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第2章 社会インパクトを生み出すデジタル技術 テクノロジービジョン

『人・コミュニティ』× サステナビリティ【ウェルビーイング】

デジタル技術の活用によりつくられる新しいつながりは、社会的価値を創出し、リジェネラティブ、レジリエンス、ゼロエミッションの社会インパクトを生み出す。この章では「テクノロジービジョン」と題し、社会インパクトを生み出すデジタル技術の進化の方向性と活用像を描く。
リアル空間とサイバー空間のデジタルツイン、あるいはサイバー空間同士の結合からエコシステムが創られ、体験価値の向上だけでなく、社会の最適化も図られる(図3)。またサイバー空間は、新たな知見や仕組みを発見する場としても進化する。特にメタバースやジェネレーティブAI の進化は、コミュニケーションや知的活動の在り方を大きく変化させる可能性がある。

図3  テクノロジービジョン
図3 テクノロジービジョン

デジタルツイン

IoTセンシングで把握したリアル空間の状況を、リアルタイムにAIで分析・判断、制御・フィードバックするいわゆるデジタルツインの社会浸透・利活用が進む。センサー技術の進化によりこれまでは取得が難しかった様々なデータを基にしてデジタルツインが構築され、可視化される対象・範囲が拡大し、新たなつながりができる。今後は音声や映像、加速度だけでなく、UV、気圧、音、PM2.5、CO2等の環境情報データや、ウェアラブル端末から取得する健康や生活習慣に関するデータ、あるいは自動運転を介した車載器情報や公共交通に関するデータ、衛星データ等である。最適化計算やシミュレーションがリアルタイムに行われることで社会活動の最適化や自動化が加速する。

デジタルエクスペリエンス

新しいデジタルエクスペリエンス(体験価値)をもたらすデジタル技術が進化する。メタバース仮想空間で買い物をし、バーチャルオフィスで働く、あるいはアバターを介してコミュニケーションを取ったり、NFT(代替不可能なトークン)を用いて販売されたデジタルアート収集を楽しむといったことが可能になる。またユーザー指示により文章や絵画を自動生成するジェネレーティブAI の活用は、人のアイディア創出や創作活動に大きなインパクトをもたらすと同時に、倫理面や著作権への配慮も求められる。

ヒューマンオーギュメンテーション

デジタル技術を活用して身体・認知能力等を補完・向上させるヒューマンオーギュメンテーション(人間拡張)技術が進展し、個をエンパワーする。ここで使われるXRやAI、ロボティクス等は、障がい者や高齢者の能力補填・回復を支援するだけでなく、建築や医療現場等での遠隔作業・監視・操作を促進し、空間的制約からの解放という点でも人間の「可能性」を拡げる。また、仮想空間を技能獲得の場とする動きも広がっていく。

ヒューマンオーギュメンテーション

最適化・自動化

最適化や自動化を加速させるAI

人間の五感を通した判断がそうであるように、音声、テキスト、画像等様々なデータから学習が可能なマルチモーダルAIは、その精度を向上させていく。また、学習モデルを自動的に更新して予測・判断の精度を改善させるアダプティブAI は、運用と開発を一体化させ、稼働開始後の環境変化に適応することを可能にする。

最適化に特化した量子コンピューティング

アニーリング方式の量子コンピューターは膨大な選択肢から最適な組合せを高速に計算するのに適しており、その適用技術がさらに進化する。量子アニーリング計算のアルゴリズムの改良や古典計算の最適化アルゴリズムとの連携により、物理・化学分野の材料開発や創薬プロセスで活用されている。さらには製造プロセス制御、物流ルートや金融ポートフォリオをはじめとするビジネス領域の管理・制御等、リアルタイムに状況変化する環境での最適化問題にも適用される。

エコシステム形成(つながること)を支援するデジタル技術

デジタル技術が人・モノ・サービスをつなげてエコシステムの形成を支援する。個別に運用されていたプラットフォームをデータで連携することにより、新たな価値が生まれ、社会課題の解決にもつながる。

ブロックチェーン技術がデータの信頼性や個人情報の安全性を確保する

データの改ざんを防止して取引の信頼性を向上させるブロックチェーン技術がエコシステムの形成を支援する。ブロックチェーン上で発行したトークンにより安全な価値移転が可能となり、個人ユーザーが作成したデジタルコンテンツを販売したり、希少価値のある蒸留酒をNFT化して販売するといった取引が拡大する。
さらなる普及に向けては規格や仕様が異なるブロックチェーン同士をつなぐクロスチェーン技術が必須となる。

システムの分散化と通信ネットワークの進化が「つながること」を支援する

再生可能エネルギーを活用する地域マイクログリッド(小規模電力網)や、自動化されたスマートファクトリー等、データをクラウドに送らずに低遅延かつセキュアに運用するエッジコンピューティングを活用した分散システムが普及する。同時にデジタルツインやメタバース等「つなげる技術」の通信基盤として、5G/6G 通信ネットワークやローカル5Gが活用される。

情報システムのレジリエンスを確保する

つながる世界における情報システムでは不確定な脅威が侵入することを前提としたレジリエンスの設計が重要になる。例えば、API やマイクロサービスにより分散化した複雑なクラウドシステムでは、異常検知、障害予測、AIを組み込んだ自動修復の技術がレジリエンスを高める。トレースやログ、トランザクション量、応答時間等のオブザーバビリティ(可観測性)によりシステム運用が最適化される。

*Technology Foresightは、BIPROGY株式会社の登録商標です。

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