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需要拡大が見込まれる蓄電池や蓄電システムとは: Enabilityコラム

需要拡大が見込まれる蓄電池や蓄電システムの特徴や今後について

2019年11月12日

原子力発電にかわる代替エネルギーが注目を集めるなかで、日本国内でも蓄電池の需要が年々高まっています。蓄電池を導入するとなぜ、エネルギー効率が向上するのでしょうか。蓄電池の仕組みとメリット、今後と見通しについて具体的にお伝えしていきます。

蓄電システムとは

乾電池などの使いきりのものとは違い、電気を溜めて自由に放電できるようにしたものが蓄電池です。繰り返し使用できるという特性から、バッテリーなどの大型装置や長時間使用する携帯電話の内臓バッテリーに使われています。

蓄電の仕組みは、いたってシンプルです。まず、電気を放出する場合は電子をマイナス極からプラス極に移動させ、その際に発生した電気をエネルギーに変換することで必要な力をその都度取り出しています。

マイナス極の電子がすべて移動してしまうともうそれ以上エネルギーを出せなくなり、これがいわゆる「電池が切れた」という状態になります。電気を溜める場合は反対に電子をマイナス極に移動させ、その際のエネルギーを蓄えるのです。

移動する電子の量が減ると電位差が少なくなり、最終的にはエネルギーがまったく発生しなくなります。つまりこれが蓄電池の寿命です。蓄電池の寿命は種類によって違いますが、正しく使えば最長で10年以上は使用できるものもあります。

現在、日本国内では国を挙げて蓄電池導入を推し進める施策を拡充しており、個人宅はもちろんのこと、一般企業も一定の要件を満たせば政府からの補助金制度を利用できるシステムがととのえられています。

蓄電池とは

同じように見えても蓄電池には様々な種類があり、それぞれに使用される分野も異なります。もっともポピュラーなのはニッケル電池で、1990年以降、それまで一般的だったニカド電池に代わって使用され始めました。水素を発生させるため環境にも良いということで、現在でも車のバッテリーなどに用いられています。

ニッケル電池の弱点をカバーするかたちで開発されたのがリチウムイオン電池です。ニッケル電池よりもはるかに高容量でなおかつ電圧も3.7Vと高いことから、ニッケル電池の後継として長らく使用されてきました。活躍は現在でも続いており、自己放電が高いという特性からモバイル機器のバッテリーなどに使われています。

ニッケル電池やリチウムイオン電池よりもさらに高容量の蓄電池としては、NAS電池があります。性能面でも高い評価を得ており、大きい電力を必要とする工業用バッテリーはもちろんのこと、自家発電用蓄電池としても期待されています。

すべての科学技術と同様に、蓄電池も小型化への道を進んでいます。 1800年代後半に鉛電池が商品化されて以来、日本の大手企業は蓄電池の小型化に取り組み、さらなる性能の向上に取り組んできました。

その努力は時間をかけて達成され、当初は数人がかりでも持ち運ぶことができなかった重量級のバッテリーが次第に軽量になり、今では時計、温度計、携帯電話に組み込まれています。

小型化の理由はシンプルです。最新の科学技術は、最終的に大衆化され、一般化されるという法則があります。小型で軽量であることが一般家庭での広範な使用に有利であることは当然で、携帯電話も、登場から20年余りの年月をかけて劇的な小型化に成功したため、1人につき1台ずつと言われるまで普及しました。将来的には、蓄電池はさらに軽量化し、最終的にはナノレベルまで縮小すると予想されています。

蓄電池の種類 用途
系統用 長周期対策用、短周期対策用
需要家用 工場、ビル、集合住宅用、家庭用、緊急時及び災害対策用
民生用 パソコン用、携帯電話用など
車載用 HV用、PHV用、EV用

蓄電システム導入のメリット

次世代を担う代替エネルギーとして注目される蓄電池ですが、個人や企業が蓄電池による蓄電システムを導入するメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

非常時や緊急時のために

かねてより地震大国と言われていた日本では、2011年3月に発生した東日本大震災をきっかけに、非常時及び緊急時のためのエネルギー確保の導線が本格的に見直されています。

そのひとつとして蓄電システムの導入が挙げられており、たとえば、平常時から建物内に電気をストックしておき、大規模な災害時によってメインのライフラインが寸断された際に一時的な電源を供給するなどの活用方法が検討されています。

ただし、電気は物理的に長期間ストックできない、という特徴があり、この点をどのように克服するか、ということが今後の課題とされています。

実質の消費エネルギーが少なくなる

新時代のエネルギーサイクルを考えるにあたり、ぜひともおさえておきたいのがZEBという用語です。

ZEBとは「New Zero Energy Building」の略で、ひとつの建物内での電力収支をゼロに近づけるという取り組みを表しています。

電力の収支をゼロにするとはつまり、「電力を建物内でつくりだす」ということで、そのための手段として日本国内でも現在、再生可能エネルギーの重要性が盛んに強調されています。日本もエコロジーの時代に突入し、一般家庭でも大容量蓄電池を活用するケースが増えてきました。従来の太陽光発電では晴天の続く真夏は電力供給が安定しているものの、曇天や雨天の多い梅雨時期などは思うように電力が得られないという問題点がありました。

