中小企業にも申請業務支援
海外ベンダーと提携も検討
日本ユニシスは、10年以上にわたる製薬企業向けのサービス提供実績を背景に、国内の薬事情報の管理は大企業のみならず、中小企業に対する申請業務支援を強化し、海外の薬事情報は欧州IDMP規制に対応し、海外でRIMSサービスを提供するITベンダーと提携する“エコシステム戦略”を通じて、薬事業務の電子化に対応していく方針だ。行政機関向けの医薬品・医療機器申請審査システムや申請電子データシステム(ゲートウェイ)の開発経験を生かし、承認情報の保管・管理を支援する「OpenApproval®」(オープンアプルーバル)、申請書作成を支援する「OpenTrusty」(オープントラスティ)では数十社にサービスを提供。自社サービスは申請業支援に集中し、他社が提供する製品や安全性、臨床試験情報を管理するRIMSプラットフォームと連携していくことで、日本の企業に利用しやすいサービスを追求する。
日本ユニシス
日本ユニシスは、RIMSの概念が確立する前から、承認情報の管理というコンセプトでサービスを提供してきた。医薬品の審査機関である医薬品医療機器総合機構の基幹システムやゲートウェイに関して、旧厚生省の時代から申請・審査システムの開発・改修・運用を行ってきたのが始まりで、行政機関の審査体制を支援している。
その一方、製薬企業向けには、2007年の薬事法改正を契機に、承認情報の保管や管理を行えるオープンアプルーバルの提供を開始した。既に10年以上の歴史を持ち、64社が利用している業界標準のシステムだ。
製薬企業にとって薬事コンプライアンス違反というリスクを未然に防止するのが、オープンアプルーバルの強みだ。医薬品等申請書をめぐっては、旧科学及血清療法研究所が承認書に記載された方法と異なる製造実態を隠ぺいしていたことを受け、厚生労働省が国の承認書通りに製造されているか、国内の医薬品製造販売業者に対して一斉点検が行われたが、製薬業界に大きな貢献を果たした。
一つひとつの品目で承認書と製造実態を照合する膨大な作業を手作業で行うのは難しいが、オープンアプルーバルを用いることで、各品目の承認書の変更管理に関して、最新の承認情報や変更履歴を表示し、承認書と製造実態の総意をチェックすることができたという。多くの製薬企業から、「オープンアプルーバルがないと対応できなかった」という声が上がった。
日本ユニシスの公共ビジネスサービス第二本部社会公共サービスサービス部第一室の江森恵太氏は、「製薬企業向けのソリューションを提供しているだけではなく、製薬業界に貢献していることがモチベーションになるし、業界の大きな課題を防止できたとことはうれいいと思っている」と話す。オープンアプルーバルの利用企業で構成されたユーザ会も定期的に開催しており、オープンアプルーバルに対する改善要望をサービスに反映させ、ほぼカスタマイズが必要ない標準機能を提供できるようになった。
さらに昨年から申請書作成を支援するオープントラスティの提供もスタートした。一変申請や軽微変更届を提出する際には、変更する個所の点検に加え、意図しない変更など、オープントラスティによって電子的に点検することが可能になった。既に20社が利用し、申請書作成時の誤記防止や申請書作成業務の大幅時間短縮が期待される。
今後は、国内で培ってきた経験や実績を生かし、新たな顧客層が利用しやすいサービスへの改良や、自社にはない専門性を持つ他社との兄弟を通じて、グローバル化も目指していく。江森氏は、「薬事情報には、製品情報以外に安全性や臨床試験などいくつかの主要な情報が含まれるが、われわれは審査を取り巻く申請業務の周辺を得意としており、そこを強化していきたい」と述べ、国内の承認情報管理など得意な領域に自社サービスを特化する方向。
オープンアプルーバルは現在、申請件数が多い企業の利用が中心だが、申請件数が少ない製薬企業にも利用してもらえるようクラウド版サービスを開始する予定で、顧客の裾野を拡大し、提供企業として100社を目指す。そのほか、添付文書管理サービスも展開していく予定だ。
また、欧州IDMP規制に対応し、グローバルRIMSプラットフォームを提供するベンダーと提携し、オープンアプルーバルやオープントラスティを組み込んでいく方向性も打ち出す。
江森氏は、「グローバル製薬企業からも、他社のグローバルRIMSにオープンアプルーバルを連携させるための相談を受けている。グローバルと日本には薬事環境でまだまだギャップがあり、グローバルRIMSで日本の当局や製薬企業の全ての要求事項をカバーするのは難しいと考えており、パートナー企業と一緒になって問題を解決していきたい」と強調。“エコシステム戦略”で対応していく構えだ。
薬事日報 2018年8月1日 掲載記事
*OpenTrusty、OpenApprovalは、BIPROGY株式会社の登録商標です。
*その他記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。