BIPROGY Foresight in sight BIPROGY Foresight in sight

事例紹介

スピード感のある情報共有がBCP物流を強化!クロノロジー型危機管理情報共有システム「災害ネット」が災害に強い物流基盤の構築に貢献

AZ-COM丸和ホールディングス株式会社 様

2022年11月14日

3PL*事業により企業の物流全般 を担うAZ-COM丸和グループ 様。昨今の気候変動による災害リスクの増加やパンデミック発生に備えて、全国の物流ネットワークを駆使したり災害時の情報管理を強化したりすることでリスクに強い「BCP物流」に注力している。

*3PL(サードパーティ・ロジスティクス):第3者(サードパーティ)が荷主企業に対して最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつ、それを包括的に請け負う業務形態のこと

丸和運輸機関
人事経営企画本部
経営企画部
部長

伊藤弘信氏

丸和運輸機関
人事経営企画本部
経営企画部
主任

小暮竜二氏

丸和運輸機関
3PL物流統括本部
BCP物流支援企画部
主任

大野理介氏

SUMMARY

  • 緊急時でも迅速な状況確認・整理が可能に
    メールで個別に共有していた災害時の情報を災害ネットに集約。緊急時でも速やかに情報の確認と整理が可能な環境を整備。
  • 使いやすさにより情報集約をスピードアップ
    操作性を重視した情報共有システムを採択。緊急時でも迷わずスピーディーな情報集約・共有を実現。
  • 効率的な情報管理がBCP対策を強化
    災害ネットを使用した防災訓練実施によりBCP対策を強化。より災害に強い物流基盤の構築が可能に。

USER PROFILE

株式会社 丸和運輸機関

株式会社 丸和運輸機関
設立:2022(令和4)年4月
資本金:3億5000万円(2022年10月現在)
本社所在地:埼玉県吉川市旭7番地1
社員数:15,480名(2022年3月末時点 グループ合計)
事業内容:物流事業(サードパーティ・ロジスティクス、輸配送サービス)

本事例に掲載された情報は、取材時点のものであり、変更されている可能性があります。なお、事例の掲載内容はお客さまにご了解いただいておりますが、システムの機密事項に言及するような内容については、当社では、ご質問をお受けできませんのでご了解ください。

クロノロジー型危機管理情報共有システム「災害ネット」

災害時などに行われている「クロノロジー(時系列)で記録する」という行為をそのままシステム化することで、今何が起きているのかをリアルタイムに把握できる「災害ネット」。PCやスマートフォンから、時系列に沿って入力した情報をサーバーで一元化し、リアルタイムで共有することで即座に状況が把握できるようになる。電話やメールなどさまざまな方法で報告されてくる、大量かつ最新の情報を、時系列でまとめた形で、自宅や外出先などからも確認できるため、情報の見落としが発生せず、迅速かつ正確な意思決定を下すことができる。航空・鉄道業、ライフライン事業、金融業、製造業などさまざまな業界での採用が進んでおり、AZ-COM丸和グループ様は物流業で初の採用となる。

環境変化に強い社会インフラとしての物流基盤を構築

新型コロナ感染症拡大によるパンデミックや大規模な自然災害の発生により、物流における危機管理の重要性を早くから察知し「BCP物流」に注力しているのがAZ-COM丸和グループ(中核会社:丸和運輸機関)様だ。同社が掲げるBCP物流の強みは、「全国1,750社の物流企業が参加する『AZ-COM丸和・支援ネットワーク』の存在と、BCPや物流などの各領域の専門家を招いての諮問委員会の設置、そして、輸配送だけではなく、保管管理や購入、廃棄まで一貫して対応できるトータルマネジメント力です」と株式会社丸和運輸機関BCP物流支援企画部 主任 大野氏は説明する。BCPや物流領域で東京大学や東北大学などの教授陣を招き、また研究員として同社の社員を研究室に派遣するなど、有識者の知見を結集し、BCP物流の専門家を育成する活動を行っているのは恐らく同社のみだろう。

AZ-COM丸和グループ様は1970年創業。小売業に特化した3PL事業を核に、2017年に新たに参入したEC物流(特にラストワンマイル*)、低温食品物流、医薬・医療物流の3つの核となる事業に加えて上記のBCP物流事業によって、環境変化に強い社会インフラとしての物流基盤構築に取り組む。BCP物流の対応としては、これまでに地震・台風・集中豪雨など多くの災害時の物流支援を行ってきた。先般の九州地区を中心とした線状降水帯の影響によって各地の交通網が混乱した際にも、「物流が止まってしまった小売店に対して、AZ-COM丸和・支援ネットワークによる広域支援を実施し、実際に車両を調達することで物の流れを継続させることができました」と、大野氏はBCP物流の具体的な事例を示した。同社は2022年4月に中期経営計画(3カ年)を発表。3年後に売上2,400億円、経常利益175億円を目指している。

