[試合レポートin 高岡大会] 前日のトナミ戦の敗戦から一夜明け、晴れやかな表情でコートに現れた選手団。 NTT東日本との最終戦は、NTT東日本が勝てば全勝で10年ぶりの優勝旗奪還、日本ユニシスが勝てば6勝1敗で3チームが並ぶものの取得ゲーム率で2連覇達成。いずれにせよ、勝ったほうが優勝という分かりやすい勝負だ。 日本ユニシスはダブルスをリーグ前半のペアである仲尾・坂本組、福井・池田組に戻して挑む。 シングルスの中西選手もあわせ、『どこでもポイントが取れる』というのは中條監督の談。 まずは仲尾・坂本組対川口・川前組の対戦で、最終決戦の幕が開く。 ●第1複: いきなり相手の返球を読みきってのクロスドライブを仲尾選手が決めて先取点。 坂本選手もバックハンドからのドライブで前衛をパスしてノータッチで続き、前日のショックをすっかり振り払ったようだ。そのまま4-0として、さらにショートサービスがエースとなって5-0と見事なスタートダッシュを決める。上げずにどんどん前に出て行く本来のプレースタイルを存分に発揮すると、 東日本ペアもその勢いに呑まれてミスを続け、元気がなくなっていく。 『とにかく川口・川前組とやりたかった』と語る仲尾選手が、10点目も川前選手の配球を完全に読んで決めて8点もの差をつける。 1本サービスでミスが出るも、その表情は明るい。 序盤ながら完全に相手を振り切ってしまおうとするユニシスペアの狙いに、東日本ペアも必死に抵抗して5点まで取られるが、レシーブのサイドアウトをしっかり見送って11-5。 インターバル後も、守りから果敢に攻めに転じようとする仕掛けでミスを誘って12-5とする。 川口選手のスマッシュで1点を取られても、坂本選手がコースを突いたスマッシュでネット前へのチャンスボールを引き出し、それを自ら決めて13点目を奪う。 仲尾選手もドライブ&プッシュで攻め立てて14点目を得る。ロングサービスで相手の予測を外して15点が入ると、続く2点は東日本ペアがミス。11点もの大差をつけ、第1ダブルスの第1ゲームにしてすでに団体戦の流れを形づくってしまう。坂本選手のアレーを狙ったスマッシュで19点目を取った後、20点目は坂本選手がドロップでチャンスメーク。見事に崩れたところを仲尾選手が決めて20-9。 1点を失った後の2度目の機会に、中央へのサービスプッシュでふわりと返ったところを仲尾選手が決め、21-10。 ダブルスコアで第1ゲームを先制する。 2ゲーム目は坂本選手がドライブをネットインさせて先取点を取った後、川前選手、川口選手と2本のスマッシュを決められて1-2となるが すぐさま追いつき、坂本選手、仲尾選手が川口選手の懐を執拗に攻めるなどして追い越していく。東日本も川前選手の威力あるショットで4-4と追いすがるが、ドライブ戦から坂本選手のスマッシュが火を吹き突き放す。得点する度に大きな声を出していく日本ユニシス。 まとまりのある応援も後押しし、大きな盛り上がりを見せる。 9-5から2本ミスが続くが、仲尾選手が川前選手の正面にスマッシュを貫いて流れを引き戻すと、川前選手のワイパーショットのミスを誘って11-7。 2点を取り合った後、13-9から川前選手にプレッシャーをかけて15-9とし、高い打点からの坂本選手のスマッシュを軸にさらに2点を追加する。 懐深いレシーブで相手を走らせてミスを誘い18点目。 川口選手の力強いドライブに10点目を失うが、川前選手のサービスはネットにかかって19-10。 どうにか挽回しようとする川前選手の攻撃が成功し19-11となるが、仲尾選手がサービスプッシュでエースを奪ってとうとうマッチポイント。最後は攻めの気持ちで守った速いレシーブに、川口選手が叩こうとするもフレームショットとなってシャトルはネットへ。 21-10、21-11という申し分のないスコアで、仲尾・坂本組が先鋒としての役割を存分に果たした。
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仲尾(右)・坂本組 |
仲尾(右)・坂本組 |
