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企業に求められるBCPの問題点と解決策を考える
〜BCPの問題点を事前に把握し解決策をたてる重要性について〜

BCP・災害対策コラムは、企業のBCP・災害対策に役立つ基礎知識をご紹介します。

日本では震災・火災・水害などさまざまな災害が起こる可能性があり、企業としてこれらを無視することはできません。企業に求められる災害対策は、BCPの考え方を基に「事業を継続して行えること+事業が停止しても早急に復旧すること」を目指して計画を立てて実行する必要があります。

  • 企業に属する人材の命を最優先して守れる仕組み
  • 止まることなく企業運営を行えること

これらを基本として実現するにはどうすれば良いのか、問題点はどこにあり、解決できるものはどういう方法であれば最も効率的で確実かを含め検討することで、完成度の高いBCPを構築できます。
この時、全ての業種・企業が全く同じマニュアルでは適切に対応することができません。自社に合ったBCP計画を構築していく必要があります。

目次

  1. BCP対策は企業規模・形態で大きく変わってくる
  2. 基軸となるBCPの基本と照らし合わせて問題点を出す
  3. 一般的な企業のBCP実行時の懸念材料とは
  4. 具体的に企業BCP問題点の解決策を出していく
    • 通信障害解決策(ネット回線・電話回線)
    • 電源障害解決策(100V家庭用電源・USB電源)
    • 人員が必要な対策(主要業務・コミュニケーション人員)
    • 感染症防止のために必要な対策

1. BCP対策は企業規模・形態で大きく変わってくる

BCP対策で最も影響を受けると考えられるのが企業規模と体制です。少人数で組織される(1名~10名程度)企業の場合、社長が現場で全員に直接指示が出せるので混乱は最小限です。しかし規模が大きくなると全体の情報共有が難しくなるため、災害発生時のネットワークが機能しないと人員の安否をはじめ状況判断にまで影響しかねません。それら以外にも業種・形態によって企業ごとに違いがあるので、自社にある問題点を洗い出して解決しておくことが大事です。

企業ごとに検討が必要な事項例

  • 部署が多く大規模な企業でどのように統率をとるか。
    避難経路が限られる店舗等がある場合にどうするか。
    従業員が就業中、社外に出ている形態(建設・営業等)の場合どうするか。
  • 社屋と工場が分離している形態の場合どうするか。
  • 高齢者の多い業態の場合どうするか。
  • スペースに対し人員が過密な形態(テレアポ等)の場合どうするか。

例をいくつか挙げるだけでも、企業によって社内の構造・業務形態・人員の分散などが異なっていることがわかります。そのため、政府が提示する基本的なBCP対策はベースになってくるものの、自社に合わせたBCP対策を構築していくことが必要です。

2. 基軸となるBCPの基本と照らし合わせて問題点を出す

BCPを自社用に構築するために基本となる指針のうち、最も重要視するべきであると規定されるのが「重要な業務の維持」「人員の安全の確保」なので、以下を基本ポイントとして検討することが重要です。

BCP基本部分のポイント

  1. 自社の業務の中で最も重要な部分を洗い出す
  2. 自社根幹となる重要な業務を止めない策を考える
  3. 災害で重要な業務が継続できなくなる原因を予測
  4. 自社従業員全員の安全と安否確認が取れるか確認する
  5. 重要業務の保護と人員保護に問題があれば解決する

軸となる部分を解決して付加する部分を解決する

軸となる部分=「業務を正常に遂行出来る」ことを考えることから着手すると全体計画が立てやすくなります。業務を平常時と変わらず遂行するということは従業員が正常に稼働しているということに繋がります。また、業務を正常に遂行するために災害時にこれを阻害する可能性がどこにあるか?について予測していくと、問題点が浮き彫りになるはずです。

