BIPROGY Foresight in sight BIPROGY Foresight in sight

事例紹介

マーケティングシステムと情報系ポータルを組み合わせ通信販売事業のビジネス状況を“見せる化”する。

株式会社三越様

2008年09月01日

USER PROFILE

株式会社三越の写真

設立 :1898年
売上高:334億2,700万円
従業員数 :213名(2008年6月末現在)
所在地 :東京都江東区南砂2-36-11
事業内容 :カタログ、テレビ、ECなどによる通信販売、宅配事業

本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。なお、事例の掲載内容はお客様にご了解いただいておりますが、システムの機密事項に言及するような内容については、当社では、ご質問をお受けできませんのでご了解ください。

システムの概要

  • システム名称:三越 通信販売事業部新マーケティングシステム
  • システム概要:精度の高い顧客分析(データマイニング)
    をスピーディに行う通信販売向け情報系ソリューション『IMPACT-DM/MA3』と、分析結果を誰でも鳥瞰的に理解・把握できる統合パフォーマンスマネジメントアプリケーション『Microsoft Office® Performance Point Server 2007』を組み合わせた新マーケティングシステム
  • 開発期間:約1年
  • システムユーザー数:100名

導入の背景 情報処理のスピードとデータ分析の機能面に課題があった従来のマーケティングシステム

  • 既存のシステムはデータ処理のスピードが遅かった
  • 機能面でも近年の顧客数やチャネルの拡大に対応しづらいなど課題があった

国内通販マーケットは拡大傾向にありながらも売上が低迷

1898年の開設以来、110年もの長きにわたって通信販売を手がけてきた三越 通信販売事業様。現在は、カタログ(65%)、TV(25%)、オンラインショッピング(10%)など幅広いチャネルで、老舗百貨店ならではの厳選された商品を販売している。

こうした通信販売の企画・運営を担当する三越 通信販売事業部様では、10年ほど前にコンピュータを使ったマーケティングシステムを構築し、データベースを活用した顧客属性・購買傾向の分析や、その結果をもとにしたプロモーション企画などに取り組んできた。しかし、同システムは当初からデータ処理のスピードが遅いという問題があったほか、機能面でも近年の顧客数やチャネルの拡大に対応しづらいなどの課題があった。

相原 宏志氏の写真

「そうしたこともあってか、国内の通信販売マーケットは拡大傾向にあったにも関わらず、2002年を境に当社の通信販売事業の売上が低迷しはじめました。このままではいけないと大急ぎでマーケティングシステムを刷新することにしたのです」と話すのは、営業推進部 ゼネラルマネジャーの相原宏志氏だ。

分析結果を見て顧客に向き合っていなかったことを痛感

三越 通信販売事業部様はBIPROGYを含むベンダ数社に対し、新たなマーケティング方法とそれを支えるシステムの提案を依頼。限られた期間で従来のシステムの課題点を洗い出し、最適な仕組みを一から構築し直す必要があったため、途中で根をあげるベンダも出るなか、BIPROGYは三越様がもつ実際の顧客情報を詳細に分析しながら、現状の課題と具体的な改善策を明らかにしていった。

「BIPROGYから提示された分析結果を見て、従来のシステムは、真に顧客ニーズに向き合うものになっていなかったのだなと痛感しました。これまでは当社が売りたい商品や売上実績に主眼においた分析になっていたため、『このお客様は何を求めているか』という顧客分析が弱かったのだと気づかされました」(相原氏)

選定理由 顧客中心のマネジメントと計測可能なマーケティングを実現

  • 売上でなく顧客数によって状況を把握、それをもとに商品企画やプロモーションを計画・監視・評価できる機能性
  • 実効性の高い販促計画と精度の高い受注予測を実現する分析機能
  • 柔軟かつ短期間でのシステム構築を可能にするWindows®/.NET開発環境
  • 通信販売業界における豊富な実績とノウハウ
  • IAサーバES7000の高信頼性、高拡張性

売上でなく顧客数を起点としたマーケティングを提案

BIPROGYが提案したのは「顧客中心のマネジメントと計測可能なマーケティング」を確立する仕組みづくりだった。自社の商品や売上実績を軸としたマーケティング手法では、どうしても顧客ニーズの変化といった売上増減の要因を把握しづらくなり、三越様の通信販売事業においてもそれがネックになっているのは明確だったからである。

そこで、BIPROGYは「売上実績」でなく「顧客数」を起点に通信販売事業の状況を把握・管理し、その顧客数の変化をもとに商品企画やプロモーションを計画・監視・評価する仕組みを提案。さらに、購入履歴をもとに顧客一人ひとりの購買傾向や嗜好性などについて緻密に分析し、訴求効果が高い媒体、各商品に対する購買可能性、注文サイズ・数量などをシミュレーションすることで、実効性の高い販促計画と精度の高い受注予測を可能にした。

