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IWMS/FMソリューション「ARCHIBUS」コラム

ライフサイクルマネジメントを考慮した施設管理の取り組みとは?

施設管理をする上で取り組むべき課題として挙げられるのが「ライフサイクルマネジメント」です。最近は、よくこの言葉を耳にする機会は多くなったかもしれません。取り組まなければならないと感じていても、何から始めて良いか分からない人も多いでしょう。
本記事では、ライフサイクルマネジメントの意味をおさらいし、取り組み方について紹介いたします。きちんとライフサイクルマネジメントについて理解を深めた上で、施設管理に取り組むことが大切ですよ。

ライフサイクルマネジメント(LCM)とは

ライフサイクルマネジメント(LCM/Life Cycle Management)とは、ファシリティを企画する段階からより長く利用できるような計画や管理を行う考え方を指しています。設計や建設、運営、解体に至るまでのファシリティ自体の生涯にフォーカスしていることが特徴です。
「日本ファシリティマネジメント推進協会」によると、ライフサイクルマネジメントが目標にしているのは、ファシリティに依存する効用の最大化、ライフサイクルコストの最適化、資源やエネルギー消費・環境負荷の最小化、障害や災害のリスクの最小化です。
特に建築物の長寿命化を目的とするケースが多く、国や地方自治体も老朽化した施設はスクラップアンドビルドを採用するのではなく、ライフサイクルマネジメントを意識した「公共建築物の長寿命化計画」に移行しています。
低価格で施設を建設したとしても、建物を管理する十分な計画がなければ清掃やメンテナンス、改修などの費用がかさんでしまいます。
さらに、たとえば建て替え時の解体や新設にかかる二酸化炭素の排出量も多くなり、地球温暖化に拍車をかけることにもつながります。それらのリスクを減らすためにも、一度建設した建物を長く最適に活用することが欠かせません。
長期的な改修計画を打ち出し、建物の機能を向上させれば資産価値も上がります。その好循環を作るために、ライフサイクルマネジメントが注目されているのです。

ライフサイクルマネジメント(LCM)とは

ライフサイクルコスト(LCC)とは

ライフサイクルマネジメントとよく並列されて使われるのが「ライフサイクルコスト」です。
ライフサイクルコスト(LCC/Life Cycle Cost)とは、建物の生涯を「建物などの企画や設計をする段階から、施工や竣工、運用、修繕、そして老朽化による解体処分まで」と定義した上で、その全期間にかかるコストのことを指しています。
ライフサイクルコストとしてとらえられる費用は、「建設費」「水光熱費(上下水道代・電気代・ガス代など)」「保守点検費(定期点検費・メンテナンス委託費など)」「保険(火災保険・地震保険など)」「税金(固定資産税など)」「修繕・更新費(部品・部材の修繕・取り替え)」「清掃費」「警備費」「解体処分費」などが挙げられます。
それぞれの企業にとって最適なライフサイクルマネジメントを実現するには、ライフサイクルコストを低減させることが条件です。ライフサイクルコストが低減されていないと、その建物はライフサイクルマネジメントを重視しているとは言えないのです。
建物の耐用年数は構造体や用途によって全く異なるので、建物に合わせたライフサイクルコストを考えなければなりません。たとえば、鉄骨・鉄筋コンクリート造の耐用年数は50年と言われていますが、より長く利用するためのライフサイクルコストを企画・計画段階で検討する必要があると言えるでしょう。
ライフサイクルマネジメントやライフサイクルコストの考え方からも分かる通り、建物の価値は長期間を通じて考えることが不可欠です。もちろん建物は見た目のデザインも重視すべきですが、本当に大事なのは使いやすさや耐久性・耐震性、修繕のしやすさなどでしょう。
また、省エネルギーにも目を向けることも大切な視点の一つです。地球温暖化などの社会問題や、施設の価値を高めることに取り組むには、適正な機能や性能に注目しなければなりません。
目で見えるものばかりを追っていては本質的な価値に気付けないかもしれません。今のうちにライフサイクルマネジメントや、ライフサイクルコストについて理解を深めておきましょう。

ライフサイクルマネジメントの重要性

ライフサイクルマネジメントを考慮した取り組みを行う前に、なぜそれを施設管理に取り入れる必要があるのかを具体的にチェックしていきましょう。ライフサイクルマネジメントの重要性を理解しておけば、自社が抱える課題も見えてきます。

建設物の高寿命化

ライフサイクルマネジメントは、建設物の高寿命化を図るためにも非常に重要です。建設物を立てれば老朽化のリスクが伴いますが、ライフサイクルマネジメントを考慮した計画をすれば建物の長持ちさせることが可能です。
何も対策をしないまま建設してしまうと、修繕費などのコストがかさみます。さらに老朽化が早く進めば、建物の解体と建て替えを余儀なくされ、余計なコストがかかるかもしれません。その際は二酸化炭素の排出量が多くなるので、地球環境にも良いとは言えないでしょう。
コスト低減や地球環境を守るためにも、ライフサイクルマネジメントによる建物の高寿命化が不可欠です。

