2章 リジェネラティブな未来を拓くテクノロジー リジェネレーションを加速させるテクノロジー(2)

Web3、メタバース
テクノロジーの進化
ピア・ツー・ピアのインタラクションを前提とした自律分散型の社会経済システムが徐々に受け入れられていく。普及を推進するのは、ブロックチェーン上のスマートコントラクトやガバナンストークンを活用した新しい組織形態「DAO(分散型自律組織)」、また中央集権的な管理者を置かず個人間の直接金融取引を可能にする金融システム「DeFi(分散型金融)」等である。DAOについては今後、法人格やガバナンスについての法制度、業界内ルールの整備が進むことで、志を共有する多様なコミュニティが増加していく。
一方、ライブイベントやショッピング、あるいはコミュニケーションそのものに新たな体験価値をもたらすメタバースは、今後、異なるプラットフォーム上の複数のメタバース同士が接続され、ブロックチェーンやNFTの活用により、アバター、仮想通貨といったデジタルアセットの相互運用が可能となる。加えて、空間コンピューティングの進展によりメタバースが仮想・現実の両空間をつなぐインターフェースとなることで、リアル空間に生きる一人一人の暮らし方が拡張されていく。さらに6G等の次世代通信技術が一般化すれば、スマートグラスを装着して複数の作業空間を行き来するといったデジタルワークプレースも可能となり、働き方から余暇の過ごし方までもが大きく変化する。
もたらされる社会インパクト
【経済】リアル空間とメタバースの融合が経済活動を拡げる
リアル空間の制約を受けないメタバースは、新たな経済活動やこれまでにない生き方を可能にする。例えば、仮想店舗の運営や接客・案内業務等の労働機会、あるいは個人が表現・発信・販売者になれるクリエーターエコノミーやバーチャル教室でのリスキリングといったビジネス機会が創出される。身体的、精神的、地理的な理由で活動の場が限られていた人々には、活躍できる機会が大幅に拡がる。24時間休みなくライブコマースを行う「デジタルヒューマン」や、人間の意図を理解したうえで代わりに業務を実行する「デジタル従業員」等の試みも開始されており、メタバースは今後リアル経済をけん引する場へと成長していく。一方で、自治体業務の場としての活用も拡がる。例えばメタバース上に再現された市役所での住民票取得等、行政サービスをリアルかつ簡便に受けられるようになる。
【社会】分散型コミュニティが社会参加や自己実現の選択肢を増やす
Web3の進展により分散型コミュニティの立ち上げが容易になる。興味のあるコミュニティへの気軽な参加や、個人の世界観を活かしたセルフプロデュースが活発化することで、各コミュニティの多様化が進み、一人一人の志向・嗜好に合った社会参加や自己実現の選択肢が拡大していく。趣味仲間やファンクラブ、あるいは環境貢献を目指す人の集まりがDAOとして運営され、国境の壁を超えたコミュニティ参加、価値観を共有する者同士の熱量の高い交流、共通目的の実現に向けた共創やアクションが後押しされる。コミュニティからはまた別のコミュニティが誕生し、その活動が仕事やビジネスにも発展していく。DAOコミュニティでは、透明性のあるルールのもと、個人のコミュニティへの貢献度に応じて、仮想通貨や法定通貨・コモディティと交換することもできるNFTが分配される。DAOの活動を通して生み出された社会的価値が、そのままリアル経済における価値となる。

【環境】個々の経済活動のつながりが環境を再生する
一人一人の経済活動が大きな金流を生み出し、自然環境を再生する力となる。ReFi(再生金融、RegenerativeFinance)は、ブロックチェーンを活用して社会課題の達成を目指す事業への資金流入を促す取組みであり、気候変動対策や生物多様性保全等の分野を中心に活用が広まりつつある。ReFiでは、DAOコミュニティ等による環境や社会を再生する事業の経済的インセンティブが可視化される。そのうえで、例えばトークン化されたカーボンクレジットをコミュニティ内の人々が購入することにより、環境再生への貢献と、環境価値の流通を同時に促進できるという好循環が生まれる。
健康と環境をつなぎ、経済的価値を創出することも始まっている。ウォーキング等のエクササイズをすることで、報酬として仮想通貨を獲得できるWeb3ゲームが社会実装されている。エクササイズによる消費カロリーやCO2排出量削減効果をアプリ上に表示することで、健康面でも環境面においても「より良くする」というアクションが可視化され、それが経済的価値の創出につながる。
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