●単: 続いては日本代表同士の対決。日本ユニシスは不動のシングルス中西選手。対する佐伯選手はルーキーながら今期5戦5勝と結果を出している。 全日本実業団決勝では佐伯選手、11月の全日本総合では中西選手と星を分け合った二人。日本リーグ優勝を賭けるこの一戦で、今期の決着をつける。 中西選手がきれいなストレートスマッシュでエースを奪って試合開始。佐伯選手もヘアピンで対抗する。 全日本実業団で敗れた際には、ネットを制されてロブを上げ、それをスマッシュで決められるパターンが目立った。 佐伯選手の長身から繰り出す鋭い攻撃を防ぐために、ネットを制し、打たれたスマッシュも決めさせないカバー力が非常に重要になる。 オンライン上にスマッシュを決め3-5とし、続く2ラリーは見事な心理作戦。佐伯選手にスマッシュを打たせておいてきっちりとレシーブし、 スマッシュが効かないというところを印象付ける。目先を変えようとした佐伯選手のクリアはアウトとなり、5-5。 続いてはラリーの中で鋭く攻撃を決められるが、次のロングサービスにお返しのジャンプスマッシュ。 団体戦として後がない佐伯選手も7、8、9、10点と先行するが、その都度中西選手も攻めを主体にしっかりついて行き10-10。 ここでネット際の勝負をうまくプッシュで制して11点目を取り、ベンチへガッツポーズ!続けて佐伯選手のヘアピンミスで12-10とする。佐伯選手もクロススマッシュ〜クロスプッシュなどのダイナミックな攻撃で追い、中西選手もスマッシュのロングレシーブやフェイントをかけたロブでチャンスをつくっては小気味良くスマッシュを決めていく。 14-11から同点に追いつかれるが、ドライブで1本離し、またネットに先に入って球を上げさせてからの攻撃を展開し、決して逆転は許さない。 前への意識を高く持ち、18-17での佐伯選手のショートサービスにプッシュし19点、そしてセンターへのヘアピンを佐伯選手が返しきれずに20点を奪う中西選手。 声を上げて自らを鼓舞しながら集中力を高めていく。 だが早く勝利したい気持ちが災いしたか3本ミスが続いて20-20。さらにアタックロブをカットされて20-21と、逆にゲームポイントを奪われるピンチ。 しかしここでも縮こまらずに普段どおりにプレーする中西選手は、先ほどのお返しとばかりにアタックロブをカットして追いつく。 すると、佐伯選手がカットスマッシュをサイドに外してしまい22-21。 次はセンター付近にオープンにロブを上げてしまうが、気負う佐伯選手が再びスマッシュをサイドアウト。 23-21で日本ユニシスが優勝まで1ゲームと王手をかける。 第2ゲーム、積極的に打ち込む両選手。力が入ったのか互いに多少のミスがあるが、主導権を握るべく気合を入れて戦っていく。 3-3、4-4。ここで中西選手が佐伯選手の足元にスマッシュを決め、さらにネットインヘアピンで6点まで取るが、佐伯選手も中西選手のフェイントのかかったロブによくついていき、チャンスにカットスマッシュで攻撃し6-5。 攻めようとする佐伯選手の2本の攻撃を、負けじとロングレシーブで大きくあおる中西選手。返ってきたクリアーを、マレーシアの英雄オンユーホックばりに半身からタイミング早く打ち込みエースを奪う。 一進一退の攻防が続くが、11点目を先に取ったのは佐伯選手。だが中西選手も9点の位置でピタリとマークする。 そしてインターバル後、1点を取り合い10-12となったところから中西選手がさらにギアを上げる。 佐伯選手のフォアからのクロススマッシュを、体全体で正確にネット際へコントロールすると、佐伯選手もどうにか届きはしたものの返球までには至らない。 続いては攻めさせてサイドアウトを誘う粘り勝ち、さらにはハイバックからのカットを読んで前で決めて逆転。 体勢を崩しながらも守りきり、攻めに転じてのクロススマッシュを決めると、ラケットを手から離してガッツポーズする中西選手。 15点目は佐伯選手のスマッシュがまたもサイドアウトとなって、15-12。 一段と動きのスピードを上げてつくったチャンスをストレートに決めて16点、ボディを突いて17点。 サービスミスで相手に13点目を献上するが、佐伯選手のヘアピンが白帯に跳ね返されて中西選手に18点目が入る。 続く佐伯選手のネットタッチかに思えたプレーは、セーフとなり18-14となるが、 フェイントをかけたロブで佐伯選手に後ろを向かせ、13点目と同じくハイバックカットを豪快に叩いて19点目を手にする。 佐伯選手がショートサービスへのヘアピンをミスし、とうとう日本リーグ優勝ポイントをつかむ中西選手。 最初の機会はスマッシュ&プッシュが僅かにエンドを割ってしまうが、迎えた2度目のチャンス、佐伯選手が放った渾身のクロススマッシュがアウト! 噛みしめるように両手を掲げる中西選手が、ベンチを飛び出した仲間たちに囲まれてあっという間に見えなくなる。 ネットをくぐり抜けて次々と中西選手に覆いかぶさる選手団。 ようやくそこを抜け出した中西選手は、佐伯選手との握手を交わした後に応援団席に両手で1回、さらに片手で1回ガッツポーズで喜びを分かち合った。
