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事例紹介

シンプルな時系列管理で効率化。
クロノロジー型危機管理情報共有システム『災害ネット』によるインシデント管理

西武鉄道株式会社 様

2019年06月20日

安全・安定、そして快適な鉄道輸送のために欠かすことのできないインシデント管理。日々発生するアクシデントから災害・事故などの重大な事象まで、より迅速かつ的確に対応するために、西武鉄道様は抜本的な情報管理改革に取り組んだ。

鉄道本部 運輸部 運転課長 高橋 正信氏

西武鉄道株式会社
鉄道本部
運輸部
運転課長

高橋 正信氏

鉄道本部 運輸部 運転課 主任 小川 知哉氏

西武鉄道株式会社
鉄道本部
運輸部
運転課
主任

小川 知哉氏

SUMMARY

  • 大量のインシデント情報をクロノロジー(時系列)で整理
    さまざまなインシデント情報を時系列で整理することで情報の伝達内容に対する誤解や意思決定の遅延を防止
  • 無駄を省いたシンプル機能と分かりやすいインターフェースで現場に浸透
    導入時の工数や運用時の現場の負担が軽く、日々のインシデントから重要インシデントまで1つのシステムで管理
  • テキストと写真によってスピーディーに客観的な情報伝達が可能
    テキストに加えて現場の画像を添付して伝達・共有することで、瞬時に情報が伝わり、より的確な状況判断が可能に

USER PROFILE

西武鉄道株式会社ロゴ

設立:1912(明治45)年5月7日
資本金:21,665,232,000円
本社所在地:埼玉県所沢市くすのき台一丁目11番地の1
社員数:3,611人(2017年度末)
事業内容:鉄道事業、沿線観光事業、不動産事業

本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。なお、事例の掲載内容はお客様にご了解いただいておりますが、システムの機密事項に言及するような内容については、当社では、ご質問をお受けできませんのでご了解ください。

クロノロジー型危機管理情報共有システム「災害ネット」

災害時などに行われている「クロノロジー(時系列)で記録する」という行為をそのままシステム化することで、今何が起きているのかをリアルタイムで把握できる「災害ネット」。PCやスマートフォンから、時系列に沿って入力した情報をサーバーで一元化し、リアルタイムで共有することで、即座に状況が把握できるようになる。これまでは、電話やメールなどさまざまな異なった方法で報告されてくる大量の情報の整理が困難で、 伝達内容に誤解が生じ たり、意思決定が遅れたりする事態が発生していた。災害ネットを活用することで、大量かつ最新の情報を、時系列でまとめた形で、自宅や外出先などからも確認できるため、情報の見落としが発生せず、迅速かつ適切な意思決定を下すことができる。

「でかける人を、ほほえむ人へ。」をスローガンに、安全・快適な輸送と地域の活性化に貢献

前身となる武蔵野鉄道の設立から100年以上。西武鉄道株式会社様(以下、西武鉄道様)は、首都圏の基幹輸送の一翼を担い、現在1日180万人の、通勤・通学を始めとする人々の重要な移動手段を提供することで成長してきました。また、西武グループの中核企業として、鉄道事業のみならず、西武園ゆうえんちやメットライフドーム(西武ドーム)運営などの沿線の観光事業、また不動産事業などを通じて地域の魅力ある町づくりや活性化にも貢献している。

新型特急車両「Laview」イメージ

グループスローガン「でかける人を、ほほえむ人へ。」、およびコーポレートメッセージ「あれも、これも、かなう。西武鉄道」を制定。それは、幅広い魅力を持つ西武線沿線で、お客さまが「かなえたい」と思う夢や希望を「かなえていこう」という同社の思いを表している。安全性への取り組みはもちろん、早くから有料特急電車や有料座席指定列車など、快適性や利便性向上にも積極的に取り組み、先日は「都市や自然の中でやわらかく風景に溶け込む」新型特急車両「Laview」(ラビュー)を投入した。

「特急座席だけではなく、一般指定席を設けることによって、より多くの方にお座りいただける選択肢を提供できるような取り組みも積極的に行っています。実際、妊娠中の方が西武新宿ー拝島間で運行する拝島ライナーを利用いただくことで、安心・安全な移動が実現できている、というようなお声も頂戴しています」と、鉄道本部運輸部運転課主任小川知哉氏はその取り組みを語る。

導入の背景と狙い インシデント発生時の迅速な情報共有が課題

西武鉄道様では、2018年2月に情報管理用デバイスとしてタブレットを導入し乗務員などに配布した。同時に、そのタブレットを使って情報を効率良く管理できる仕組みを検討し始めた。
「情報端末としてタブレットを導入し、例えばそれを使ってただ撮影した写真を送って共有するだけでは少しもったいない。そこで何か情報を一元管理できるようなシステムがないか探し始めました」と小川氏は当時の経緯を振り返る。

また、元々鉄道運行上日々発生するインシデントの管理方法にも課題があった。よく見かけられるように西武鉄道様でも、発生したインシデントをホワイトボードに順次記載して管理するという、旧来の方法を用いていた。
「特に規模の大きいインシデントや、長期に影響を及ぼすインシデントの場合は、部ごとや系統ごとにホワイトボードが立ち、情報を消してはまた書き足すというような状態が続きます」と説明するのは、運転司令トップの経験も持つ鉄道本部運輸部運転課長高橋正信氏だ。

