費系の項目での上位には「日ごろから生活必需品を備蓄」「キャッシュレス決済をしている」「ネット通販を利用」「健康に良いものを購入」が並んでいます。

この2つの調査項目から言えることは第1に、確かにネット通販の勢いはありますが、既存のテレビ、新聞等のメディアは在宅率上昇による接触率の増加により、通販広告との接触も増加している点です。
第2に商品系としてはスポーツクラブへの参加や電車通勤の減少等による健康に対する意識の高まりを背景とした健康食品に対する購買意欲の上昇。そして店舗購入における密を避ける意識と、外食から内食への移行における、食材における通販利用率の増加です。この時期は、手探りながら各自がリモート会議を学習し、対応しようとしていたことが懐かしくもあります。その後、店舗販売は百貨店を筆頭に厳しい結果となる中、通販市場は全般的には好調を維持する結果となっています。
しかし、今後、通販市場に対する影響も含めて、消費動向においていくつかの気になる動向があります。
ひとつは世帯平均所得の減少です。コロナ以前の94年から2018年の間に17%も減少しており、周知のごとくコロナ禍における企業決算の厳しい状況から今後は所得の減少に拍車がかかることが予想されます。つぎに消費者の買い物の仕方の変化で「自分の好きなものは高価でも購入する」の志向が上昇しており、コロナ禍では格差、メリハリ消費として顕在化しています。

コロナはこれまでにない脅威ではあることは事実ですが、通販の市場拡大や働き方の変化等々、それまで躊躇していた変化への対応を加速させたメリットがあったのではないでしょうか。
「コロナは悪いことだけではない」と、前向きに考えることも一考かと思います。