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モバイルファースト

スマートフォンやタブレット関連技術が急速に発展、無線ネットワークの拡大と高速化が進んでいく。その結果、スマートフォンやタブレットの積極的な採用が進み、パーソナルクラウド相当の企業向けサービスが広く普及していく。これをモバイルファーストと呼ぶ。また社内コミュニケーション手段の進化やスマートフォンやタブレットでのビデオ会議が広く普及していく。

図1 モバイルファースト

図1 モバイルファースト

背景と現在の状況

スマートフォンが急速に普及している。スマートフォンの販売台数は増加傾向が続き、普及率は2割を超えさらに増加している。このため、企業のWebサイトのスマートフォン対応が加速している。例えば、全日空はWebサイトのスマートフォン対応を本格化した。同社のWebサイト利用者の中心はスマートフォンに移っているため、マウスやキーボードが前提ではなく、指での操作を前提としたWebサイトの開発を最優先に位置づけている。

私的利用におけるスマートフォンの普及が進む一方で、企業においては従来型携帯電話が主流であり、スマートフォンやタブレットの配布は始まったばかりである。配布が進まないため、個人所有端末や個人契約アプリケーション(パーソナルクラウド)の使用が禁止されているにも関わらず、仕事を円滑に進めるために業務利用する従業員が水面下で増えている。

また、ソーシャルメディアの企業での活用が始まっている。

3〜5年後の姿

多くの企業では率先してスマートフォンやタブレットを活用している。LTE-Advanced Evolution*1の登場により通信がより高速化されるためデータが手元にあるかクラウドにあるかを意識しなくなっていく。

*1 LTE-Advanced Evolution :第4世代移動通信システム。LTE、LTE-Advancedの後継規格である

モバイルファースト

企業が業務で使用する端末の第一候補がPCや従来型携帯電話からスマートフォンやタブレットになっていく。企業内でのスマートフォンやタブレットの普及に伴い、アプリケーション開発やWebサイト構築もスマートフォンやタブレット向けが優先される。iOS/Andorid / Windows Phone / Firefox OS / Tizenなど複数のOSとHTML5の開発環境と開発技術が進化している。これらの動きをモバイルファーストと呼ぶ。

パーソナルクラウド相当の企業向けサービスが広く普及

従来、データを持ち出すときはノートPCのハードディスクドライブやUSBメモリなどにデータを保存して持ち歩いていたため、セキュリティ事故の懸念とデータの一元性と保全性の問題があった。企業内のファイル共有ではVPNなどにより企業内ネットワークに接続する必要があり運用が煩雑であった。また、パーソナルクラウドでは、オンラインストレージサービスのDropboxやドキュメント管理システムのEvernoteなどのサービスが普及している。

これからは、パーソナルクラウド相当のサービス(例えば、AirTriQ*2サービス)が企業向けにも広く普及することで、セキュリティやデータに関する懸念が解消されて、利便性が向上していく。そのため、場所を選ばず業務を行うことが容易になっていく。

*2 AirTriQ:ユニアデックス株式会社が提供する法人向けオンラインストレージサービス

ユーザインターフェースの変化

従来、企業で使われていた業務端末のユーザインターフェースはPCに最適化されていた。 これからは、企業におけるモバイルファーストが進むことと、スマートフォンやタブレットに最適化されたパーソナルクラウド相当の企業向けサービスが広く普及するため、ユーザインターフェースは変化していく。

入力はキーボードとマウスから、タッチによるフリック/ピンチイン/ピンチアウト*3などによる操作となり、表示はタイルとモダンブラウザ*4になっていく。

*3 フリック/ピンチイン/ピンチアウト:タッチによる操作の一例。それぞれの操作は、指を「はらう」ように指をスライドしながらすぐ離す、2本の指で画面を押さえ摘むように指を近づける、逆に指を遠ざけていくこと
*4 モダンブラウザ:Web標準技術に十分に準拠したWebブラウザの総称である。表示が崩れたり機能しなかったりする可能性が低い

社内コミュニケーション手段の進化

従来、メールは全ての企業に普及しているが、グループ内での短いメッセージのやり取りなど、特定の目的で情報交換するには履歴管理機能や即時性の不足と情報量の過多などの問題点を抱えていた。

これからは、企業において、この問題点を解消するコミュニケーション手段として、Salesforce Chatterのような社内ソーシャルメディアやMicrosoft Lyncのような統合コミュニケーション基盤が広く普及し、従来から使用しているメールと共に、時間・場所・目的に応じた使い分けが行われていく。

スマートフォンやタブレットでのビデオ会議が広く普及

従来、複数人が参加するビデオ会議は、会議室に設置された機器とPCで行われていた。

これからは、スマートフォンやタブレットのハードウェア性能向上がさらに進む。また、移動体通信はLTE-Advanced Evolutionの登場により高速化されて、動画の転送がストレスなく実現されていく。そのため、複数人が参加するビデオ会議が場所を選ばず実施することが可能になり広く普及していく。ビデオ会議が普及することにより、それを支援する画面分割やホワイトボード共有などのソフトウェアが活用されていく。

参考文献

  1. 島津忠承、「[CD 2013]「パソコン用サイトをタブレット前提に作り替える」、ANAの前田氏」、ITpro、日経BP社、2013年2月28日

  2. 高槻芳、「私物解禁! 今どきのBYOD 公私混同のススメ」、日経コンピュータ、日経BP社、2012年9月13日号、P28〜45

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