ホワイトボードに情報を書き出す手法は、手軽に情報の管理ができるというメリットがある。反面、時系列で情報を整理するのが難しかったり、後々必ずしも正しい情報が残る訳ではないなどの課題を持つ。加えて、
「情報を広く共有する手段がなかったのが大きな課題でした。徐々に沿線も拡大し、旧来の方法では鉄道を運行する運輸部内だけでも、情報を展開したり共有するのが困難でした。さらに、本社部門やメンテナンス部門など、運輸部以外の組織も実際のインシデント対応に関しては重要な役割を果たします。旧来のホワイトボードでは、どうしても各組織が自分たちだけで情報を共有するという結果になってしまいます」と小川氏は課題を認識していた。

また、旧来のホワイトボードによる管理方法では、大量の情報整理が困難であるために伝達内容に誤解が生じたり、情報共有がうまく進まないために情報の伝達に多くの工数が割かれたり、さらに重要な意思決定が遅れたりするという課題も存在する。これらによって現場が混乱することが何よりも危険だ。

選定理由 組織構造のフィット感、シンプルで使いやすいインターフェース

インシデント管理システムや、同様の目的で利用される危機管理システムなどは、ほかにも存在する。導入検討時にはそれらの中から、鉄道会社が独自開発したものなどを中心に比較・検討を実施した。
「広く使われているメッセージアプリのようなインターフェースを持つものもあれば、しっかり作り込まれてはいるものの重厚長大で仕組みづくりが大変そうなものまで、実際に何種類かを対象にメリット・デメリットを洗い出して比較しました。最も重視したのは『簡単に使える』ということ。その点『災害ネット』は、無駄な機能がなく操作が非常にシンプル。マニュアルなしでも大抵の人が問題なく使えるレベルです」と、小川氏は災害ネットを選んだ理由を述べる。

また、課題となっていた情報伝達や情報共有の問題をうまく解消するように、マスに向かって情報が広がる仕組みが存在したのも、災害ネットを選んだ理由だ。西武鉄道様をはじめとする鉄道事業は、部門と階層が比較的しっかりとした組織ヒエラルキーによって安定的に運営するように構造化されているのが一般的だ。災害ネットは、その西武鉄道様の組織構造にフィットしており、ほぼそのままの状態で運用にまで落とし込むことがでる。ノンカスタマイズで情報のインプットから社員や組織間の伝達・共有まで実現できることも同システムを採択した大きな理由の1つだ。

使い勝手の良さや、情報管理構造のフィット感への高評価によって今回西武鉄道様にご採択いただいたが、災害ネットはその他にも、簡便な操作で被害状況などを集計できる機能も搭載している。シンプルさを追求したこのシステムらしい必要十分な機能だ。

導入効果 状況判断や意思決定の精度とスピードが向上し、現場の負担も軽減

本格導入から約1年。現在は、日常的に発生するさまざまなインシデントの管理から、異常気象や災害、事故発生時などの重要かつ大規模なインシデントの集中的管理まで、すべて災害ネットを使って管理している。電車は365日休まず運行しており、動いている間はさまざまな出来事が発生する。電車の乗務中や駅などの巡回中に何かの事象を発見した場合は、安全確認・確保すると共に直ちに乗務員が所持しているタブレットで写真撮影し、運転司令と共有する。例えば架線やパンタグラフにビニール袋が引っ掛かったりした場合、運転士や車掌が現地で撮影した写真を添付して災害ネットで状況を報告する。

「乗務員から無線で、『ものすごく大きいビニール袋引っ掛かっています! すごく大きいビニール袋で、なかなか取れそうにありません』と連絡がきます。しかしどの程度『大きい』のか、言葉だけではなかなか客観的には把握しづらいものです。特に報告者が興奮している場合などは、なおさら言葉だけでは伝わりにくくなります。写真を添付することで、対象の状態や大きさなどが把握でき、復旧にはどのような手配が必要なのかが即座に判断することができます」と、高橋氏は災害ネット導入の効果を語ります。

「すごく大きいビニールや、すごく長いビニール」とは言っても、農業用のビニールハウス用途の何十メートルにもなるようなものから、梱包用のロープのようなものまで実際にはさまざまなものが想定される。なかなか言葉だけでは客観的に表現するのは難しく、連絡にも時間もかかる。それが写真を添付することで客観的な情報として精度が増す。また、すべての情報は一旦司令室に集まり、そこで必要な判断や指示が行われる。同時に関係者は情報をいつでも確認することができる。スマートフォンからもアクセスできるので、非番や休日でも場所の制約を受けずに緊急情報がリアルタイムで見ることができるようになる。災害ネットの強みは、このような情報の収集・集約と共有を手軽に実現させることで、場所や時間の制約を取り払ってしまうことだ。