*ラストワンマイル:エンドユーザーに商品が到達する際の最後の接点のこと

環境変化に強い社会インフラとしての物流基盤を構築

導入の背景と狙い 「クロノロジー×DX」の発想で災害時の情報管理の課題を解決

実際に大規模災害などが発生した場合は、災害対策室や現場において、できるだけ迅速に状況判断し、かつ的確な判断や指示を行わなければならない。その実現には、BCP対策における情報管理が重要な要素の1つとなる。

「地震や大雨などが発生した際、以前はメールによって情報伝達や共有を行っていました。対策室から室メンバー全員に対してメールを発信し、何かあればそれに対して全員に返信することで情報の伝達と共有をするわけです。『〇〇の営業所は無事です!』『●●で車両が2台浸水しました!』など個別の状況がメールで飛び交います。これによって個々の状況は把握できるのですが、情報の整理ができない。そのため特定の施設の経緯と最新状況を確認しようとしても、非常に時間がかかったり、時系列が追えなくなったりする場合がありました」と、経営企画部 部長 伊藤氏は緊急時の情報管理の難しさを述べた。

そこで、災害対策室内の「情報整理班」の責任者も担う伊藤氏は、緊急時の情報管理手法について調べ始めた。

「初歩から情報管理について勉強し始めて、『クロノロジー』という概念を学びました。この言葉はホワイドボード上に時系列に沿って情報を記述していく作業を指すものですが、アナログな対応ではスピードも遅く、発生するすべての情報を書ききれないのでは、と感じました」と伊藤氏は問題点を指摘した。伊藤氏は社内DXプロジェクトにも関わっており、DX的な発想でこの課題を解決できないか、と模索していたところたどり着いたのが災害ネットだった。

「メールでやり取りしている中から必要な情報を取り出して、例えばスプレッドシートなどにまとめ直すということもやろうと思えばできます。災害などの規模が小さく、被害もそれほど大きくなければそれも可能かもしれませんが、規模が大きくなればとてもメールやスプレッドシートなどでは対応しきれないと判断しました」と、伊藤氏は災害ネット導入の背景を語った。

選定理由 いざという時に誰でも使えるシンプルな操作性を評価

災害時などの緊急時に活用することで被害や影響を最小限に留めたり、迅速な対応が可能になったりするようなツールやシステムにはさまざまな種類のものがある。しかしどれだけ優れたツールやシステムでも、いざという時にその現場や現地にいる人が使えなければ意味がない。

「やはり実際に災害などが発生した時には、現場の人も含めてあらゆる人に使ってもらわなければなりません。従って、災害時などの情報管理システムを選択する際の基準としては、『できるだけ簡単に使える操作性』を最も重視すべきだと考えました。話を聞くと災害ネットは非常にシンプルな作りで、ちょうどこの考えにマッチする製品だと判断しました」と、伊藤氏は災害ネットを採択した理由を明かす。

比較検討のために同様の競合製品を探してみたが、比較できるような同種の製品は見当たらなかった。掲示板やWeb会議システムなどを代用することも不可能ではないが、災害ネットはそもそも災害時の情報管理に特化した専用システム。上記のような汎用的なシステムよりも圧倒的に使い勝手が良いだろうという考えの下、災害ネットの導入を決めた。

「初心者でも使いやすく、タイピングさえできれば使えるという簡単さ。そして機能的にも、どの班に対して発信すべき情報なのかを入力者が判断して、その情報が必要な班に対して的確に情報発信・共有できるという点も評価しました」と、経営企画部 経営企画課 主任 小暮氏は操作性と機能の両面から災害ネットの採択理由を説明する。

導入効果 実動訓練で災害ネットによる情報集約の有効性を確認。情報共有のスピード感も向上

システム導入に際しては、BIPROGY側で全体の準備を整えた。AZ-COM丸和グループ(中核会社:丸和運輸機関)様には主に初期設定値の検討を実施していただき、導入決定後からシステムリリースまでに要した期間は概ね1カ月程度。もちろん事前にシステムデモや操作レクチャーなどを十分に実施した上でのリリースだ。導入後には、早速災害ネットの活用を組み込んだ防災訓練を実施した。

「今回は地震による停電が発生したという想定で、当社管理部門のみによる実動訓練を実施しました。災害対策室設置から安否確認班、情報整理班、車両確認班、医療救護班、総務班など各担当班10班に対して、状況付与しながら対応策を講じることと、災害対策室全体で災害対策会議を実施することが、訓練の内容です」と大野氏は訓練の全体像を説明した。

この訓練の中で災害ネットは、情報整理班における情報集約の役割を担った。災害ネットを組み込んだ訓練としては、今回が初めてのため、発生事象や状況変化をリアルタイムで入力することはあえて行わず、各対応班での状況を紙で情報整理班に提出し、それを入力することで情報を集約。どのような形で情報が集約されるのかを検証した。入力後の災害ネットの画面は、訓練会場内の大型モニターで閲覧可能にし、災害対策室長である副社長を含む役員3名へはスマートフォンでも確認できるようにした。

