事例紹介
Microsoft 365導入により行内情報利活用を変革。働き方改革と顧客サービス品質向上を実現。
株式会社紀陽銀行 様
ソリューション、製品・サービス
- SUMMARY
- USER PROFILE
- Microsoft 365 向け導入支援サービス
- お客さまの期待や地域の壁をこえて「銀行をこえる銀行へ」
- 導入の背景と狙い
- 選定理由
- 導入効果
- 今後の展望
- 行内インフラ新システム概要図
2021年02月15日
システム・インフラ基盤老朽化に伴う更改プロジェクトを2018年に立ち上げた紀陽銀行様。
同プロジェクトでは単なるシステム的な刷新だけではなく、クラウドサービスMicrosoft 365導入などによって情報の利活用方法を変革。抜本的な業務改革を成功させた。
株式会社紀陽銀行
事務システム本部長
執行役員
山東 弘之氏
紀陽情報システム株式会社
公共企業システム本部
公共企画開発部
部長代理
辻 宏幸氏
株式会社紀陽銀行
経営企画部
IT戦略室
調査役
吉田 純也氏
SUMMARY
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時間や場所にとらわれない働き方を実現いつでも、どこでも行内の情報が活用できる環境が働き方改革を実現
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リモートコミュニケーションの活用により、顧客サービス品質向上専門的な内容の説明が必要な顧客対応については、Microsoft Teamsを活用し遠隔から専門要員がサポートすることで、どこからでもきめ細かな顧客サービスを提供
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セキュリティを担保しながら業務改革を実行金融機関に必要なセキュリティ要件を確保しながら同時に業務改革に必要な利便性を実現
USER PROFILE
設立:明治28年(1895年)5月2日
資本金:800億96百万円
本社所在地:和歌山県和歌山市本町1丁目35番地
社員数:2,263名(2020年9月末)※出向者を除く
事業内容:預金、貸出、有価証券投資、内国為替、外国為替、国債等の売買、代理業務、その他
本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。なお、事例の掲載内容はお客さまにご了解いただいておりますが、システムの機密事項に言及するような内容については、当社では、ご質問をお受けできませんのでご了解ください。
Microsoft 365 向け導入支援サービス
「Microsoft 365」は、グループウェアサービスやオフィスアプリケーションをセットにしたOffice 365と、最高水準のセキュリティサービスEnterprise Mobility +Security、および法人向けオペレーティングシステムWindows 10 Enterpriseを1つにして提供するソリューションだ。
クラウド環境を活用することで、「いつでも、どこでも、どんなデバイスにも対応」。柔軟で効率的な働き方を実現する。
日本ユニシスの提供するMicrosoft 365向け導入支援サービスは、現行のオンプレミス環境からの切り替えや新たにクラウド環境を利用する場合など、さまざまな環境やニーズに合わせたMicrosoft 365関連サービスを用意。自社導入の経験で得たノウハウと共にオンプレミスからハイブリッドへの構築実績と技術力を活かして、お客さまに最適な環境を提案する。
お客さまの期待や地域の壁をこえて「銀行をこえる銀行へ」
1895年の設立以来、1世紀以上にわたって「より多くの地域の人々に貢献すること」に徹してきた紀陽銀行様。
「地域社会の繁栄に貢献し、地域とともに歩む」ことを経営理念に、さらにお客さまの期待や地域の壁をこえて「銀行をこえる銀行へ」となることが同行の目指す理想像だ。
和歌山県内68店、大阪府内41店、東京都1店、奈良県2店と和歌山県のみならず大阪府下にも営業エリアを拡大し、より多くの地域の繁栄に貢献することを目指している。2020年7月には、中小企業取引特化型店舗として「大阪堂島営業部」を開設。大阪市内での中小企業取引地域No.1店舗となることを目標に据えた。
