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エンタープライズシステムの今後とデジタルビジネスへのシフト

エンタープライズシステムの今後とデジタルビジネスへのシフト

保守要員の高齢化やプロダクトサポート停止などを背景に、長期間利用してきたレガシーシステムの保守が困難になる。経営者は、エンタープライズシステムの今後を検討する上で、このレガシーシステムというIT資源を、デジタル化するビジネス環境の中で延命措置をとるのか、あるいは再構築やSaaS利用に切り替え刷新するかなどの判断が求められている。デジタルビジネスでは、バリューチェーンをつなげ、価値創出につながるサービスを生み出し、かつ、効率的に提供するために、クラウドの活用が重要になってくる。経営者は、企業戦略におけるIT資源の把握と位置付けを再定義し、IT部門はさまざまなクラウドサービスの目利きが必要になる。

背景と現在の状況

レガシーシステムの対処として、多くの企業ではクラウド活用を検討し、さらに検証に踏み込んでいる。経営者は、従来から保有するIT資産が今後の戦略に活用できるシステムなのか、付加価値を拡大させるデータを保有しているか、デジタル化するバリューチェーンに対応する必要があるかなどの評価・判断を求められる。これらのシステムの位置付けを明確化し評価・検討する過程において、オンプレミスとクラウドを使い分け、さらには複数のクラウドを活用することが現実解となるケースも多く、ハイブリッドクラウド・マルチクラウドの設計・実装・運用技術に対する要求が高まっている。

3~5年後の姿

経営者は、経営戦略に基づきIT資源の位置付けと再配置方針を決定し、IT投資はデジタルビジネスに集中する。デジタルビジネスの実行においては、開発の“スピードファースト化”が求められ、これを実現するクラウドネイティブな開発手法が広く用いられるようになる。

IT資産の対処

IT部門要員の高齢化やプロダクトのサポートの停止などにより、今後3〜5年内に既存システムの保守が困難になる。このため既存システムを使い続けて現在の業務を維持するか、再構築するか、カスタマイズの自由度を捨ててSaaSを採用するかの経営判断に迫られる。
 
既存のIT資産の位置付けを再定義していく上で、大きく3つのシステムに分類して対処されていくだろう。1つめは、高度な計算や大量のタスクをより効率的に行う「実行型」システムで、IT資産は資源とみなされコスト削減を求められるため、クラウドによるコスト削減や汎用的なSaaS利用が求められる。2つめは、その企業活動の中心であり、複数の業務を連携させ、迅速に実行させるための「統制型」システムで、全体最適と統合が求められる。「統制型」システムは、企業活動の特徴や強みを具現化しているシステムであるため、ビジネス活動の変革を実現するためには、モダナイゼーションが求められ、クラウドで提供されるさまざまなサービスとの連携も求められる。最後に、ECサイトやサプライチェーンの連携、そして設計などのクリエイティブな分野も企業間・組織間の「協働型」システムは、他サービスの連携、知識の共有やデータの流通など、さらなるビジネス上の強化・拡充が求められるとともに、新たな脅威に迅速に対応できるセキュリティ対策が求められる。

レガシーシステムの対処

実行型や統制型の「レガシーシステム」を継続利用するには、サポートが停止したソフトウェアの保守を行う第三者保守サービスや、リバースエンジニアリングによる保守を提供するインテグレーターの活用などがある。これらを活用することで、開発投資の抑制と実績あるシステムの安定稼働が期待できる。これらは永久に提供されるものではないが、企業の中長期的なIT投資における選択肢の1つである。
 
実行型の再構築の選択においては、費用対効果からシステムの機能変更を行わず、ハードウェア・ソフトウェアの更改とそれに伴うアプリケーション改修のみとするマイグレーションの選択も多くなるだろう。このとき、自社のデータセンターではなくクラウドへの移行も選択肢となる。これによりハードウェア更改の対応から解放される。日々の監視・セキュリティパッチ・バックアップなどの運用は引き続き実施する必要があるが、クラウドが提供するサービスを活用し、徐々に改善していくことで、運用負荷の軽減やコスト削減が見込まれる。一方、マイグレーションを行わずにSaaS利用に切り替える場合、現在の会社の仕組みをSaaSに合わせることになる。導入直後は既存システムとの機能や操作性の違いにより現場が混乱する可能性もあるが、一旦切り替えてしまえば、ITインフラの維持が不要になるだけでなく、AI技術による需要予測・行動分析などSaaSが提供する機能を活用することで、顧客提供価値の向上も見込まれる。

IT部門に求められる役割

これまでクラウドはプライベート接続で使えるサービスが限定されており、セキュリティ上の観点から採用を敬遠するケースもあったが、今後はプライベート接続で利用できるサービスがリリースされ、その懸念が解消する。今や企業活動に欠かせないメールを中心としたコミュニケーション関連のシステムは、クラウド移行は当たり前となり、本業の中核となる基幹系システムも、ビジネスのデジタル化に対応すべくモダナイゼーションが進められ、クラウドに移行する企業が多く現れる。デジタルに対応したバリューチェーンが求められ、自社の持つデータの活用、外部データとの連携、他社サービスとの連携インターフェイスやこれらを実現するためのセキュリティ対策の必要性も高まる。このクラウド移行に伴い、IT部門要員は物理サーバ保守の負担から解放される一方で、クラウドが提供するサービスの利用技術、運用技術の活用が求められ、ビジネスに対する貢献も強く求められるようになる。

デジタルビジネス創出

デジタルビジネスは、タイムリーに新サービスや新商品を提供し、新たな価値を創出し続ける必要がある。これらのシステムを開発・リリースし、市場やエンドユーザーの反応を見て改善、廃棄する一連のタスクにおいては、“スピード”と“スモールスタート”が重要である。これを実現する手段として、クラウドベンダーから提供されるさまざまなサービスの活用が考えられる。エンタープライズシステムは協働型システムに対する投資が増え、開発技術においては移植性を重視した開発手法が進み、コンテナ技術がさらに進化していく。また、必要に応じて複数のクラウドやオンプレミスなど場所を選ばず動かせる環境が整い、マルチクラウドやハイブリッドクラウド環境での稼働が可能になってくる。運用管理においては、マネージドサービスの利用が進み、クラウド環境の自動運用管理技術が普及していく。また、自動運用管理においてもAI技術が活用され、データ分析技術などによる障害予兆検知や自動復旧などの機能が織り込まれていく。IT部門は、続々とリリースされるクラウド上の新サービスの目利きをし、要件から適切なサービスを選定し、実際のビジネスにつなげられる技術力が必要とされると同時に、ビジネススピードと経営リスクの担保を考慮したシステムを実現するスキルも求められるようになる。

デジタルビジネス創出
デジタルビジネス創出

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