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IT駆動型ビジネスの拡大

IT駆動型ビジネスへの取り組みが拡大し、多くの企業の主力事業になっている。ITは効率化のためのツールから、ビジネス遂行のためのプラットフォームに変化している。IT駆動型ビジネスは業界構造を変化させ、活性化するとともに、混沌ももたらしている。企業はIT駆動型ビジネスのために、IT組織の形態や利用するIT技術を変化させている。

スマート・テクノロジーによる実世界の自動化

背景と現在の状況

現在、各業界の先進的な企業では、ITの活用を中核に据えた新規ビジネスの創出や業務の改革への取り組みが盛んである。たとえば、FinTechに代表される○○○Techと呼ばれるものなどである。新事業のための組織の設立、社内ベンチャー制度などの社内の取り組みだけでなく、スタートアップ企業への支援や投資、他社との技術提携など、外部の力を利用してオープンイノベーションを成功させるための活動も行われている。
このようなITを使って各業界に変革を起こそうという試みは、以前から経済産業省などが中心となって行われてきた*1 が、最近、急速に関心が高まってきているのは、米国の新興企業の成功の影響が大きい。また、ビッグデータ、クラウド、スマートデバイスといった新しい技術や高速の無線ネットワークを活用できる環境が整ったことも一因である。
米国の新興企業や国内の先進的な企業のこのような動きに対し、まだ行動を起こしていない多くの企業でも、時代の変化に対応していかなければならないという認識が高まってきている。

*1 経済産業省による「IT融合」など

3〜5年後の姿

IT駆動型ビジネスへの取り組みが拡大することで、業界構造が変化する一方、混沌がもたらされている。企業はIT駆動型ビジネスのために、IT組織の形態や利用するIT技術を変化させている。

IT駆動型ビジネスによってもたらされる変化と混沌

ITの活用を中核に据えたIT駆動型のビジネスの重要性が広く認識されるようになり、一部の先進的な企業だけでなく、多くの企業において、IT駆動型ビジネスへの取り組みが広く・深くなり、主力事業へと変化を遂げている。ITはビジネスを効率化するためのツールというポジションから、ビジネス遂行のためのプラットフォームへと変化している。

  • コアビジネスのIT化
    多くの業界で、多くの企業が自社の本業(コアビジネス)のIT化を進めている。元々、IT化が進んでいる金融業界が、その急先鋒となっている。ITによって、投資のアドバイスやパーソナライズされた個人向けの各種サービスが提供されている。融資審査、コールセンター業務、店舗のフロント業務も、ITによって、その多くの部分が自動化している。また、各種保険では、被保険者の詳細なプロファイリング(生命保険におけるDNA情報や自動車保険における運転操作情報など)により、それにあった保険料が設定されるようになっている。
    その他の業界でもコアビジネスのIT化が進んでいる。たとえば、製造業では、先行している建設機械を見習って、IoTによる管理システムが広く導入されている。自動運転車の開発により、自動車のスマートデバイス化が更に進んでいる。教育業界では、オンライン教育ビジネス、受験用教育コンテンツビジネス、教員情報共有コミュニティ、宿題課題管理システムなどが立ち上がっている。

  • 他業界への参入
    IT駆動型ビジネスに取り組むことはIT関連技術の理解を深め、ビジネスを高効率で行うことになるため、結果として、従来のビジネス領域や技術領域の範囲を広げることにつながる。IT駆動型ビジネスに積極的な企業は自社のビジネス範囲を広げ、従来の業界の境界線を越えることになる。
    たとえば、IT駆動型ビジネスに積極的な製造業企業はIoTや人工知能の技術を身に付け、IT業界との境界を不明確にし、IT駆動型ビジネスに積極的な流通業企業は銀行業や決済への本格参入をし、金融業界との境界線を越えている。
    また、ビジネスのIT化に伴い、各業界への参入障壁が変化するため、スタートアップ企業等の参入の可能性が高まる。

  • 業界構造の破壊的変革
    デジタルカメラの出現によって、フィルム業界はほぼ壊滅し、カメラ業界もフィルムカメラからデジタルカメラへのシフトを余儀なくされた。かつて、米国では、オンライン書店amazon.comの出現によって、多くの書店(実店舗)が消えていった。いくつかの国では、スマートフォンアプリを使った白タク呼び出しサービスUberによって、タクシー業界が壊滅的な打撃を受けた。
    これらの例のように、IT駆動型ビジネスの参入によって、業界構造がドラスティックに変革する分野・業界がいくつか出てくる。たとえば、雑誌や新聞などの紙を使ったマスメディアがそうである。オンラインのマスメディアの台頭によって、出版、印刷、製紙業界に大きな影響が出る。自動車業界では、自動運転や電気自動車・燃料電池車の影響が出始めている。
    また、新技術によって、新たな業界が形成されたり、業界が拡大したりする場合もある。海外では、ドローンやVR(仮想現実)によって、そのようなポジティブな変化が起こっている。

このように、IT駆動型ビジネスは業界構造を変化させ、活性化をもたらす。それと同時に、大いなる混沌ももたらす。

IT駆動型ビジネスを支える組織形態

IT駆動型ビジネスのためのシステムを開発・運用していくには、スピード感、システムとビジネスのバランス感覚、業務への関与度合い等が従来と大きく異なるため、多くの企業において従来のIT組織の役割では対応できず、以下のいずれかの対応を取るようになる。

  • IT駆動型ビジネスのための新組織
    既存のIT組織で新たな期待に対応するのは難しいため、既存のIT組織とは別に新たな要員による新たなIT組織を設立し、新たな期待に対応する。オープンイノベーションを積極的に推進する。

  • 事業部門直轄のIT組織の設立
    上記と同様の理由により、プロフィット業務や新規事業を担当する事業部門に新たなIT組織を設立する。ビジネスを優先して、スピード感を持たせるのに有効である。

  • 社外の専門企業の利用
    同様の理由で、自社で新たな期待に対応せずに、社外の専門企業を利用する。即効性のある対応だが、自社に力は付かないため、アウトソーシングし続ける必要がある。

  • 海外調査研究組織
    世界最先端の研究動向の把握やスタートアップ企業との関係強化を目的として、シリコンバレー等に調査研究組織を設立する。従来型企業とスタートアップ企業をマッチングするプログラム等を活用する。

IT駆動型ビジネスに求められるテクノロジ

IT駆動型ビジネスのためのシステムでは、クラウド、ビッグデータ、スマートデバイスなどのテクノロジに加え、ビジネス(サービス)重視・スピード重視のための以下のテクノロジが使われるようになる。

  • UXとサービスデザイン
    IT駆動型ビジネスのためのシステムでは、単に必要機能が提供されているだけでなく、利用者の体験価値を向上させることが重要なため、UXデザインやサービス全体のデザインが積極的に採用されるようになる。

  • アジャイル開発
    要求を徐々に広げ、提供機能を段階的に追加していくアジャイル開発は、新規事業立ち上げの際によくとられるリーンスタートアップ的なアプローチと相性がよいため、その採用が広がる。多くの場合、新規事業とITが綿密に関係するため、開発者がそのビジネスに深く関わることが求められる。

  • API中心開発
    スピード開発やAPIを介した他社との協業のために、外部のサービス(API)を積極的に利用するようになる。また、API公開による自社サービスの普及・拡販も行われる。

  • 差別化アルゴリズム
    提供するサービスの価値向上・差別化のために、データを活用したコンテキストアウェアなサービスやAIを活用した予見的サービスのためのアルゴリズムが採用されるようになる。

*Technology Foresightは、BIPROGY株式会社の登録商標です。

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