事例紹介
情報共有の高度化に向けたシステム基盤をSharePoint Portal Serverで整備
アサヒビール株式会社様
ソリューション、製品・サービス
2006年10月01日

USER PROFILE

設立:1949年9月1日
資本金:1,825億3,100万円(2005年12月31日現在)
従業員数:3,607人 (2005年12月31日現在)
本店所在地:東京都中央区京橋3-7-1
事業内容:ビールをはじめとした各種酒類の製造販売
本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。なお、事例の掲載内容はお客様にご了解いただいておりますが、システムの機密事項に言及するような内容については、当社では、ご質問をお受けできませんのでご了解ください。
システムの概要
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システム名称:Asahiポータル
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システム概要:全社員向けポータルシステム。各種システムに蓄積されている情報の中で、社員にとって重要度が高いものを厳選し、1つの画面内に表示。Microsoft Office® SharePoint® Portal Server 2003(以降、SharePoint Portal Server 2003と記述)をベースに構築。
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開発期間:約3カ月
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システムユーザー数:全社員(3,607人、2005年12月31日現在)
導入の背景 あらゆる情報が蓄積されているものの、視認性がネック
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従来のポータルは視認性に課題があった
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情報共有の高度化を実現したかった
2001年のポータル構築以来、全社の情報共有を推進
ビールの製造販売を事業の中核に据えながら、焼酎やウイスキー、低アルコール飲料などの多彩な新商品を提案し、総合酒類メーカーとして確固とした地位を築いているアサヒビール様。同社では、小売店に対する商品提案に取り組む営業スタッフを支援するため、2001年にポータルシステムを整備し、市場動向や新商品に関する情報発信に取り組んできた。 このポータルシステムは、アサヒビール様の社内に構築されている約200ものシステムから、必要な情報を容易に取得できるようにしたもので、情報管理ソフトウェアにはマイクロソフトの「Microsoft® Outlook® 2000」と、その機能を拡張する「Digital Dashboard」を採用していた。

Digital Dashboardは、Webブラウザベースの統一されたインタフェース内に、さまざまな情報へのリンクを自由に設定できる。この機能を活用し、Outlook 2000のインタフェース内にあらゆるシステムへのリンク集を設けることで、経営トップや各部門長からメールでメッセージが届くと、営業スタッフは、同一画面から関連する情報や自身の提案活動に必要なデータなどをすぐさま引き出し、閲覧することができるようになっていた。
全社員が、全社方針や業界動向をリアルタイムに、そして“確実に”共有できる仕組みづくりが、次の課題に
しかし、理事 業務システム部長の奥山博氏によると、このポータルシステムには社内のあらゆる情報を閲覧できる半面、使い勝手の面で大きな問題があったと言う。 「Webパーツで各システムへのリンクを容易に設定できましたが、リンク先が非常に多くなったことで情報の視認性が低下していました。また、システムを立ち上げ、リンク集をたどらなければ情報を閲覧できなかったため、多くの情報を積極的に収集する社員と、そうでない社員との間に“情報格差”が生まれつつありました」(奥山氏) 奥山氏は、こうした社員間の情報格差は、今後、同社がさらなる業容拡大を図る上での壁になると考えた。なぜなら、同社は業容拡大に向け事業の多角化を進めており、各部門の営業スタッフには、他部門の取り組みや成功事例などを取り入れながら、全社方針や業界動向などに基づくマクロな視点からの営業活動が求められていたからだ。
このため同社は、価値ある情報を営業現場まで確実に伝え、かつ情報の入手が営業スタッフの負担にならない、使いやすいポータルシステムを構築すべく、2005年11月に既存ポータルシステムの刷新を決定。複数のベンダーにポータルシステムの提案を依頼した。

選定理由 既存IT環境との親和性の高さと、BIPROGY+マイクロソフトのタッグが安心材料に
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BIPROGYの豊富な.NET開発実績およびSharePoint Portal Server 2003の構築実績
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既存IT環境との親和性の高いSharePoint Portal Server 2003によるマイクロソフトとの共同提案
「プル型」から「プッシュ型」の情報提供を効果的に行える、トップ画面の設計に注力
アサヒビール様はポータルシステムの刷新にあたって、経営者からのメッセ—ジや業界動向、顧客情報といった、営業スタッフが知っておくべき情報が一覧できるようにすることで、情報提供の手法を従来の「プル型」から「プッシュ型」に変更することを条件としていた。 この要望をふまえ、BIPROGYとマイクロソフトは、マイクロソフトのポータル製品、Microsoft Office® SharePoint® Portal Server 2003を用いたシステムの再構築を提案した。両社の案は、既存のポータル環境で設定していたリンク先の情報のうち、重要度の高いものだけをSharePoint Portal Server 2003上のメイン画面に移行させるとともに、新たに更新された情報は一覧で表示するものだった。これにより、既存コンテンツを整理統合し、散在している情報をワンストップで効率よく見せることができると考えた。