施設運営に伴うリスクの抑制

施設を運営するには、ある程度のリスクが付き物です。リスクを具体的に挙げると「水道・光熱費にかかるコスト」「内装材・配管材の劣化」「日常の清掃が行き届きにくい」などが代表的です。
特に内装材や配管材の劣化は、悲しい事故を誘発する恐れもあるので見過ごせないポイントの一つでしょう。ライフサイクルマネジメントを考慮した施設管理を行えば、可能な限り長寿命で高耐久な材料や機器を使うことにより、事故などのリスクを減らせるはずです。
また水道・光熱費にかかるコストは、たとえば断熱仕様の材料を導入すれば解決につながりやすくなります。清掃については、掃除しやすくなる材料を採用することによって解決するでしょう。リスクを無くすことは困難ですが、ライフサイクルマネジメントで抑制することは簡単です。

経済的な合理性の実現

適正なライフサイクルマネジメントを行うにはライフサイクルコストを避けては通れないと先述しましたが、それは経済的な合理性を実現することにもつながっています。
たとえば安価なコストで建物を建設したとすると、施設を運営するときに必ずその皺寄せがやってくる傾向があります。すぐに修繕が必要になったり、水道・光熱費のコストが高くなったりなど、さまざまな悩みに直面することになります。
しかし、ライフサイクルマネジメントでは建物によってそれぞれ必要な材料を適正に見極めていきます。しかも建物の長寿命を目標にしているので、ランニングコストも低減できるのです。
妥当なコストを企画段階から総合的に判断できることが、ライフサイクルマネジメントに取り組むメリットとしてもとらえられるでしょう。

ライフサイクルマネジメントを考慮した施設管理の取り組み方

ライフサイクルマネジメントの意味や重要性を理解したところで、早速それを考慮した施設管理の取り組み方についてチェックしていきましょう。施設管理に取り入れる工夫に悩みを過抱えていた人は、ぜひ参考としてお役立てくださいね。

コストを平準化する

ライフサイクルマネジメントを意識した施設管理に取り組むには、まずコストを平準化することを考えてください。
一般的には、中長期の修繕サイクルは5年ごとです。中には、10年ごとというケースもあるでしょう。修繕サイクルに含まれる項目は、主に建築・電気設備・空調設備・給排水設備など、全般的なものです。
そのため修繕更新費用は高額になりやすく、施設を運営する上では頭を抱えやすいポイントとして知られています。だからこそ、建物の工事内容をよく調べ、工事を数年ごとに分散させることでコストを平準化することも重要なのです。
このような効率的に修繕を行いコストの平準化を図るためには、たとえば、外壁改修工事があるとしたらそれに合わせて外壁に面する給排水管の更新を行うと良いでしょう。そうすることによって、外に足場を設置するための費用を低減させることにもつながりますよ。

ライフサイクルコストを低減する

ライフサイクルマネジメントには、ライフサイクルコストの低減も必要不可欠です。
ライフサイクルコストの低減を実施する際は「できるだけ長寿命・高耐久な部材・材料・機器を採用する」「更新や修繕を簡単にできる仕様を採用する」「水道・光熱費低減を検討する」などが大切です。
ライフサイクルコストを低減させるには、企画・設計の段階での総合的な取り組みが欠かせないのです。たとえば、耐久性があり長寿命の材料などを採用するのは基本です。
さらに水道・光熱費低減のため断熱材を使ったり、安価な深夜電力を利用したり、照明に人感センサーをつけたりすると、より効果が得られやすいでしょう。また給排水用ポンプ類や照明器具、鍵類などはメーカーごとに耐用年数が定められているので、詳しく調べておくと良いかもしれません。
ライフサイクルコスト低減のため、定期的な更新が必要なものにかかるコストを踏まえた計画を行いましょう。

管理サイクルを戦略的かつ継続的に実施する

ライフサイクルマネジメントを考慮した取り組みには、管理サイクルを戦略的に、そして継続的に実施していくことも考えましょう。
ここで言う管理サイクルの基本的な概念には「PDCA」があります。PDCAとは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」を指し、仮説や検証を重視することによってマネジメントの品質を高めていくことを意味しています。
PDCAをベースに置いた管理サイクルを戦略的かつ継続的に実施していくことで、施設の価値を最大限まで向上させることができるのです。
ライフサイクルマネジメントの取り組みでは、竣工後の運用段階も考えるので最小限の投資で、最大限まで価値を高められます。最終的には、ライフサイクルコストの低減にもつながっていくポイントとも判断できるでしょう。

管理サイクルを戦略的かつ継続的に実施する

機能向上やグレードアップを実施する

ライフサイクルマネジメントによって施設管理を行うのは、老朽化への対応のみとは限りません。
それぞれの時代のニーズを読み取り、その時代にあった機能向上やグレードアップを実施することも重要なのです。このポイントは、分譲マンションや賃貸マンションにおいて最適な維持管理方法としてもとらえられます。
時代に合った機能やグレードアップは、ユーザーの需要を反映した仕様や性能を併せ持っているので「好条件の物件」として長年維持することができます。それはランニングコストの低減や建物の長寿命化にもつながるのです。
さらに、ユーザーの目に好条件として映ると人気物件となるため、市場において建築物の競争力が上がることも見込めます。