こうした詳細な仕組みを短期間で提案できたのは、BIPROGYが以前にも三越様の顧客データのテスト分析を依頼されたことで、同社の通信販売事業の現状と課題を正しく理解してきたことに加え、ダイレクトマーケティング業界で豊富な実績を有する情報系ソリューション『IMAPCT-DM/MA3』の機能をフル活用したことにあった。

短期間でシステム構築が可能な.NETにも期待

また、今回の開発においてはオープンテクノロジーによって柔軟かつ短期間にシステムを構築できる『Windows®/.NET』を提案した。しかし当初、同社には不安の声もあったという。

「当社では基幹系システムに汎用機を使用しています。そのため、Windows系でシステムを開発して、本当に連携などは大丈夫かという声が保守担当から出ていました。しかし、BIPROGYとマイクロソフトの強力なアライアンス関係も認識していましたし、BIPROGYからも互換性の部分にはまったく問題がないというお墨付きがあったので不安はありませんでした」と語るのは営業推進部 プランニングスタッフの小林由浩氏だ。

さらに、今回ハードウェアには堅牢性の高いアーキテクチャをもつIAサーバ『BIPROGY Enterprise Server ES7000』を、OSにグローバルスタンダードなオープンプラットフォームである『Windows Server®』を、データベースマネジメントソフトに『Microsoft® SQL Server™』を提案、これら豊富な稼働実績をもつインフラ、ソフトウェアも安心材料になっていた。

こうして三越 通販事業部様は、提案内容の具体性と的確さ、またシステム構築のスピード、通信販売事業における実績、インフラ整備までのワンストップでの対応が可能などといった点を評価し、BIPROGYをパートナーとして選定した。

「これからの通信販売ビジネスの成功に不可欠な視点を提案してくれただけでなく、それを予想以上の短期間で実現してくれる.NETにも期待しました。また、BIPROGYは常に真摯さ、誠実さ、熱意をもって対応してくれました。他のベンダは、こちらの要求に応じきれず、ギブアップしてしまったのですが。BIPROGYとは、まさに胸襟を開いて話すことができましたし、この方々となら最後まで一緒にやり遂げられると確信できました」(相原氏)

導入の効果 誰でも簡単にデータの意味を読み解ける“戦略的な情報環境”を構築

  • 情報系ポータルOffice Performance Point Serverでデータマイニングの結果を“見せる化”、従来は散在していたデータが誰でも見やすく、理解しやすくなった
  • 計画・実行・評価・改善というPDCAサイクルの進捗状況を「監視」することで、状況に対して迅速に施策が立案できるようになった
  • システムの導入、運用、維持コストを大幅に低減できた
  • 以前は2日かかっていた顧客情報の抽出が3〜4時間に短縮された

情報系ポータルによって必要情報を“見せる化”

データマイニング(注)による分析結果は、そのデータをどう読み解くか、またそれを実際にどのように施策へ活かすかが難しく、その有効活用には高度な専門性と慣れ・経験が必要となる。そこで今回のマーケティングシステムでは、このデータの読み解きを、誰もが簡単にできるよう、情報系ポータルで“見せる化”するという、画期的な仕組みを組み入れた。それが統合パフォーマンス マネジメント(業績管理)アプリケーション『Microsoft Office® Performance Point Server 2007(以下、Office Performance Point Server)』の活用だ。

新しいマーケティングシステムは、年間の顧客数を予測する「計画系」、計量評価に基づいて販促活動を行う「実行系」、顧客・プロモーション状況をチェックする「監視系」、顧客セグメントごとに評価指標を計算する「評価系」で構成されている。このなかで運用上もっとも重要になる「監視系」部分にOffice Performance Point Serverを適用し、これまで散在していたデータを一元的に集約。通信販売事業の現状分析データとして誰もが簡単に把握できるようにした。

状況に応じた迅速な施策立案を実現

例えば、ポータルトップにはセグメントごとの稼働顧客の状況を示した「診断文」とともに、その「危険度」が赤、黄、青といった色で表示される。あまり状況が良くない場合には、赤字で「顧客数は、長期的に減少しています。1年後に○×%減少する恐れがあります」などの警告が発せられるようになっている。つまり分析データの可視化を実現したのだ。

このほか、プロモーション診断情報や新規顧客に対する販促計画の目標達成状況なども表示されるなど、主要な評価指標を鳥瞰的に把握できるようになっている。また、これらの情報をポータルトップに掲載して、最新の顧客状況、目標達成状況を全社で共有することで、ビジネスのリスクやチャンスに対するスピーディな気づき、アクションを促すことが可能になった。すなわち、計画・実行・評価のPDCAサイクルを「監視」することで、状況に対して迅速に施策が立案できるようになったのだ。なお、この掲載内容・項目は容易に変更、カスタマイズが可能になっている。

