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事例紹介

意思決定のスピードアップを目指す次のステップの訓練へー。

電源開発株式会社 様

2020年07月10日

事象のとりまとめから、情報を生かし、先手を打つ災害対応が可能に

電源開発株式会社 総務部 総務室(危機管理・防災)清水達夫氏
電源開発株式会社 総務部 総務室(危機管理・防災)清水達夫氏

電源開発株式会社(以下、J-POWER)様では、2016年に日本ユニシスのクロノロジー型危機管理情報共有システム「災害ネット」(以下、災害ネット)を導入した。
主に年1回実施する防災訓練で利用しており、想定や内容は年によって様々だが、100人規模・数時間という長時間にわたる訓練を実施し、来たる大規模災害に備えている。
今回、災害ネットを採用した背景と、導入後の活用方法、および今後の展望について、導入担当者にインタビューを実施した。

設立:1952年(昭和27年)9月16日
資本金(百万円):180,502(2020年3月31日現在)
従業員数(単体):2,449名(2020年3月31日現在)
本社所在地:東京都中央区銀座六丁目15番1号
事業内容:電気事業

本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。なお、事例の掲載内容はお客様にご了解いただいておりますが、システムの機密事項に言及するような内容については、当社では、ご質問をお受けできませんのでご了解ください。

背景:多くの人員を費やしたアナログな情報共有に課題を感じていた

J-POWER様は、北は北海道、南は沖縄まで、日本全国90か所以上に発電所を保有し、運営している会社である。発電方法は水力、石炭火力、地熱など多岐にわたり、発電した電力を各地域の電力会社に販売している。

各地域の電力インフラを担うJ-POWER様にとって、災害発生時に各地域の情報収集を円滑に行うことは、喫緊の課題であった。災害ネット導入前の災害発生時の情報共有について、総務部 総務室(危機管理・防災)清水達夫氏は以下のように語る。
「災害が発生すると、まず被害があった現地の担当者が対策本部に対し、FAX、メール、情報連絡票の送付、または電話連絡にて、情報を伝達していました。情報を受けた本部側の担当者は、これらの情報を受け付け、本部全体に共有すべき情報かどうかを取捨選択し、「共有すべき」と判断された情報は、本部内に設置しているホワイトボードに書き出して本部全体に伝達していました。各対策本部員は都度ホワイトボードまで情報を見に行き、対応方針の検討、指示出しを行う必要がありました。」

この方法は「人員面と情報面の2つの側面において、デメリットがあった」と清水氏は続けた。

人員面でのデメリットは、上述した手順ごとにそれぞれ複数の人手が必要となり、効率が悪い点だ。対応する本部側の担当者は、受け付けた情報が重要な情報であるかどうかにかかわらず、内容を把握し、共有が必要かどうか判断するのに、多くの時間を費やしていた。また、より詳細に状況を知るために現地の担当者に対して追加の情報提供を要請する場合には、上記の手順とは逆方向の手順で要請をする必要があり、それにも多くの人員を割いていた。

システム導入“前”の訓練の様子(導入前年度訓練)
システム導入“前”の訓練の様子(導入前年度訓練): 対策本部では大量のホワイトボードに情報を転記することによって、情報共有を実施していた

情報面でのデメリットは、ホワイトボードというアナログなツールでは、情報の集約・蓄積において限界があるという点だ。ホワイトボードへの記入は担当者ごとに自由な様式で情報を書き込んでいたため、各班に情報が散逸し、集約することが困難だった。また、ホワイトボードは書き込める量に限界があり、第二報・第三報を関連付けて書き込めなかったり、新たな情報を書き込みたい場合には古い情報を削除したりしなければならず、このため情報の時系列が入り乱れ、真偽やプライオリティの判断に本部が混乱することもあった。さらに、災害対応が終わってから振り返りをしようとしても、十分な情報が残っていないので、それらを使った分析や反省が困難であった。

「『訓練は何とか乗り切ったが、本番では大丈夫か』という状況が続いていました。」と、清水氏は当時の状況を振り返る。
解決策を模索していたころ、日本ユニシスより災害ネットを紹介された。「災害ネットは、現地の担当者が情報を時系列で入力するだけですぐに本部側でも確認でき、情報の一元化・共有にかかる人員・時間を大きく削減できる点、一定の書式で情報を書き込み、次々に続報を追記できる点、さらに、文字情報に加えて写真等も共有できる点で、J-POWERの情報共有において大きなメリットがあると考え、導入を決めました。」

活用方法:従来の訓練を脱し、時間軸が将来に向かった訓練へステップアップ

導入後、2016年12月に災害ネットを利用した初めての防災訓練を実施した。150名体制、約4時間、さらに対策本部長や副本部長にあたる役員も参加する大規模な全社訓練だった。
この防災訓練では、全社の組織を3階層(本店本部-支店本部/所本部-内部組織)に分け、下位組織から上位組織への報告を主体に利用した。これまで使っていたホワイトボードを完全に撤去し、代わりに災害ネットを使って情報共有する運用とした。シンプルな操作性のおかげで担当者が入力に迷うこともなく、結果として4時間の訓練で184件の情報が集約された。
これは、約1分18秒に1件のペースで情報の一元化が行われたということになる。従来と比べ、そのスピードの差は明らかであった。

2016年の防災訓練の様子
2016年の防災訓練の様子:テレビ会議の向こう側は発電所の担当者たち。 役員から本部員に至るまで、対策本部にいるメンバーが全員パソコン画面で現地の状況を確認できた

清水氏はその効果を振り返る。「対策本部の担当者は、現地より共有される情報をパソコンでリアルタイムに閲覧・把握できました。課題だった情報共有にかかる時間を大きく削減でき、対策本部の体制を見直すきっかけとなりました。また、現地からの情報を本部長や副本部長も閲覧できるようにしていたので、報告会議が始まる頃にはすでに状況を把握し、建設的な会議を行うことができました。災害ネットは良いシステムだと改めて実感できました。」

また訓練後の振り返りでは、参加者からも「情報共有が迅速にでき、情報を生かした先手を打つことができるようになった」「今後は意思決定のスピード向上を目的とした訓練に重きを置きたい」など、高い評価を得られたのも大きかった。
J-POWER様のBCPの重点が「過去の事象を取りまとめる」ことから、「未来のことを考える」ことへステップアップしたことがうかがえるだろう。

今後の展望:グループ会社も含めシステムで情報共有し、グループ全体のBCP強化へ

訓練を経てJ-POWER様では、グループ会社も含めシステムを利用することを決めた。清水氏は「当社のBCPはJ-POWER 1社のみで完結することはなく、グループからの情報も集約し対応することで、初めて効力を発揮します。日本ユニシスのグループ会社ライセンスを適用することにより、グループ会社との共同利用ができるので、それを活用し、J-POWERとしてのBCPを強固なものにしていきたいと考えています。」と今後の展望を語った。

※本事例に記載された情報は取材時点のものであり、社名、内容など閲覧される時点では変更されている可能性がありますことをご了承ください。本事例は情報提供のみを目的としており、BIPROGYは、明示的または暗示的を問わず、本事例にいかなる保証も与えるものではありません。

日本ユニシス株式会社は、2022年4月1日よりBIPROGY株式会社に商号が変更となりました。

*記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。