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スマート・エブリシングによる仕事/産業/社会/生活の変化

日常生活で使うIT機器としてモバイル(スマートフォン、タブレット等)が定着し、ウェアラブル機器*1の普及が進む。また設備や場所にITが埋め込まれシステム化されることにより、それらから得られたデータを集約・整理し、利用者の特性に合わせた形で入手して仕事や生活に役立てられるようになる。さらに自動車運転や危険な作業に加えて、ナレッジワーカーの仕事の一部をスマート・マシン*2が代行・支援できるようになる。これらにより仕事と生活が、便利・快適・安全・安心を増すように変化する。また産業と社会の運営が、より効率的・効果的になり、環境負荷が軽減される。

図1 すべてがスマートになり仕事/産業/社会/生活が変化する

図1 すべてがスマートになり仕事/産業/社会/生活が変化する

*1 ウェアラブル機器とはユーザーの体に装着した状態で利用するIT機器であり、メガネ型の「Google Glass」や、腕時計型の「GALAXY Gear」等がある
*2 ここでは状況に応じた判断が行えるシステム、インテリジェントなパーソナル・アシスタント、スマート・アドバイザー(IBM Watsonなど)、先進のグローバル産業システム、また初期の自律走行車などの総称として幅広く捉えている

背景と現在の状況

スマートフォンやタブレットが日常生活で肌身離さず使うIT機器として定着する中、眼鏡、腕時計、腕輪等の形をしたウェアラブル機器への関心が高まり、活用事例が現れつつある。人々を取り巻く環境に眼を移すと交通・エネルギー・水道等の社会基盤や公共の場所、企業のオフィス・設備・装置、住宅内の設備・家電等にIT機器が埋め込まれ、一部ではネットワーク接続が始まっている。また社会基盤を支えるITについて様々な実証実験が行われ、一部は実用化・商用化段階まで進み、現場での活用が広がり始めている。さらに人々の活動・仕事を見ると、自動車運転やナレッジワーカーの仕事の一部をスマート・マシンが代行・支援する実証実験が進められている。

2013年5月のマイナンバー(社会保障・税番号制度)法成立、7月のTPP交渉への参加、9月の2020年東京オリンピック開催決定といった社会を変える動きが相次いでおり、社会基盤への影響が予想される。

3〜5年後の姿

ウェアラブル機器が普及するとともに、スマートフォン/タブレット/ウェアラブル機器が、社会基盤等に埋め込まれたITや企業情報システム、さらにはスマート・マシンと連携して動作するようになる。東京オリンピックを間近に控え、社会基盤を支えるITは個々のシステムが単独で機能するのではなく、クラウドとネットワークを介したスマートフォン/タブレット/ウェアラブル機器との連携により、種々の状況に応じてコントロールできる柔軟なインフラとなっていく。その結果、人々の仕事や生活における便利・快適・安全・安心が向上する。また産業と社会の運営が、より効率的・効果的になり、環境負荷が軽減される。

ウェアラブル機器の普及

スマートフォンやタブレットに加えて、眼鏡、腕時計、腕輪等の形をしたウェアラブル機器の普及が進む。ビジネス用途では、「熟練者が行う必要があった仕事を不慣れな人でも代行可能にする」、「客室乗務員の乗客サービスや設備・機器の点検・修理の品質・効率を向上する」といった目的で眼鏡、腕時計の形をしたウェアラブル機器が活用されるようになる。

コンシューマ用途では、ファッションとしての利用が注目を集める一方、生体情報の常時モニタリングがスポーツ分野と医療・ヘルスケア分野で着実に広がっている。

スポーツ分野では腕輪型のウェアラブル機器が普及し、たとえばマラソン中の心拍数等の測定による過負荷防止に使われる。

医療・ヘルスケア分野では腕輪型等様々な形のウェアラブル機器が普及し、高血圧・糖尿病等の慢性病患者の体調管理や要介護者の車椅子・ベッドからの転落検知等に用いられる。
また心拍数や心電波形といった生体情報を取得できる機能繊維素材を組み込んだ衣料の実用化がスポーツやヘルスケア分野で進む。

環境に埋め込まれたITによる仕事と産業/社会の変化

人々を取り巻く環境に広くIT機器が埋め込まれるとともにシステム化され、豊富なデータが利用可能になる。その結果、時間/場所に制約されず仕事ができるようになるのみならず、仕事がより便利・快適・安全・安心になり、また産業と社会の運営が、より効率的・効果的になり、環境負荷が軽減される。

設備や場所に埋め込まれたITとビッグデータ処理技術、さらにモバイル/ウェアラブルの合わせ技により、現場の多種多様な状況データを眼の前の仕事の次のアクションに役立つように絞り込んで従業員に提供することが可能になる。その期待効果の例として、現場の技術者に適時・的確な情報を提供することで、技術者のスキルに依存せず高品質な仕事を効率良く実施できるようになり、故障修理の手戻りを削減できる。

産業と社会の運営でITの効果が顕著なのはオフィス・住宅、環境・エネルギー、交通・物流の各分野である。たとえばBEMSやHEMSは個々のビルや住宅の管理と制御から、排煙や消火などの防災制御、防犯監視、複数のビル群の一括監視など機能が拡大している。またEV(Electric Vehicle)、PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)の増加に伴い、充電スタンドが全国に展開され、位置情報や空き情報が簡便に入手できるようになる。さらにデータセンターでは再生可能エネルギーや自然冷却の利用等が進む。交通・物流分野では、道路・橋梁・トンネル等をセンサーで監視することで、維持管理がより効率的・効果的になり、予防保守が適切に行えるようになる。またオープンデータ*3やライブデータ(渋滞情報など)の活用により、交通・物流の効率が向上するとともに事故防止や燃費向上が実現する。