緻密な要件定義によって、業務フローの改善点も明らかに

システム開発にあたっては、まず約4カ月という長い時間をかけて要件定義を進めていった。今回のマーケティングシステムにおいては、従来の業務フローに潜む改善点を洗い出し、最適なフローを再構築すること、またデータマイニングによる分析データをどのように活用するかを徹底的に検討することを重視したためだ。

「これによって『なるほど、こんなことも簡略化できるのか』と気づく部分も多く、これまであたりまえだと思っていたことがいかに非効率だったかを知ることができました。BIPROGYのマイニング力に感心するとともに、私たちのリクエストにとことん付き合ってくれたことを感謝しています。BIPROGYは、本当に現場密着型の企業だなと思います。さらに、システム導入、運用などのコストが大幅に低減できたことにもメリットを感じています」(小林氏)

小林 由浩氏の写真

(注)データマイニング:
大量に蓄積された未加工のデータ中に存在する、ある傾向や相関関係などの情報を見つけるための技術・手法。

今後の展望 マーチャンダイジングとのデータ連携・情報活用も視野に

  • Office Performance Point Serverによる監視情報を全社100台のPCで閲覧できるようにする
  • さらなるマーケティングシステムの改良とマーチャンダイジングに役立つシステムを開発する

流通業界では日本初となった新マーケティングシステム

そして2008年4月、新たなマーケティングシステムが無事にカットオーバーされた。このOffice Performance Point Serverを用いたマーケティングシステムは、流通業界では日本初となる。本格稼働から間もないため、まだ具体的な効果は計測されていないが、7月からは1回目の顧客情報の抽出(ファーストトライアル)がスタートする。

「私どもの顧客データは500万件にものぼるため、従来のシステムでは顧客情報を抽出するだけで丸2日かかっていました。しかし、今回導入したマーケティングシステムでは3〜4時間でデータ抽出から分析を終えられます。これは驚異的なスピードですね」(小林氏)

コールセンターの写真

また今後は、Office Performance Point Serverを使った「監視」情報を、全社PC100台で閲覧できるようにしていくことも計画されている。

「BIPROGYには、これからもデータ抽出の方法などマーケティングシステムを進化させていくための提案を期待しています。また、マーチャンダイジングに役立つシステム開発などでも協力してほしいと考えています。いずれにしても長いお付き合いになると思いますので、今後ともぜひよろしくお願いします」(相原氏)

事例のポイント

三越 通信販売事業部様では低迷が続く通販事業の活性化に向けて、マーケティングシステムの刷新を決断。BIPROGYでは通信販売企業向けソリューション『IMPACT-DM/MA3』と統合パフォーマンスマネージメントアプリケーション『Office Performance Point Server 2007』を組み合わせることで、きめ細かな顧客管理と受注予測を可能にするシステムを提案・構築した。
そのポイントは、以下の通り。

  1. 売上でなく顧客数をベースにしたマーケティングを提案
    BIPROGYでは、売上でなく顧客数を起点として通信販売事業の状況を把握・管理し、その変化をもとに商品企画やプロモーションを計画・監視・評価する仕組みを提案。さらに、履歴をもとに顧客一人ひとりの購買傾向や嗜好性などについて緻密に分析し、実効性の高い販促計画と精度の高い受注予測を可能にした。
  2. 通信販売向け情報系ソリューション『IMPACT-DM/MA3』をフル活用、短期間での開発に成功
    BIPROGYは、以前にも三越様の顧客データのテスト分析を依頼されており、同社の通信販売事業の現状と課題を正しく理解してきたことに加え、ダイレクトマーケティング業界で豊富な実績を有する情報系ソリューション『IMAPCT-DM/MA3』の機能をフル活用したことで、短期間でのシステム開発に成功した。
  3. Office Performance Point Serverにより、顧客の現状が鳥瞰的に視認できるインタフェースを実現
    ポータルトップに最新の顧客状況、目標達成状況を掲載し、全社で情報を共有することで、ビジネスのリスクやチャンスに対するスピーディな気づき、アクションを促すことが可能に。計画・実行・評価のPDCAサイクルを「監視」することで、迅速に状況に対する施策の立案ができるようになった。
  4. 国内の流通業界で初めてOffice Performance Point Serverを使用
    Office Performance Point Serverを組み合わせたマーケティングシステムとしては流通業界では日本初となった。
  5. Windows/.NETにより短期間でのシステム構築が実現
    構築にあたっては.NETによる開発生産性の高さを最大限に活用、短期間でのシステム構築を実現した。また、構築にあたってはBIPROGYの通信販売業界での豊富なシステム開発実績が強みとなった。
新マーケティングシステムの運用概念図
新マーケティングシステムの運用概念図
  • *Microsoft、Windows、Windows Server、SQL Server、Microsoft Officeは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
  • *Windowsの正式名称は、Microsoft Windows Operating Systemです。
  • *その他記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。