Active Directory®をはじめとする既存IT環境との連携がキーポイント
各社の提案の中から、アサヒビール様が最終的にBIPROGYとマイクロソフトの提案を採用した。採用理由の1つに、SharePoint Portal Server 2003の特徴であるActive Directoryとの親和性の高さがあった。 同社は以前から、ネットワーク上に接続されたPCや各種機器に対する社員のアクセス権限をActive Directoryで管理していたが、SharePoint Portal Server 2003なら既存のActive Directory環境をそのまま引き継げ、さまざまなシステムへのシングル・サイン・オンを実現することができた。また、既存のメールシステム(Microsoft Exchange/Outlook)や、分析業務のためにすでに導入されていたMicrosoft SQL Server™によるDWH/BIシステムとも容易に連携でき、開発作業を円滑に進められると考えられた。 さらに、SharePoint Portal Server 2003はMicrosoft .NET Framework(以降、.NET)で開発を行えるため、Webサービスを使ったアプリケーションを容易に実装できるなど開発生産性が極めて高い点や、Microsoft WordやMicrosoft Excel®といったマイクロソフトのオフィス用アプリケーションに慣れているユーザーにとって違和感のない操作性も、大きな魅力だった。
「.NET」と、「ポータル」の豊富な実績が決め手に

こうした機能面でのメリットに加え、「BIPROGYが.NET環境での開発に精通していたことや、さまざまな業界でポータルの開発実績があることも評価のポイントでした」と、アサヒビジネスソリューションズ ソリューション本部システム技術部第一チームの山本雄之氏は説明する。 「BIPROGYは、幅広い業界の企業向けにポータルシステムを開発してきたと聞き、同社にシステム開発を依頼すれば、操作性や機能など、私たちでは気づかない部分の助言をもらえると期待しました。実際に、要件定義の段階から大なり小なり相談させていただき、これまでの構築ノウハウに裏打ちされた数多くの技術的なアドバイスや、リスクの回避方法を提供していただけたことで、当社も安心して導入を進めることができました」(山本氏)
導入の効果 始業時にはまずポータルを確認。業務には欠かせない存在に
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「プル型」から「プッシュ型」の情報配信の実現により高度な情報共有を実現
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コーポレート・ガバナンスやリスクマネジメントの強化を実現
既存システムの活用により、短期間での立ち上げが実現
今回のシステムの再構築作業で注目されるのは、構築期間の短さだ。実際に、2005年12月に開発作業を開始し、その3カ月後の2006年2月には運用を開始している。 「これほど短期間でシステムを整備できたのは、ポータルに掲載すべき情報がすでに整備されていたことに加え、既存システムの情報共有の仕組みを新システムにも引継ぐことで、効率的な開発が行えたからだと思います」と山本氏は打ち明ける。 一方で、アサヒビール様は社員が容易に情報を入手できるよう、要件定義時におけるポータルシステムのインタフェース設計に、できる限りの時間を割いた。業務システム部主任の松田有美子氏は、次のように振り返る。

「単に表示する情報の種類を増やしただけでは“情報洪水”に陥って、本当に知っておくべき情報を社員が把握できなくなる可能性があります。また、いくら必要でも1つの画面に表示しきれないほどの情報量になってしまうと意味がありません。そこで、掲載すべき情報の絞込みと、できるだけわかりやすい見せ方をしようと細心の注意を払いました」(松田氏) こうしたアサヒビール様の要望をシステムに反映させるため、BIPROGYは、同社のシステム部門であるアサヒビジネスソリューションズ様のオフィスに常駐。プロトタイプを活用して、インタフェース設計や機能のカスタマイズを支援することで、アサヒビール様の理想とするシステムの実現に共同で取り組んだ。
情報提供の戦略的な“優先づけ”により、社員の意識改革が加速
このように、アサヒビール様は新ポータルシステム「Asahiポータル」の構築を進める一方で、その利用を促進するために、社内報でポータルの意義を訴えることなどを通じて社員の意識変革に努めた。 このような一連の取り組みの結果、アサヒビール様では現在、始業時には社員がまずポータルにアクセスするほど、業務に欠かせない存在となっていると奥山氏は頬をゆるませる。 「従来はメールに各種ファイルを添付して送信することで、全社に知らせたい情報を伝達していました。しかし、やり取りされるメールは数多く、結果的に情報洪水に陥り、本当に知らせたい情報がきちんと伝達できていないというケースがしばしば見受けられました。Asahiポータルによってそのような事態を一掃できたことに加え、社内のあらゆる情報を一目で確認でき、経営視点に立った営業活動の実践に役立っています」(松田氏) また、同社では、当初は営業スタッフの支援を目的にしていた「Asahiポータル」を全社員が利用できるようにすることで、総務部門や経理部門などのあらゆる部門で他部門の情報を確認できる体制を整え、コーポレート・ガバナンスやリスクマネジメントの強化も実現した。
利用ユーザーの声
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以前に比べて情報が一度に得られ、時間がない営業担当者にとって利便性が高くなりました。
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社内の情報、動き、流れを忙しい中でも短時間で確認でき、情報共有がしやすくなりました。
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株価、お客様の声などいろいろな情報が一目でわかることと、その情報が常に更新されてリアルタイムに入手できるので、以前の固定化されたページよりはるかに良いと感じます。
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社内外のトピックス、新商品スケジュール(発表・発売カレンダー)が便利で気に入っています。 トップの声が更新されているのも、わかりやすく、以前より楽しみにしてチェックするようになりました。 お客様相談室のトピックスも勉強になります。
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全社の状況がマクロでざっくりよくわかるようになりました。とくに営業担当者以外の人にも売上状況などがわかるのはいいことだと思います。
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当社の情報含めいろいろな情報が一画面で見られるのでとてもいいと思います。もっと早くからあったらよかったと思います。
今後の展望 他業界でのノウハウをシステムに反映させ、新たな“気づき”を促す
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既存分析系システム(DWH/BI)との連携強化を視野に
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他業界でのノウハウをシステムに取り込み、新たな気づきを促進
アサヒビール様は今後、社内の意見を参考にしつつ、「Asahiポータル」の機能をさらに向上させていく計画だ。
「現状、SharePoint Portal Server 2003が備えている機能のすべてを使っているわけではありません。それらの機能を今後の機能拡張を通じて、ぜひともフルに活用したいと考えています」(松田氏)
SharePoint Portal Server 2003は、業務システムとの連携のために主要なWebサービスを公開しており、業務データのポータルサイトへの登録やポータル情報の取得および操作、ユーザープロファイルの取得などをシームレスに連携することが可能だ。そこで同社では、情報の重要性をふまえて社内の分析系システム(DWH/BIシステム)とのさらなる連携強化を視野に入れている。
「もちろん、ポータルシステムとして盛り込むべき情報を抑えることは不可欠です。その点に配慮するとともに、BIPROGYと協力し他業界でのノウハウをポータルに反映させることで、新たな“風”を社内に送り込むことは可能なはずです。それがひいては社員の新たな“気づき”を促し、企業価値のさらなる向上につながると考えています」(松田氏)