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中西選手 |
優勝決定の瞬間 |
●第2複: 2連覇達成の興奮冷めやらぬ中、第2ダブルスが始まった。日本ユニシスは福井・池田組、NTT東日本は松本・佐藤組が姿を見せる。日本リーグ2006の最終戦であると同時に、この試合は福井選手の公式戦引退試合。 勝っても負けても、選手人生の締めくくりにふさわしいゲームを期待したい。 試合開始は池田選手のサービスから。サービスプッシュを佐藤選手がネットにかけて、まずは日本ユニシスが先制。NTT東日本も、団体戦を0-3では終われないとばかりに3点を奪い返して逆転する。試合序盤は双方得点を重ねる拮抗した展開。前衛の福井選手が落とすと見せかけてのアタックロブでチャンスをつくり、これを二人で打ち込みポイントすると、松本選手にシャトルを集中して5-4と再逆転。 その松本選手も後方からのクロススマッシュ、前衛で体を目一杯伸ばしてのストップなどで5-7と挽回してくる。 7-7、8-8。だが9-9から抜け出したのは日本ユニシスペアだ。池田選手が3本のドライブで球を上げさせ、それを福井選手が打ち込みチャンスボールを引き出して、最後を池田選手が決める。 福井選手がドライブをネットインさせて決め、11-9。インターバルを挟んでも、福井選手が佐藤選手のヘアピンを読みきって潰すなどして連続ポイントを許さない集中力を見せる。池田選手の正確なサービス、3本目の処理も冴えて攻めのリズムをしっかりキープ。15-10と差をつけ、さらに福井選手が前衛での打ち合いを制して16点目。前に出てドライブ性のディフェンスを狙う松本選手を恐れることなく、しっかりと踏みとどまってシャトルを打ち込む。 この後、ユニシスペアにアンフォースト・エラーが出たのに乗じて東日本ペアが猛追し、16-15と1点差に詰め寄られるが、 福井選手のジャンプスマッシュへの返球を池田選手が打ちきって突き放す。 勝負どころで何とか追いつきたい東日本ペアも、佐藤選手の浮かせない配球や高い決定力で再び1点差と迫るものの、 池田選手の絶妙な高さのレシーブに撹乱されてスマッシュミスを誘われる。 相手に流れをつかませないユニシスペア。福井選手が相手の中間に短く落として上げさせた甘いロブを池田選手がきれいにアレーに沈めて19点、 ロングサービスへのスマッシュを池田選手がクロスドライブでレシーブエースを奪い20点とすると、 松本選手のフェイント気味のサービスプッシュで1点を返された後、 我慢して攻め続けたラリーを福井選手の球足の短いスマッシュが断ち切って21-17。勝負強さを見せる。
このままで終われない東日本ペアも、2ゲーム目ははじめにユニシスペアのミスが出たのを見逃さず攻め立ててくる。0-3、1-5。佐藤選手のヘアピンにタイミングの合っている福井選手が素早く飛び込んで2-5とするが、 コントロールのよいショットをフォア奥に決められるなどして2-8、3-10と劣勢に立たされる福井・池田組。 それでも得意の速攻で6点まで取ってついていくものの、コーナーを狙ったショットがわずかにサイドアウトとなり6-11となる。 インターバル直後、松本選手が出足の早いプッシュや角度のあるスマッシュなど、前で後ろで闘志を見せるプレーで6-14。 ここからユニシスペアも盛り返して11-16と5点差まで詰めるが、要所で東日本ペアに前で打ちきられてしまいもうひとつ届かない。結局13本でこのゲームは東日本に渡り、最終ゲームに勝敗が委ねられる。 始まったファイナルゲーム、3本のスマッシュで日本ユニシスが先制。次も福井選手の高速ドライブで前衛を抜いて攻めにまわり、池田選手がスマッシュを打ち抜いて続く。 さらに佐藤選手が2本ミスを重ね4-0。