また、新世代店舗として同年10月に「宮北支店」を移転開設。専任コンシェルジュを常時配置した同行初の総合受付カウンターを設置したり、タブレット端末を活用してお客さま自身で住所変更などの各種お手続きを完了できる「セルフ窓口タブレット“まどのて”」を試行的に設置したりするなど新しい生活様式にも対応しながら、より質の高いサービスを提供していく。
導入の背景と狙い:システム・インフラ基盤更改を機に業務環境を変革
抵のシステム・インフラ基盤(以下、情報基盤)は余程堅牢なものであったとしても、一定の期間を経れば老朽化は避けられない。ただその老朽化対策をどのような方向で行うかは各社の考え方に大きく左右される。
「従来のパソコン基盤やシンクライアント環境がハードウェアの老朽化によって交換が必要であったり、当時使用していたWindows 7およびOffice 2010のサポート期限が迫っていたりしたことが今回の情報基盤更改プロジェクトの直接のきっかけでした」と当時の状況を事務システム本部 事務システム部 リーダー( 現、紀陽情報システム株式会社 公共企業システム本部 公共企画開発部 部長代理)辻宏幸氏は振り返る。
これまで銀行の情報基盤は、極端に閉ざした環境においてしっかりとお客さまのデータを守る、ということを第一に考えて構築されてきた。しかしその結果、さまざまな情報活用上の制限があった。
「従来は携帯電話やパソコンによって情報共有を行ってきましたが、営業店であれば店の中でしかパソコンが使えないため、外出先では携帯電話による通話しか連絡手段がありませんでした」と経営企画部 IT戦略室 調査役 吉田純也氏は指摘する。
単純に老朽化したインフラやサポート切れのソフトウェアなどを更改するという選択肢もあった。
しかしより新しい価値創造に対するチャレンジ、およびそれに向けての投資を推進していた同行では、今回の更改を機にMicrosoft 365を中心とした新しい情報基盤を作り、業務および働き方を大きく改革するという道を選んだ。
事務システム本部長 執行役員 山東弘之氏は「当行の情報基盤は定期的に老朽化対応の更改をしています。前回導入をしていた基盤がちょうど老朽化更改のタイミングでしたが、行員からは外出先でもいろいろなシステムを使えるようにという声も出ていました。インフラ基盤更改のタイミングが端末の更改、携帯電話の更改なども重なり、この機にシステム・インフラ環境を刷新しようということになりました。そして、クラウドサービスMicrosoft 365を導入して、皆さんの働く環境を変えてしまおうということでプロジェクトを立ち上げました」と基盤更改プロジェクトの経緯を説明する。
選定理由:多様かつ高度な要求事項に真正面から応えた提案
先にも少し触れたとおり、今回の案件はシステム・インフラ更改とは言っても、Windows 7の同10への更改やMicrosoft 365の導入、シンクライアントからFAT端末への交換、携帯電話からスマートフォンへの交換などさまざまな要素を含む。
さらに対象ユーザーは関連会社を含む全行員となる大規模なものだ。
金融機関独自の厳格なセキュリティ要件を満たしながら、これほど大規模かつさまざまな更改や入れ替え処理を行うことに関しては、リスクを重視して尻込みするベンダーも多かった。
「今回のプロジェクトはMicrosoft 365を入れるだけではなく、他の周りの情報基盤、例えばパソコンの入れ替えやID管理システム、ファイルサーバーやネットワーク、セキュリティなども対象でした。相当多岐にわたる範囲や対象をRFPに詰め込んで要求していたので、そのすべてに応えられるところは多くありませんでした。また、Microsoft 365の利用を含む当行の要求仕様に対してリスクを懸念するベンダーもいました。しかし、Microsoft 365の導入は主要タスクの1つであるためそれを外すことはできません。我々の要求に応えて、Microsoft 365を中心にしたシステムの更改ができる提案を持って来ていただいたのが日本ユニシスさんでした」(辻氏)
旧基盤の更改時期が迫りつつあった2018年の春頃から話が動き出し、社内決議を取ったり投資総額を決定したりしながら大枠の更改・更新内容を決定。行外でも行内と同様の環境や操作で業務が実施できるようにしよう、というテーマで着手した。
