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BIPROGYグループの歴史 ENIAC誕生50周年記念 〜その歴史を追って〜 VOL.1

情報化時代の幕開け VOL.1

THE ENIAC

今日、ペンシルバニア大学旧ムーア・スクールの建物の一部屋に、最新のワークステーションが設置されている。

このシステムは同大学の工学・応用科学部のコンピューティングの専門家と教育技術サービス(Computing and Educational Technology Service)の専門スタッフが管理しているが、50年前、ここには、最初の大型汎用・電子式ディジタル・コンピュータ ENIAC(Electronic Numerical Integrator And Computer電子式数値積分機)が設置されていた。

ENIACには、20組の計算結果表示装置があり、その幅は約150フィート(45メートル)ほどもあった。
ENIACは毎秒5,000回の加算、14回の10桁乗算を行うことができた。これは今日の水準からすれば問題にならない速度ではあるが、同じ仕事を手計算でおこなうことを思えば一瞬の速さではある。

実際、ENIACが創られた当時、最高速の機械式リレー・コンピュータが、ハーバード大学、ベル研究所などで試験的に稼働していたにすぎない。当時最強といわれるこれらの機械でも、1秒あたりほんの15ないし50回の加算しかできなかった。ENIACはこれらの最速の機械と比べても完全に100倍は速い演算速度を持つものであった。ENIACは電子回路によって演算が行えることを公式に実証した史上初めてのシステムであり、今日のコンピュータはここからスタートしたのである。

現代コンピューティングの道を切り開いたもの、それがENIACである。

勿論、ENIACは最初のコンピュータではなかった。最初のコンピュータという名誉は、イギリスのチャールス・バベッジ(Charles Babbage)が作った機械に与えられるべきであろう。バベッジは1839年に最初で真の機械式ディジタル・コンピュータを設計し開発した。彼はそれを“差分機”(difference engine)と称したが、これは簡単に微分方程式問題を解くために開発されたものであった。その開発にあたっては、貴族にして数学者のバイロン卿(Lord Byron)の娘エイダ・カウンテス・ラブリス(Ada Countess Lovelace)が、手伝ったことはよく知られている。バベッジは、ラブリスと共に、機械式計算によって数式を解いたが、そのことがバベッジをして、次々に、もっと野心的な分析エンジンの設計へと駆り立てた。その機械は完成こそしなかったが、その構想にはコンピュータ動作に関する多くの原理が盛り込まれていた。そうした原理は、まるまる1世紀後になってはじめて、より新しい機械で再発見されることになったのである。

ENIACはまた最初の電子で計算する装置ではなかった。物理学者は、すでに1930年代初頭にはENIACのように、真空管を使った放射線カウンタを使っていた。そして、ムーア・スクールでの研究が始まる前に、いくつかの研究所では、1から10までをカウントできる環状計数器として知られる装置が造られていたのである。もっと重要なことは、1930年代後半から1940年代初頭の間に、計算問題に狙いを定めた電子回路を作る試みが、別々に少なくとも3カ所でなされていたという事実である。すなわち、ジョン・アタナソフ(John Atanasoff)、英国情報機関(British Intelligence)そしてIBMである。最も初期の試みは、1937年から1941年の間に、アイオワ州立大学の物理学教授であるアタナソフによってなされた。アタナソフは高速計算についての一般的問題に興味をいだき、線形方程式の中でもとくに複雑な問題を解くことに特化した機械の設計に取りかかった。このアタナソフ−ベリーコンピュータは、彼の大学院生であるクリフォード・ベリー(Clifford Berry)の大変な貢献によって、1941年にはほとんど完成の域に達していた。

一方、IBMもまた電子式乗算機を1941年に設計していた。IBMのそれはパンチカード・システムの製表機であったが、1930年代末にIBMはコロンビア大学教授のウォーレス・エッカート(*1) (Wallace Eckert)と共同で、この装置が各種の科学技術計算にどう使えるか研究した。1940年には、電子式乗算機はウォーレス・エッカートが行っていた、ある種の計算を非常に高速に行えることがわかってきた。IBMはウォーレス・エッカートとともにそうしたシステムの設計を行ったのである。

*1:ENIACの共同発明者であるプレスパー・エッカート(J.Presper Eckert)とは関係ありません。

*このコンテンツは、ENIAC誕生50周年を記念し、平成8年10〜12月に作成/公開したものです。