2章 リジェネラティブな未来を拓くテクノロジー リジェネレーションを加速させるテクノロジー(4)

ロボティクス
テクノロジーの進化
ロボットは、さまざまな作業プロセスの協働者として定着し、人の能力を拡張させる存在、さらには代替へと進化していく。喫緊の社会問題である2024年問題においては、センシングとロボットの活用による工場・物流倉庫等の業務自動化が加速する。5Gネットワークを利用した建設機械の遠隔操作では、複数台の機械を一人の操作者が運用して工事を進める等、仮想空間とリアルな建築現場を高度に融合させることで生産性向上が図られるようになる。一方、産業用・サービス用ロボットの分野では安全面への配慮から、性急な完全自動化ではなく、人と協働して動作させるロボティクスが進化していくだろう。
技術進化に伴いロボットは自律性を高めていくため、既存の業務プロセスも徐々にロボットネイティブなものへと再構築される。ロボットによる完全な自律作業が困難な現場でも、遠隔操作技術の進展により人は空間に縛られずにロボットを動かせるようになり、人の働き方も洗練されていく。
もたらされる社会インパクト
【経済】人とロボットの協働作業が省人化を促進する
先述のような完全自動化が難しい現場や、人手作業が常識となっている現場では、「人とロボットの協働」というアプローチでの部分的な自動化により、生産性の向上や人手不足の解消が進む。例えば弁当や惣菜の製造工程は、多品目の把握・認識、掴み、盛り付けといった作業の複雑さと、作業速度の調整の難しさから自動化が困難であるため、人とロボットが同じコンベアラインで協働する作業プロセスが実装されている。
【社会】生成AIと連動したロボットが見守りの安心感を高める
ロボットは、要介護者の様子や健康状態を高い精度で把握し、かつ適切なコミュニケーションを取ることで、見守る人・見守られる人に安心感を与える。独居老人の増加にどう対応するかが社会課題となる中、遠隔介護を可能にする見守りロボットの実証実験が進められている。生成AIと連動した見守りロボットは、ベッドや浴室で発生する危険事象(転倒、転落、単独での離床等)を検知するだけでなく、バイタルデータの異常を検知すると同時に要介護者本人に声がけし、応答がなければ遠方にいる家族にSMS通知したうえで、搭載カメラの映像を転送する。要介護者とマルチモーダルで自律的なコミュニケーションを行うことで、介護する側にも安心と負担軽減を提供し、異変時の適切な対応を可能にする。
【環境】自律性を高めたドローンが環境価値を可視化する
森林の環境モニタリングやインフラ監視においてすでに実用化されているドローンは、今後、自律航行能力の向上に伴い、AI画像認識とセンシングを活用した点検・監視業務の自動化が進展する。5G/6G回線を使うことで遠隔操作による現場画像の伝送、AIによる即時解析も可能となり、リアルタイムで異常を発見する仕組みが実装されていく。また、ドローンによる森林モニタリングでは、立木本数や樹高、直径等の計測を通して森林品質が検証される。カーボンオフセットが促進される中、入山の難しい山林や放置された私有林における環境価値の可視化が期待される。

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