事例のポイント
アサヒビール様の今回のシステム刷新は、使い勝手を向上するためにOutlook 2000とDigital Dashboardで構築されていた既存のポータルシステム環境を、SharePoint Portal Server 2003に置き換えたものだ。
今回のポータルシステム構築のポイントは、次の通り。
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既存IT環境との親和性を考慮したSharePoint Portal Serverによる最適な提案
SharePoint Portal Server 2003は文書の共有や共同作成を行うためのドキュメントライブラリ機能など、ポータルとしての基本機能を備えるだけでなく、マイクロソフトの統合認証環境であるActive Directory®との連携が容易であることが魅力だ。これにより、既存のActive Directoryを活用して、社員の役職に応じて適切なコンテンツを表示できるパーソナライズ機能の実装が容易となる。また、同様にExchangeやOutlookといった既存メールシステムとの連携も容易に行うことができる。BIPROGYでは、マイクロソフトの既存IT環境との連携が見込まれるお客様にはSharePoint Portal Server 2003の適用を提案している。アサヒビール様では、今後、SQL Serverによる既存分析系システム(DHW/BIシステム)の有効活用および、より強い連携を視野に入れており、今回の「Asahiポータル」構築は、全社情報活用戦略としての基盤として、今後の活用に大きな期待を寄せている。
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BIPROGYとマイクロソフトとの共同提案
今回の「Asahiポータル」提案においては、ポータル製品としてマイクロソフトのSharePoint Portal Server 2003による提案をマイクロソフトと共同で実施した。製品ベンダーであるマイクロソフトと、.NETの開発実績およびポータルシステムの構築実績の豊富なシステムインテグレーター(SIer)であるBIPROGYとの共同提案が、お客様に安心感を与えた。 -
細かなデザイン・レイアウト要求に対応しうるノウハウと技術
アサヒビール様からは、ポータルシステムの活用性・利便性を高めるために、デザインやレイアウトなどのインタフェース設計に対する多くの要望があげられた。BIPROGYでは、プロトタイプを作成することでアサヒビール様のイメージを確認したり、カスタムテンプレートにMicrosoft FrontPage® 2003で手を加えたり、スタイルシートにカスタマイズを加えたりすることで、できるだけ短期間でアサヒビール様の要望を満たせるよう開発を進めた。 -
機能要件だけではなく、非機能要件もカバーするTOTALのSI力
数多くの.NET開発実績およびポータル構築を持つBIPROGYだからこそ、全社員からのアクセスにも耐えうるWebサーバの負荷分散設計や、DBサーバの冗長構成など、信頼性・可用性などの非機能要件も過不足無く実現できた。 -
BIPROGYにおけるSharePoint Portal Serverの早期評価・検証作業
BIPROGYは、今後も、マイクロソフトと共同でSharePoint Portal Server 2003を積極的に提案する予定である。マイクロソフトとの情報交換も頻繁に行っており、2006年11月に発売が予定されているMicrosoft Office SharePoint Portal Server 2007の早期製品評価・検証もすでに終了し、お客様に安心してお使いいただくための準備を着々と進めている。

- *Microsoft、Outlook、SharePoint、Active Directory、SQL Server、Excel、Microsoft Office、SQL Server、FrontPage、Windowsは、米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
- *Windowsの正式名称は、Microsoft Windows Operating Systemです。
- *その他記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。