西武鉄道様では、上記のような架線・線路の異物以外にも、倒木やエレベーターなどの駅設備の故障、さらには車両へのいたずら書きまで、あらゆるインシデントを災害ネットで管理し、安全運行やお客さまサービス向上を図っている。それでは、より重要で深刻なインシデントの場合はどのように管理されているのだろうか。

小川氏は、「災害ネットのトライアル導入をしている時期のことですが、首都圏全域で大雪が発生した際、私も司令室に詰めて情報の集約に当たりました。そこで、各地から集まってくる情報をすべて集約し、最前線で発生している出来事を文字化して並べてやると、今どういう状況で、物事がどういうレベルなのか、全体像が把握でき、なおかつ温度感や現場の雰囲気も肌で感じることができました。例えば、具体的にオーバーランが何回発生したとか、降雪の状況を「今、こういう状態です」と乗務員が運転司令へ報告をするので、その情報を災害ネットに入力し続けました。現場も混乱しているので、このような場合は仮に写真撮影が難しくても、文字で情報を集約するだけで状況を把握することができます。そして『オーバーランがこれだけ続くようなら通常運行では対応できない』などの判断や意思決定が、以前よりも早く下せるようになりました」と、重要インシデント発生時の状況を語ります。

常に同じ条件で同じインシデントが発生するとは限らないため、災害ネット導入後の定量的な改善効果を算出するのは難しい。しかし、「運転司令に情報が入ってくるスピードと情報量は間違いなく上がった」と小川氏は断言する。

また、「重要インシデントほど、連絡・報告先が多くなり、それだけでも大変です。さらにさまざまな部門から現場へ状況確認の連絡が入ります。例えばまず初めに運転課長に連絡して、それから課長補佐にも連絡。さらに他の関係者にも連絡した後、広報に一報を入れる、というようなことが当たり前でした。しかし重要インシデントの場合は、障害復旧やお客さまの対応・安全確保など、早急に対処しなければならないことも山積みのはずです。そのような緊迫した状況で、さまざまな箇所へ状況報告しなければならないのは大きな負担となります。災害ネット導入によって、そこに1回入力するだけの報告で関係者への共有が済むようになり、情報伝達に関わるプロセスが確実に効率化しています」と、高橋氏は災害ネット導入の効果を説明します。

情報伝達・共有の手間が省けた分、本来のインシデント対応に集中でき、よりスムーズな正常化につながる。また、自らが報告した情報がシステムを通じて可視化されることで、社員一人ひとりが情報共有やインシデント対応に積極的に関与していくことへの動機づけになり、社員のモチベーションが向上するという副次的効果も現れている。

今後の展望 現場で活用できる情報の展開と人材情報や車両運用のIT化を目指す

現在、乗務員や駅係員、営業系まで含めた運輸部のほぼ全員となる約2,500名が、何かのアクシデントが発生すれば災害ネットを使って直ちに写真などをアップして、伝達・共有できる体制が整っている。今後は、電気部や工務部などを含む保守系の部門にも広げていく計画で、具体的な準備をすでに始めている。そして、これまでは司令や本社側が情報を吸い上げて集約する仕組みをつくることに注力してきたが、今後は逆に現場に必要な情報を共有・展開することにも積極的に取り組んでいきたいと考えている。

「昨年の秋、大型台風が首都圏を直撃した際には、安全性を優先して計画運休を初めて実施しました。20時から徐々に運行本数を減らし、22時には運転終了する臨時ダイヤを組みましたが、実際に乗っている乗務員は、どこからどの電車がなくなるのかが分からない。お客さまに各電車の行き先や乗り継ぎ可否を尋ねられても、現場では答えることができませんので、逐一司令に問い合わせする必要がありました。そこで、災害ネットを使って、臨時ダイヤを乗務員や駅係員などの関係者に配布。自分が乗車する電車がどこまで行くのか、その先の乗り換えがあるのかなどが一目瞭然で分かるようになりました」と、高橋氏は当時の模様を語る。

現場から逐一司令に確認する必要がなくなり、司令室側も現場からの状況照会がなくなることで司令員本来の業務に集中できるようになる。また今後は、事故発生時などのより突発的な事象が発生した際に、必要な情報を展開することでさらに効果は高まるだろう。

その他のIT化関連の取り組みでは、従来紙で管理していた乗務員の運転技術や特性の記録をデータ化し、共有する仕組みの導入をした。紙での管理では、実際面談した者にしかその乗務員の詳しい運転技術や本人の特性などが分からなかったが、データ化によって一人ひとりの状態を他の管理者でも確認・共有できるようになる。人材育成や管理、そして人材の有効活用の視点からのメリットが大きい。

さらに、「技術的にはまだ課題が多いのですが、今は人が『職人技』でこなしているところを、なんとか自動化できないかと考えています。これからもITを活用した課題解決に向け、相談窓口となってほしいと思っています。」と高橋氏は今後のプランを語った。

鉄道本部 運輸部 運転課 高橋氏と小川氏

※本事例に記載された情報は取材時点のものであり、社名、内容など閲覧される時点では変更されている可能性がありますことをご了承ください。本事例は情報提供のみを目的としており、BIPROGYは、明示的または暗示的を問わず、本事例にいかなる保証も与えるものではありません。

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