3章 リジェネレーションをデザインする

社会課題を解決する新たな仕組みを創り出すために
世の中に存在する社会課題の多くは、人々の行動によって引き起こされています。法律で禁止したり罰則を与えたりするといった強制力を利用する方法が採られることもありますが、現実的にはそれだけでは十分ではありません。そのため人々の行動を望ましい方向へ変えることも、社会課題を解決する仕組みに必要な役割になります。そこで、人の持つバイアスをうまく利用することで無意識に行動を変えてもらうナッジや、ついしたくなる「仕掛け」で自覚的な行動変容を促す仕掛学といった新たな手法が、社会課題解決の仕組み作りに取り入れられ始めています。このように視座を変えて新たな仕組みを社会実装していくことで、社会課題の解決は加速します。

関連事例
仕掛学の社会実装
人の行動を変える「仕掛け」を対象にした学問分野である『仕掛学』は、「ついしたくなる」行動の選択肢を増やすことで自発的な行動変容を促し、結果的に問題が解決する状況を目指します。デジタル技術を用いることで効果的な「仕掛け」を容易に製作できるようになり、誰もが楽しく社会課題を解決できるようになります。そこで名古屋大学とBIPROGYは、人の行動を変えることで解決できる問題の発見と、その問題を解決する「仕掛け」の着想を支援するワークショップを試行。プロトタイピング(試作品の検証と改善を重ねたうえで実際の製品の開発に取り掛かる手法)による効果測定を繰り返すことで、着想した「仕掛け」の社会実装を目指しています。

持続的に社会を支えられる仕組みを創り出すために
持続的に価値を創出し、その影響を広く社会に波及させるためには、最初に生み出した価値が別の新たな価値を生みながら起点へと循環する仕組みを設計することが重要です。ステークホルダーがしっかりと恩恵を受けられるようにすることで、その仕組みはより持続性の高いものになります。
ビジネスモデルの設計においては、ステークホルダー間でやり取りされるお金、情報、データといった価値の流れ全体を把握することが重要です。そこで鍵となるのが、ステークホルダーを洗い出し、その間を行き交う価値の流れを可視化するデザイン手法です。価値の交換を可視化し、連鎖と循環の構造を明確に理解することで、価値創出のボトルネックを事前に検知できます。その結果、場当たり的な対応に追われることなく、本質的な課題解決に注力でき、より広く持続的に価値を生み出せる仕組みをデザインすることができます。

関連事例
エコシステムのための価値循環デザイン
様々なものが複雑に絡み合う社会の課題解決に向けて、業種や業界の垣根を越えた多様なエコシステムが構築されています。エコシステムを持続可能なものにするためには、ステークホルダーがしっかりと経済的・社会的価値を得ることにより、事業継続が可能となるような「価値循環」の設計が不可欠です。価値循環設計手法を開発する下記リンク先の取り組みでは、エコシステムの設計・運営の推進を念頭に、社会的価値を生み出す道筋をモデル化した「ロジックモデル」と、ステークホルダー間の価値交換をモデル化した「ステークホルダーバリューネットワーク分析」を組み合わせた価値循環の検証手法などが生み出されています。この取り組みは社会課題解決を行う事業の創出を通じて社会全体に貢献することを目指しています。

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