IT戦略室では「どのような働き方を目指すのか?」という業務視点での大枠のフレームを作り、それを事務システム部でベンダーと協議しながら1つ1つシステムとして作り上げていくというプロセスを踏んでいった。しかし業務環境の改善を求めながらも、細心の注意を払わなければならないのはやはり情報セキュリティだ。
「Microsoft 365導入による最も大きな変化は、今まで行内にあったサーバーがクラウド環境上に存在することです。同時に我々の手を離れてMicrosoftがサーバーを管理することになります。一番の課題はそのクラウド環境とセキュアに接続するということ。紀陽銀行のMicrosoft 365は当行からのみ接続するように構築しました。」(山東氏)
導入効果:いつでも・どこでも、場所や時間にとらわれずに行内の情報活用が可能に
Microsoft 365導入によってこれまで使い慣れたメールなどのアプリケーションの操作環境は大きく変化した。以前より使いやすい環境になり、かつ十分なマニュアルも用意されていたがやはり一時的な戸惑いは発生する。事務システム部への問い合わせも相当量発生したが、そのような状態を収拾していったのは意外にも現場における自然発生的な動きだ。
「徐々に新しい環境に慣れてくると、営業店などの現場の中で2人3人若い行員たちが何も言わずにどんどん勝手に使いこなしていくようになってきました。Microsoft 365関連だけではなく、スマートフォンやパソコン環境などをさまざまな面で彼ら彼女らがうまく各現場をリードしてくれたおかげで、新しい環境への周囲の理解も進み、活用に向けての動きも活発になりました。もちろん会社側から改めてそういった役割をお願いしたのではなく、あくまで自然発生的に生まれた流れでした」(山東氏)
2018年から検討を開始し足掛け2年。2020年11月に稼働したSharePointで今回の情報基盤更改プロジェクトは一旦区切りとなる。
Microsoft 365導入に際しては、Outlookやオフィス系ソフトなど順次旧環境から切り替えてきたが、SharePointの立ち上げが1つの山場になるという。
「これまでは他社製のグループウェアを使って行内イントラネットを構築してきました。しかしあくまでパソコン上での動作を前提とした製品なので、例えば緊急連絡を発信してもパソコン環境がなければそもそも見ることすらできません。SharePointによって、場所や端末環境によらずスマートフォンやタブレットからでも情報共有が可能になります。
もちろんお客さま先などに外出中でも、必要な情報にどこからでもアクセスできることになります。
営業店などの現場からすると今までとは見える景色がだいぶ変わるのではないかと思っています」(山東氏)
更改プロジェクトはまだ完了してはいないものの、Microsoft 365導入の効果はすでにさまざまな面で表れている。
まず半年ごとに全店長を本店に集めて各期の経営方針を伝える「全店長会議」を、今回からWeb会議によるライブ配信に切り替えた。資料共有の方法などにまだ工夫の余地はあるものの、まずは経営層自らが自行の業務改革にチャレンジしている。
「このような試みを行うことで、行内各署から『この環境を使えばもっとこれができるのではないか?』などの声が集まってきています。従来『会議は参加者が集まって資料を配布して行うもの』という固定概念がありましたが、もっと違うやり方、より良いやり方があるのではないかということに気づき始めており、積極的に働き方や業務の改革に取り組むことへの意識づけにもなっています」(山東氏)
実際にすでに業務に変化をもたらしつつあるようだ。
「Microsoft 365を導入したことによって『いつでも・どこでも、場所・時間にとらわれずに』行内の情報を取れるようになりました。特に大きく変わったのがスマートフォンの活用です。スマートフォンという手のひらの中に収まる媒体の中で、行内の情報を確認したり、メールを見たり、またMicrosoft Teamsでコミュニケーションを取ったりできるようになったことは、2年前と比べて一番大きく変わったところです。
これが今後、さらなる働き方改革につながっていく大きな第一歩になるのではないかと思っています」(辻氏)
前線の営業店では、お客さまへの価値提供の方法に変化が現れつつある。