その点、太陽光パネルに蓄電池を組み合わせることにより取り込んだ太陽光エネルギーを蓄えることができ、天候の安定しない季節でも比較的安定した自家発電を行えるようになります。太陽光パネルの弱点と蓄電池の強みをうまくマッチングさせた画期的なアイディアですね。大容量タイプだけではありません。

将来的に蓄電池の小型化がさらに進めば、モバイル機器のバッテリーもより長時間使用できるようになるでしょう。日本の開発技術は世界でもトップクラスと言われており、今後もこれまで以上に先進的でハイクオリティな電池が生み出されるだろうと期待されています。私たちの見えないところで、蓄電池は暮らしを支えてくれているのです。

蓄電池の料金相場

では具体的に、蓄電池による蓄電システムを導入した場合にどの程度のコストがかかるのでしょうか。蓄電池にはさまざまな容量のものがあるため、できるかぎり同じ容量の蓄電池同士で料金相場を比較する必要があります。また、蓄電池の設置にあたっては本体の代金ばかりでなく、設置費や電気系統配線の工事料金なども加味しなくてはなりません。今回は5.0~7.0kWhの容量を持つもので比較しました。

家庭用蓄電池の料金相場

産業用蓄電池の料金相場は一般家庭用のものよりも若干高く、150万円~210万円程度ということになっています。ただし、用途によっては大容量のタイプが必要となり、たとえば自家消費を目的とするのであればより大きな容量が求められることもあるため、結果的にもっとコストがかさむことがある、ということを念頭に置いておきましょう。

産業用蓄電池の料金相場

産業用蓄電池の料金相場は一般家庭用のものよりも若干高く、150万円~210万円程度ということになっています。ただし、用途によっては大容量のタイプが必要となり、たとえば自家消費を目的とするのであればより大きな容量が求められることもあるため、結果的にもっとコストがかさむことがある、ということを念頭に置いておきましょう。

蓄電エネルギーと卒FIT

「自家発電をして余った分の電力を小売事業者に売ることができる」という点で大きなメリットがあるFIT制度ですが、適用には10年間の期限がもうけられています。

たとえば、2009年から開始した人の場合、2019年にFIT制度が終了することになり、これを卒FITといいます。10年間の適用期限を過ぎたあとは新規の電力買取業者を探すか、あるいは自家消費に切り替えるか、という選択を迫られることになります。

卒FITの買取金額次第では自家消費のニーズのほうが大きくなる可能性があり、そうなれば蓄電池の需要はますます伸びていくと考えられています。

実際、日本能率協会総合研究所の見通しでは、家庭用蓄電池の市場は2020年の1000億円、2023年には1200億円に拡大すると予測されています。

ただし、蓄電池の導入にはまとまったコストがかかり、コストをすべて回収して黒字化するためには最低でも20年以上かかると言われております。仮に自家発電が安定しなかった場合に余分なコストばかりを支払うことになってしまうため、電力事業者による新規買取を勘案し、メリットとデメリットを慎重に検討する必要があります。

住宅以外の蓄電システムも注目されている

日本だけでなく世界的にも現在、住宅以外で使える蓄電システムの開発が急務となっています。その一例として、Ⅴ2XやⅤ2Gなどのように、自家用車をひとつの大きな蓄電池として活用するシステムが普及しつつあり、災害時のライフライン支援などへの応用が期待されています。

一般企業も電力大手との提携を積極的に推し進めており、大阪ビジネスパークのようにV2Xの本格導入に向けた都市型プロジェクトの立案に乗り出しています。

ただ、車はあくまでも移動手段であり、一方で動いていない時にのみ蓄電池として活用するというV2Xシステムとはニーズの相反が起きる可能性があり、エネルギー資源として充分な供給量を確保できるかどうかが今後の課題とされています。

蓄電システムや蓄電池の今後

東日本大震災の教訓から、日本国内でも国をあげて再生可能エネルギーの普及が推し進められています。とりわけ医療機関など、災害時の緊急対応が必要となる公共施設では蓄電池が文字通りライフラインとなる可能性があり、また、一般企業でも蓄電池システムを本格導入すれば、電力のピークカットや代替エネルギーの普及活性化につながると見られています。

さらに、FIT制度が終わることによってニーズが切り替わり、蓄電エネルギーのビジネスへの応用がよりいっそう進むだろうと見られています。

蓄電池は今後も代替エネルギーとして利用されている

災害時のライフラインや新しい代替エネルギーとして注目されている蓄電システムは、国としても蓄電池の普及を積極的に推し進めています。

ただし、蓄電システムには綿密なコストシミュレーションが必要となるほか、ニーズに合わせた適切な容量の蓄電池を選ぶ必要があるなど、いくつかの注意点があります。メリットとデメリットを慎重に検討したうえで導入に踏み切りましょう。

重要ポイント
1.蓄電システムはライフラインになり得る
2.適切な容量を選択
3.卒FIT買取との連携も重要

*Enabilityは、日本ユニシス株式会社の登録商標です。
*その他記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。