3. 一般的な企業のBCP実行時の懸念材料とは

災害発生後に起こる可能性がある過去実例は以下です。

  • 固定電話の混雑
  • 従業員と連絡が付かない
  • 社屋の倒壊・オフィス/工場内の損失
  • 従業員の負傷・体調不良
  • 避難方法・避難場所対策の不備
  • 業務の停止・再開目途が立たない
  • 電源が使えない(停電・電源設備破損等)
  • ネット回線の混雑・アクセス不可

これらの実例は、災害が起こった瞬間から起こりえることと、災害発生から時間が経過して起こることがあり、初動行動と時間経過した後の行動を踏まえて計画しておくと良いといわれています。

災害発生直後に起こること

  1. 地震等の場合、建物の揺れや倒壊による被害の可能性
  2. 停電によって電源供給が絶たれる可能性
  3. ネット回線の遮断・混雑による障害の可能性
  4. 緊急停止によるエレベーターの閉じ込めの可能性
  5. 周囲の物が飛んできて負傷する可能性

災害発生から時間経過で起こること

  1. 従業員の安否確認が取れない可能性
  2. 企業トップの意思が全体に伝達できない可能性
  3. ライフラインの障害・復旧までに時間がかかる可能性
  4. 業務の正常化までに時間のかかる可能性

これらのことが過去災害でも発生していることから、災害直後に起こりやすいことと時間経過で追加で起こりやすいことを総合的に理解して、優先順位も踏まえて計画をしていきます。

4. 具体的に企業BCP問題点の解決策を出していく

BCPが通常の防災対策と異なる点は、「事業の継続」を目的としている点です。そのため、事業を継続するために機能が失われると事業そのものに甚大な影響が出る部分=「中核事業」がどこなのか、中核事業が停止しないようにするにはどういった対策が必要なのかを考えて計画していく必要があります。特に問題視され重要な課題例を以下に示します。各課題について企業に合わせて調整しながら解決策を模索する必要があります。

通信障害解決策(ネット回線・電話回線)

  • 複数のネット回線を用意しておく
  • Wi-Fi/光回線/モバイル等常に回線のチェック
  • 固定電話回線/IP電話回線等複数用意しておく
  • 衛星電話等災害に影響されにくい回線を用意する
  • 携帯キャリアを複数社に分けて契約しておく

ー 通信設備は複数の通信手段の模索も効果的
企業がクラウドを使うことが当たり前になり、連絡手段としても情報収集としてもネット回線は生命線です。ネット回線に障害が起こると通常業務に支障が出ます。
例えば固定電話は、一般的には普及が止まり家庭用は衰退していますが、企業では現在もメインです。この固定電話が災害で通信不能になることは知られており、繋がっているとしても混雑で話し中が続くこともあります。固定電話障害の対策として、光電話(オフィス専用等)があり、固定電話に障害があった場合には顧客からの連絡を他支店や事前開設した他の回線に転送するサービスがあります。

その他、通話連絡ツールとして固定電話と同じ趣向のものとしてMCA無線という選択もあります。電話回線とは異なる方式で、無線を使ったものです。
その他に衛星を使った衛星電話もあるので、音声通話のサブ回線は選択肢が増えてきています。特に情報を確実にやり取りする必要性に迫られる代表取締役と重要ポストにある人員は、災害時に音声通話でもやり取りが確保できれば重要な指示を伝えられることに繋がるので検討価値はあります。

ネット回線の遮断・混雑は回線キャリアや回線種別で誤差がある事例があるので、複数用意しておくと効果的です。また全て試してみて使える回線を使用したり、復旧した回線を使ったりする方法が有効です。1つのネット回線のみで満足することは避けたほうが無難です。

ネット回線はキャリア全ての回線を併用して使用。一社のみの回線だと災害時に契約会社がダウンした場合、比較ができないことになるので注意。他に光回線も複数契約することが好ましいです。音声通話は、現在ではSNSでも可能なので電話・スマホ・その他通信方式を用意しながら、SNSでも連絡網を構築していると信頼度が増します。緊急時はより多くの選択肢があるほうが有利です。