ライフサイクルコストを低減するには

ライフサイクルマネジメントを考慮した取り組みには、ライフサイクルコストの低減が不可欠ですが、中には「具体的にどのような対策をすれば良いのか混乱している」という人もいるかもしれませんね。ライフサイクルコスト低減のためにどのような対策をするべきか、詳しく解説します。

長寿命・高耐久の材料や機器を採用する

ライフサイクルコストの低減には、まず長寿命・高耐久の材料や機器を採用しましょう。
ライフサイクルマネジメントの考え方で最も重要なポイントは「高寿命化」です。そのため、建物や機器自体が丈夫でなければ意味がありません。建物に用いる材料や機器は、なるべく長寿命で高耐久のものを選ぶことをおすすめします。
たとえば、老朽化が早く進みそうな外装材には耐候性のものを使ったり、各設備工事に用いる配管材は耐久性のある材料を採用したりすれば、ライフサイクルコストは自然と低減されます。建物や設備の寿命も長くなるので、かなり良い効果が得られるはずです。

容易に更新や修繕が可能な材料を採用する

施設の企画・設計段階から、更新や修繕が簡単にできる材料を採用することも、ライフサイクルコストを低減させる方法の一つです。
ライフサイクルコストの低減において、意外と見落とされがちな点が隠されているポイントかもしれません。このポイントには、日常の清掃が簡単にできるようにすることも含まれています。たとえば、建物のデザイン性を優先したため清掃が困難になっているケースは珍しくありません。
また、清掃しにくい材料を使っていると、メンテナンスなどもおろそかになりがちになるので、ライフサイクルコストの点から考えれば避けるべき状況です。だからこそ日常において清掃が簡単にできるようになる材料を採用しておくことが、とても大切です。
また、内装材は劣化しやすいものもあります。なるべく内装材は劣化しにくく、簡単に更新できるような材料を使うことをおすすめします。

水光熱費の低減を検討する

ライフサイクルコストの低減に直結するのは、水道や光熱費のコストを下げることです。
このポイントはとても身近な問題として考えやすいものの一つに数えられるかもしれません。
水道や光熱費を低減するには、たとえば外断熱や高断熱材を採用するなど、断熱仕様を検討していましょう。さらに電気代のコストを下げるために、安価な深夜電を利用したり、照明の消し忘れを帽子する「人感センサースイッチ」の導入を考えてみても良いかもしれません。
水道面については、井戸水や雨水などを利用してライフサイクルコストを低減している例もあるので、積極的に取り入れてみると良いでしょう。

長期的な修繕計画を立てる

ライフサイクルコストの低減を検討するならば、長期的な修繕計画を立てておくことも必要です。そもそも「長期修繕計画」とは、建物の長期的な運用を目指した修繕計画のことを言います。
長期修繕計画の対象期間は10〜30年ほどで、主に分譲マンションを建設する際に作成されるものです。一般的には外壁塗装・防水工事・給排水管工事などが必要な大規模な工事の実施時期に加え、建設にかかる費用が出されます。
長期修繕計画で算出される将来的な費用は、ライフサイクルコストの低減や最適化にかなり役立つことでしょう。
ちなみに通常、長期修繕計画を作成する際は、収支計画も立てられます。大規模修繕費用は「修繕積立金」でまかなわれることが多く、それだけでは必要な修繕ができないこともあるので、一時金の徴収にまつわる条件が設けられる場合があることも覚えておきましょう。

BEMSを構築する

ライフサイクルコストの低減には、BEMSを構築することも大切です。
「BEMS」とは「Building and Energy Management System」の頭文字を取って作られた略語で、IT技術を活用することで業務用ビルでのエネルギー管理の最適化を図るシステムのことを指しています。日本語では「ビル・エネルギー管理システム」という意味があり、近年はオフィスビルや商業ビルによる導入が増えている傾向があるのです。
BEMSは「BAS(Building Automation System)」と「EMS(Energy Management System)」というシステムで構成されています。
中央監視装置で建物の電気・空調・照明・防犯・昇降機などの設備を統合管理する「BAS」と、BASから得られる管理情報を分析する「EMS」により、無駄のない施設管理が可能となります。
BASとEMSの両システムを組み合わせたBEMSでの管理体制が、効率的なメンテナンス計画の立案などにも繋がります。

まとめ

ライフサイクルマネジメントは、ライフサイクルコストの低減なしには実現しないものです。
そのため、施設などを建設する際は「いかにライフサイクルコストを低減できるのか」が重要なポイントとなります。
しかし、まず近年ではなぜライフサイクルマネジメントが重要視されているのかを考える必要があるでしょう。それを理解できなければ、本質的にライフサイクルマネジメントを考慮された施設管理とは言えないのです。
施設管理にライフサイクルマネジメントを即座に活かそうとする姿勢は大切ですが、意味や重要性をしっかりと理解し、どのような対策が必要なのかを詳しく調べた上で実践するようにしてください。

まとめ

*記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。