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事例紹介

約40品目の承継も円滑に ~オープントラスティが一役

太陽ファルマ株式会社 様

2019年11月01日

太陽ホールディングス子会社「太陽ファルマ」は、2017年11月に中外製薬の長期収載品13製品40品目の譲渡契約を締結し、製薬業界に参入した。今年1月には中外から製品承継の手続きが13製品全てで完了し、医療機関への供給を行っている。新規参入企業にとって他社から40品目を引き継ぐ承継業務、承継品目の承認内容管理は、薬事情報の変更など多大な労力が必要になるが、日本ユニシスの製品群を用いてリスクや労力の軽減を図っている。

岩藤薬事部部長(左から2番目)らスタッフ
岩藤薬事部部長(左から2番目)らスタッフ

製薬業界に参入果たす ~法令守り、製品を供給

日本ユニシスが提供する「オープントラスティ承認情報履歴管理サービス」は、各品目の承認書に関する最新状態を確認でき、一部変更承認申請や軽微変更届など必要な薬事手続きで起こる人為的なミスを最小限にし、労力を軽減する。オープントラスティには、膨大な申請履歴を管理し最新状態のバーチャル表示ができる承認情報履歴管理サービスと、誤記の防止や作業時間の大幅な短縮を可能にする申請書作成支援サービスがあり、申請と管理業務の効率化とクオリティの向上を可能にする。現在、太陽ファルマはオープントラスティを活用しつつ、品質保証やサプライチェーンの社内各部門、製造委託先とも協力しながら法令を遵守し、医薬品の安定供給を図っている。

同社は17年8月に設立し、製造販売業の業許可を取得。現在約110人の従業員を抱え、薬事や信頼性保証、安全管理、品質保証、原料調達・在庫管理を行うサプライチェーンなどの各部門が業務を行い、長期収載品の事業展開を進めている。中外から13製品40品目、今月には日本ベーリンガーインゲルハイムから1製品3品目を承継し、14製品43品目を取り扱っている。

現段階でこれら品目は、医薬品製造受託機関(CMO)に医薬品製造をアウトソーシングしている。太陽ファルマは製造販売業者として必要に応じて承継元からCMOに製造の技術移管を行い、製造後は太陽ファルマの物流センターに医薬品が保管され、医薬品卸に配送する。

製薬業界に新規参入する同社にとって最大のミッションが40品目に上る製品承継をスムーズに完了することであった。承継元の企業から各製品の承認書を引き継ぎ、製造所や製造方法の変更など一部変更承認申請や軽微変更届出といった必要な薬事手続きを速やかに行い、製品の品質を担保した形で医療機関に供給を行う。ただ、薬事部門の要員は限られており、製品に関する知識やこれまで取り扱った経験もない43品目の承認変更管理を決められた期間に実施するのは簡単ではない。最も厄介なのが、承継品目の承認書に記載されている最新情報の把握である。

長期収載品では製品によっては上市後に20回にも及ぶ承認書の変更が行われるケースがある。いつどの項目でどんな変更が行われたのかを把握する必要があるが、紙媒体で変更箇所のみの承認書がその都度発行され、全ての書類を突き合わせなければ最新の承認情報を確認できないため、手作業では膨大な時間と労力をかけなければならなかった。

承認書の最新情報、ボタン一つで表示

そこで同社では、日本ユニシスが提供している「OpenApproval」の簡易版として、「オープントラスティ承認情報履歴管理サービス」の導入を検討。ボタン一つで最新の承認情報をバーチャル表示するシステムは煩雑だった承認書の管理が問題を解決できると判断し、導入を決めた。

承認書管理からその後の薬事手続きがスムーズに行えるようになった。承認書の記載内容変更として事後に医薬品医療機器総合機構に届け出る軽微変更届の場合、変更後30日以内に届け出を行わないといけない。システムの活用で最新の承認情報を速やかに確認できるようになり、各品目で必要となる軽微変更作業が効率化されることにより、どのタイミングで何を実施すればよいのか事前に計画を作成し、その計画に沿って薬事手続きができるようになった。

登録した承認情報から販売名やキーワード検索、申請ステータス、成分、製造所等の様々な視点での詳細な検索もできるようになっており、特定の成分が含まれている品目や特定の製造所で生産されている品目など知りたい情報をすぐに表示できるため、業務の生産性も上がったという。GMP適合性調査結果なども登録し、原薬調達先の信頼性を判断できる。

薬事、品質保証、サプライチェーン製造委託企業との意思疎通が円滑になった。品質管理や製造現場への承認情報を周知し、品質保証やサプライチェーンのスタッフが承認内容を把握して業務を行う上でオープントラスティが一役買っている。最新の承認情報をCMOの製造現場における標準業務手順書に反映させ、承認書と製造実態に齟齬がないようにした。

将来は申請書の作成も

昨年4月から今年10月にかけて中外と日本ベーリンガーインゲルハイムからの承継を完了し、当面は医療機関や患者から信頼性を獲得していくのが目標だ。同社では全ての製品を先発品で揃える方針を打ち出している。長期収載品には豊富な安全性情報が蓄積されており、医療現場で引き続き安心して使ってもらえることを目指す。43品目の中には後発品が存在しない品目もあり、安定供給に対する責任を果たしていきたい考えだ。

現在はまだ一部で承継元の在庫製品を供給している製品もあるが、太陽ファルマ製品へと切り替えを進めている。薬事、信頼性保証、品質保証、営業及びサプライチェーンが一体となり、錠剤への印字や包装表示、医薬品卸と協業した医療機関に対する情報提供など各部門で体制を整える。

今後のオープントラスティの活用に向けては、二つの申請書で追加・変更・削除した箇所について色を使って可視化し、差分を比較できる「申請書作成支援サービス」の導入も検討していく。一部変更承認申請や軽微変更届出を行う際に誤記や記入漏れを引き起こさない仕組みは最重要課題となる。今後は自社品目数の増加など業務量の増大が見込まれる中、システム活用によって法令違反のリスクを防ぎ、薬事業務の正確性を向上させていく計画である。

製薬企業として事業を開始した太陽ファルマ。将来的に目指す薬事部門の姿について岩藤道則薬事部部長は、質の高い承認申請書を作成できる専門家の養成をイメージしている。「現在は既存の承認書の一部を書き換える業務が多いが、将来的にはわれわれが新規の承認申請書を作成していけるようになりたい。製造方法のあり方や、製品のライフサイクルマネジメントまで考え、製品の特性を論理的に記載し、誰が見ても同じように理解できる承認書の姿を示すことができるようにしていきたい」と話す。

1日付で親会社の太陽HDは第一三共プロファーマが所有する高槻工場を会社分割により承継した新設会社「太陽ファルマテック」の全株式を取得した。太陽ファルマテックは、80年以上にわたり第一三共グループの西日本主力工場として培った高い技術力と生産能力を有効活用することにより、新規受託の獲得を推進し、国内外製薬企業の多様なニーズに応えることを目指している。太陽ファルマは、グループ会社である太陽ファルマテックと医療・医薬品事業強化に向けた連携を検討している。

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