上々の滑り出しとなる。 しかし易々と独走を許してはくれないのが東日本ペアだ。1本ずつ攻めを積み重ねて4オールに追いつき、ユニシスペアのミスに乗じ6-8と逆転してしまう。 もちろん黙ってはいないユニシスペアも、ネットすれすれのドライブ、スマッシュの連打を繰り出して攻撃し8-9、 ロブのバックアウトを2本見きわめて10-9、そして福井選手の正確なサービスでプッシュミスを誘い11-9と再逆転に成功。 だがチェンジエンド後の2本を佐藤選手のドライブ性のショットで奪われ11-11。最終戦にふさわしい好ゲームとなる。 13-12で福井選手がハーフに落としたショットを、佐藤選手がダイビングしながらヒット。一瞬時が止まったかのように全員が打球を見送るが、落下地点はわずかにユニシスコートの外。これでユニシスペアに流れが来たかに思われたが、続く浮いたスマッシュへのレシーブがクリーンヒットせず、悔しさをあらわにする福井選手。 双方ともナーバスになりながら15-14、16-15、17-17、18-18と、取っては取り返されるイーブンの展開が続く。 池田選手のラウンドから放ったドライブが佐藤選手の横を抜き、19点目を先に取ったのは日本ユニシス。だが攻守交替の隙を待ち構えていた松本選手がタイミング早くコート隅へ打ち込むと、福井選手が倒れこみながら飛びつくも、シャトルがネットを越えない。19-19。コート整備の間を利用して心を落ち着かせたユニシスペアは、次のラリーでは攻めながらチャンスを窺う。福井選手が松本選手の胸元にスマッシュし、浅くなったレシーブを池田選手が下がりながら強打! 懸命に守る松本選手の返球を、再び福井選手が角度をつけてコートに突き刺し、両選手とも力強くガッツポーズ!そしてハイタッチを交わす。 ついにマッチポイントをつかみ、ベンチともども最高潮に達する盛り上がりの中で迎えた次のラリー。 ドライブ戦から福井選手がネットに切ろうとするも、ほんの5cmほど高さが足りない。 土壇場でのジュース。だがここでさらに一歩を踏み出したのは、やはり日本ユニシスだ。 オープンに上がったロブを、池田、福井、池田と連続スマッシュ。球を集められた松本選手も2本までは防いだものの、3本目のレシーブがサイドを割ってしまいラケットを叩きつけて悔しがる。 熱戦が再び終焉に近づいたこの場面、しかしNTT東日本の頼みの綱・佐藤選手が待ったをかける。 サービスプッシュからの速攻で21-21とすると、次はディフェンスにまわるも福井選手の前衛からのスマッシュをジャッジ。これが紙一重の差でエンドを割り、21-22とNTT東日本に初めてのマッチポイントが入る。 そして佐藤選手の放ったショートサービスに、飛び込んだ福井選手のプッシュがネットへかかり、熱戦の終止符が打たれた。一瞬呆然とし、そして無念さをにじませるユニシスペア。だがそんな両選手をベンチが暖かく迎える。日本ユニシスにとっての最高のフィナーレとはいかなかったものの、誰が見ても素晴らしい試合だった。 称える仲間たちに、引退する福井選手も最後は笑顔を見せ、10歳から始めたバドミントンにひとまずの区切りをつけた。
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福井(左)・池田組 |
試合を終えた福井選手 |
最終的には取得ゲーム率で2位のトナミ運輸を4分8厘上回り、日本ユニシスが2連覇を達成。 昨年に比べて苦しい道程とはなったが、ゲーム率での優勝は1試合1試合に最高のパフォーマンスを示して戦ってきた成果だ。試合に出場したメンバーはもちろん、他の選手も応援やマネージメントなどで一致団結して取り組んできた。 チーム全員の力で勝ち取った、価値ある優勝。このチーム力を武器に、きっと来年も頂点へ登りつめてくれることだろう。
なお、昨年の初優勝に続いてリーグ2連覇を決めた強運の持ち主・中西選手が今年の最高殊勲選手、そして仲尾・坂本組が殊勲選手に選ばれた。 キャプテン福井選手が今リーグを最後に業務に専念するため、この同期3人が最年長となり名実ともにチームを牽引していくこととなる2007年。 新キャプテン仲尾選手を中心に、日本で、世界で活躍できるチームを目指していく。
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