電源障害解決策(100V家庭用電源・USB電源)

  • USB機器用の充電設備を整えておく
  • 100V電源の蓄電池設備を整えておく
  • 自家発電・発電機の装備
  • 無停電電源装置の常時充電設置を行う

ー 電源は自社内で最低限のものは確保できる
企業内で電源は最も重要な要素の一つです。デスクトップのパソコン、サーバ、各機器は電源が落ちると稼働しません。BCP対策の中でも電源が使える状態で解決することも多いため、重要なものと捉えて対策するほうが賢明です。

  1. パソコン全台に停電時に稼働する蓄電システムを接続
  2. 大型蓄電池をオフィスに設置し数時間は稼働する電源確保
  3. 社内に発電システムを設置する
  4. スマホ・タブレット充電のためのUSB装備蓄電池の用意

パソコン単位で接続できる停電用蓄電池は購入価格が低下したため、以前よりコストを低く抑えられる状況になっています。災害で瞬時に停電となった場合、それまで作業していたデータの損失・パソコンの故障が誘発されやすいので、停電となった瞬間に蓄電池に切り替わることで数十分から数時間パソコンを使うことができます。この時間を確保できることでパソコンのシャットダウンを行ったりバックアップや社外への連絡を済ませられる可能性がでてきます。

自家発電設備は、規模によっては莫大なコストがかかるため、自社の状況によって検討をすべきです。小規模な蓄電池の導入は比較的安いコストで実現できるため、停電用蓄電池とオフィスに設置する蓄電池を検討すると良いでしょう。災害によって移動できないケースも考慮して、従業員のスマホを停電時でも充電できるように大型のUSB端子装備蓄電池を用意しておくのも得策です。比較的USBは消費電力が小さいので、大きな容量の蓄電池を複数用意しておけば、長時間充電に対応できる傾向にあります。

人員が必要な対策(主要業務・コミュニケーション人員)

  • 混乱する現場を統率する人員の確保
  • 主要業務を止めずに継続するのための人員の確保
  • 従業員の安否確認をするリーダー・人員
  • 顧客対応をするための人員の確保

ー 災害発生時の初期対応は事前計画が大切
BCPの大事な目的である事業継続対策の中で、電源や通信に並び重要視しなければならないのが人員です。災害が起こった瞬間から迅速に対応できる現場のリーダーの設置・窓口対策係など的確に人間が対応しなければなりません。

  1. 混乱が起きた状況で担当グループをまとめるリーダーの設置
  2. 顧客からの対応をする窓口の設置
  3. 従業員の安否を確認する人員

このように、グループ単位でまとめてリーダーが統括する仕組み、上層部へ情報を上げていく仕組みを、企業ごとに最適に構築しておくことが有効です。

感染症防止のために必要な対策

  • 出入口・社内に消毒、体温計等の防止機器設置
  • 従業員の感染状況などの確認
  • 社内の感染防止(アクリルパネルなど)対策

ー 新型コロナウイルスで見えた対策と実行の重要さ
感染症は、インフルエンザ等の比較的早期に終息するものから新型コロナウイルスのように長期化するものがあると認識され、一人が感染するとあっという間に蔓延してしまうことがわかっています。
感染症が世界中に蔓延すると経済が停滞するだけでなく人命にも影響する危機感も感じるようになっています。特に新型の感染症の場合、解明されていないことが多いので常に防止のために新しい情報がでてきます。そのため過去の常識に囚われること無く、常に新しい情報に関心をもつ必要があります。

甚大な被害を出している新型コロナウイルスは、感染症としては歴代でも想定外の規模です。
ワクチン接種によってある程度の症状悪化防止にはなりますが、事前対策をして感染しないことが最も重要なので、企業として最適な対策が必要になります。
新型感染症の場合、過去のノウハウが通用しないこともあるので、常に新しく解明された方法や専門家の推奨する感染予防対策を行うことが必要です。

*記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。