*3 行政機関が保有する公共データを、利用しやすい形で公開することを指すことが多いが、ここでは企業が保有するデータの公開まで広げて考える

スマート・マシンによる仕事の変化

自動車運転や危険な作業に加えて、ナレッジワーカーが専門知識を活用して行う仕事の一部をスマート・マシンが代行・支援できるようになる。

自動車運転、危険な作業、反復する煩雑な仕事のスマート・マシンによる代行・支援は、ケースバイケースで実用化に向けた開発が進む。自動車運転はドライバーのミス防止から自律走行の比重を高める方向で進む一方、危険な作業を代行するロボットの研究開発と実用化は原発廃炉作業を契機に加速する。コンタクトセンターでの顧客問合せ対応を代行する仮想顧客サービス・エージェントは、オフショア等と品質/コストを競争しつつ開発されていく。

人工知能型スマート・マシンは、クイズ番組のチャンピオンへの挑戦や東大入試への挑戦といった実証実験段階から、人間による英文校正ログの機械学習による英文自動校正ソフトの開発等を経て、限定された適用領域での実用化へと進んでいく。たとえばITに関する客先提案や商品企画のための市場・技術動向調査の際に、膨大なインプット情報から有益そうなもの(例:対象客先や市場セグメントと共通な課題に取り組んだ事例)を絞り込む作業を代行させることができる。

さらにウェアラブル機器と機械学習の合わせ技により、匠の技の伝承・発展が可能になり、産業・文化の発展に貢献する。

環境に埋め込まれたITによる生活の変化

社会基盤、公共施設、住宅内の設備・家電等、人々を取り巻く環境にIT機器が埋め込まれシステム化されるとともにITと関連制度(例:マイナンバー)が結びついた形で社会基盤に深く組み込まれる。さらに日常生活で肌身離さず使うIT機器を通じて適時・的確な情報が入手できるようになるため、日常生活から娯楽/行楽/観光まで、あらゆる場面で便利・快適・安全・安心が向上する。

医療・ヘルスケアにおいては、各種センサーと通信の高速化により、いつでも、どこでも医療サービスを受けることが可能になっていく。たとえば、高画質カメラと通信の高速化により、遠隔地から対面と同レベルの診察が行えるようになる。また3D/4K*4などの先進の画像技術や画像解析技術と機械学習の組合せにより、がん等の早期発見が当たり前になっていく。さらにウェアラブル機器による生体情報の常時モニタリングを通じた健康管理・発症/要介護予防が普及し、すべての年齢層で健康水準が向上するとともに高齢者の健康長寿が実現されていく。介護従事者に目を転じると、介護/リバビリ支援ロボットスーツ等が実用化されていき、障がい者や高齢者を介護する際の肉体的負担を軽減される。

住民・行政サービスにおいては、マイナンバー(社会保障・税番号制度)やマイポータルの情報連携基盤が整備され、社会保障・税分野で活用されるだけでなく、その他の行政サービス、医療、民間サービスなどの分野にもその利用が一部開放され、災害対応・教育・文化でのICT利活用が加速していく。医療では、マイナンバーと診療情報を組み合わせることで、重複した検査の削減や医療機関を跨る診療情報の共有、より正確な投薬履歴の記録が可能となる。災害対応ではICTの利活用により初動から応急期における情報共有が適切に行われることで、自治体による適時・的確な住民サポートが実現され、避難指示などの情報提供や避難所の運営や物資の配布などが適切に行われていく。教育・文化では、画像技術の向上と通信の高速化により臨場感あふれるオンライン/インタラクティブ学習システムが時間や場所を問わず利用できるようになる。著作権保護を行いながら、電子書籍等のデジタルコンテンツをインターネット上で借りることができる電子図書館が整備され、24時間いつでもどこでも利用可能になる自治体が増加していく。

日常生活においては、たとえばベビーカーに乳幼児を乗せて外出する際に目的地までの楽で安心な道案内情報が提供されるようになる。自動車の安全技術の進歩により駐車場での停止発進事故に乳幼児が巻き込まれるリスクも軽減される。さらに自動車運転支援が実用化されつつあるため、買物や通院等の用事を便利・快適・安全・安心に済ませられるようになる。その結果、たとえば不慣れな外出先でも道に迷わずに済み、また過疎地の単身高齢者が安心して生活できるようになる。TPP参加による影響対応に目を転じると、たとえば食品の原産地や輸送中の温度・湿度等のセンサー監視情報が、クラウド経由で入手可能になるため、供給側は付加価値を向上でき、消費者は一層安全・安心な食品を購入できるようになる。

娯楽/行楽/観光においては、たとえば祭、スポーツ、花火大会等のイベント会場において地形・施設構造・混雑状況にもとづいて来場者の特性(例:幼児を含む4人家族)に応じた道案内情報が提供されるようになる。また2020年東京オリンピックに向けて外国人観光客に訪問先の名所・歴史・混雑状況や道案内情報が母国語で提供されるようになる。すなわち、多くの場所で、観光客がワイヤレス高速通信を無料で利用できるようになり、ソーシャルメディアを通して観光に関する様々な情報が共有される。また、GPSやAR(拡張現実)技術を利用した観光に関するスマートフォン/タブレット/ウェアラブル機器向けサイトやアプリが数多く提供される。

*4 3Dは3次元表示技術、4Kは横4,000×縦2,000前後(フルハイビジョンの約4倍)の解像度に対応した映像に対する総称である。医療分野では外科手術、画像診断、医療業務(医師教育)の分野で取り組みが進んでいる

*Technology Foresightsは、BIPROGY株式会社の登録商標です。

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