「銀行はサービス業ですので、外で1人で仕事をするといってもその範囲は限られています。渉外担当がお客さまを訪問する際、事前に情報を確認する、というような使い方もできるかもしれませんが、それなら銀行を出る前に自席で確認できるはずです。現在、銀行業務では取り扱う商品やサービスの内容が年々増えてきています。コンサルティングやM&Aの相談などそれぞれ行員一人ひとりが身に付けるには現実的に難しい難易度の高いものも多く取り扱っています。各専門部署がサポートしているのですが、従来は各専門部署の要員が各店の担当者に同行してお客さまとお話しすることが必要でした。しかし今回の情報基盤更改やMicrosoft 365導入によってMicrosoft Teamsのテレビ会議を通じて専門スタッフが素早くサポートすることが可能になりました」(山東氏)
これにより営業店での業務効率が向上すると共に、お客さまに対してもより専門的できめ細かなサービスの提供が可能になった。
今後の展望:当面の課題は利用促進。さらなる高みを目指して勘定系のモダナイズにも挑戦
足掛け2年にわたる今回の情報基盤の更改プロジェクトもようやく一区切りを迎えることができそうな段階にまで達した。システム的な視点では一区切りかもしれないが、業務改革の視点ではむしろこれからが本番だ。今後さらなる業務改革を進めるための当面の課題は新環境の活用促進だという。
「現状の一番の課題は、今回刷新した環境の機能をまだまだ100%は生かしきれてはいないこと。プロジェクトを推進した我々の部署でもまだ十分に能力を引き出せているとは言えません。しかし当行内だけでも数千人のユーザーが存在し、さまざまな工夫をしながら活用しているはずです。Microsoft 365を始めとする新しい環境の行内での活用・利用状況を的確にモニタリングして好事例を拾い上げ、ベストプラクティスなどとしてうまく広めていくことで活用を促進していきたいと考えています」(山東氏)
その他にも運用上の課題が徐々に見えてきた。
「Microsoft TeamsのチャットやSharePoint、Outlookメール、そして電話などMicrosoft 365導入によって情報を交換する手段が格段に増えて利便性が向上します。これによりさまざまな種類の情報が色々な手段で行き交うことになります。あまりルールを厳しくし過ぎるつもりはありませんが、よりスムーズで着実な情報交換のためには一度情報発信の方法を整理する必要があると感じています」(吉田氏)
今回の自行内でのMicrosoft 365導入などによる業務改革・情報活用などの経験・知見を生かし、取引先企業さまのIT環境を見直すためのコンサルティングサービスを始めた。自ら試みた業務改革の成果を、地域貢献にも生かそうという考えだ。
「Microsoft 365の使い方はもちろん、紀陽銀行内での情報の利活用方法を例示したり、また反対に注意点などを伝えたりするなど、お客さまの良き相談相手になれればと思っています。地元の企業さまは、IT関連のお悩みがあってもなかなかコンサルティング会社に頼むのは敷居が高い。そんな時にまずはじめの第一歩として当行に気軽にご相談いただけるような窓口にしたいと考えています」(吉田氏)
さらに大きなチャレンジとして、今度は銀行の生命線である勘定系システムのモダナイズも計画している。
「日本ユニシスさんには当行の勘定系システム「BankVision」を長年運営していただいています。将来的にはそのBankVisionをクラウド化。さらにその先、最新技術を取り入れることで、開発を効率化したり堅牢性を向上したりすることを計画しています。同時にオープン化も実現し、ソフトウェア自身をクラウド化することで共同利用を可能にし、地域のプラットフォームのようなバンキングシステムを一緒に作り上げていきたいと思っています」(吉田氏)
「今後銀行の情報をオープン化していく中で、セキュリティを担保しながらさらなる情報活用が進むような状況にもっていきたいと考えています。そのためにさまざまなスタートアップやフィンテック企業ともお付き合いをお持ちの日本ユニシスさんにしっかりサポートいただけることを期待しています」(山東氏)
行内インフラ新システム概要図
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