「情報共有に関しては、訓練中の緊迫した状態でわざわざモニターを見に行く余裕がない、ということを事前に想定できなかったことが、訓練後の反省点として挙げられました。初めからスマートフォンなど手元で閲覧可能な環境を整えたほうが、情報共有がスムーズにいったのではと思います。対応各班でも、目前の状況への対応に精一杯で、全体の状況を把握して判断するという余裕がまだ足りていなかったようです」と、訓練時の情報集約・共有の難しさを伊藤氏は振り返る。

もちろん反省点ばかりではない。課題が明らかになると同時に、どのように活用すべきかの具体的な方向性も見えてきた。

「訓練中に各班の班長が集まり、各班の状況を報告、共有しながら対策を検討する対策会議があります。もし災害ネットで事前に共有できていれば報告時間が短縮でき、今後の対策を協議する時間に充当することができます。今回情報の集約や整理は災害ネット内で十分可能であることが分かりましたので、先ほどの状況確認時間の短縮など、次のステップに進める手応えは感じました」と、伊藤氏は今後の災害発生時における情報共有の今後の方向性を示した。

今回は、災害発生直後から1時間半経過後の災害対策室の動きと、5時間後の動きを対象に訓練を実施した。1時間半後というのはほぼ発生直後の状況で、避難して従業員と家族の安否確認、安全確認をし、災害対策室を設置する程度の時間を見込んでいる。例えば「安否確認がまだ十分に済んでいない」など、その状態で実際にどのような情報が集まってくるのかということが検証できた。また、5時間後の想定では、ある程度情報が集まってきた状態でどのような対応を取るべきか、などが検討できた。そして同時に今後の災害対策および訓練を改善する上での課題を認識することもできた。

「今回は各班からの情報を一度情報整理班に集約した上でシステム入力していったため、情報集約のスピードが必ずしも十分ではありませんでした。今回のように対応済の情報を上げていくのではなく、発生時点で未対応のものも含めて報告・集約していくことができるかどうかが課題の1つだと感じました。また今回の訓練では、災害対策室長と情報整理班、および総務班が事務局的な役割を果たしていたのですが、上記のシステム入力作業なども含めて要員数が不足しており、人数バランスも含めて要員確保をどうするかも今後の課題です」と、大野氏は今回の訓練を通じて明らかになった課題を挙げた。

訓練とは言え、災害ネットに対する評価はどうだったのだろうか。

「今回の訓練では、問題なく情報集約ができるか、情報集約の際の課題を検証することが目的でしたので、そういった我々の計画から言えば非常にうまくいったと思っています」と、伊藤氏は評価している。具体的に運用した現場サイドからは、小暮氏より次のような意見をいただいた。

「やはり実際に使ってみても本当に使いやすい。文章で状況を表現することで具体的な内容を書き込むことができ、さらに入力後はボタン1つで簡単に情報を共有できるので、かなりスピード感があります。今回は情報整理班内での活用・検証が主でしたが、他の班や現場でも使われるようになれば、一層情報の密度が増し、重要な情報が漏れなく必要な部署や上層部に伝わるようになるのではないかと思います。ただし、いざという時にうまく活用するためにはある程度慣れが必要ですので、いかに日頃から操作に慣れておくかが運用上の課題でしょう」

令和4年に実施した「地震による停電が発生したという想定」で行った実動訓練の様子(提供:丸和運輸機関様)

実動訓練画像1
実動訓練画像2
実動訓練画像3

今後の展望 現場やグループ全体への災害ネットの展開を検討。より災害に強い物流基盤の構築を目指す

今回の災害ネットを活用した防災訓練によって、災害対策室全体の情報集約が可能なこと、その有効性が確認できた。今回は検証目的でもあり、情報整理班のみで災害ネットを運用したが、そのことで入力作業が同班に集中してしまうこと、さらに入力要員を含めた人員バランスの適正化が必要なことなどが課題として明らかになった。

「まだ企画段階ですが、まず今回の訓練の対象になった本社管理部門の各対応班(10班)に対しては、災害ネットのIDを付与してそこから直接情報が上がってくるような仕組みにしておかなければならないと思っています。連絡票や電話などでやり取りしていると、スピードや情報量の面でいざという時にとても対応しきれません」と、伊藤氏は災害ネットの活用を拡大する意向を示した。

次の段階で考えるべきは、災害ネットを活用して災害発生時などに現場とどのように情報を共有するかだ。

「今回の訓練は当社の管理部門が中心でしたが、その成果を生かして次は運行部門を含めた現場でどのように災害ネットを活用するのかを検討しようとしています。また、AZ-COM丸和グループには北海道から九州まで全国にグループ会社が存在しますが、訓練や災害ネットの活用を通じて蓄積した防災やBCPに関するノウハウを、全国のグループ会社へ展開していくことも考えています」と、大野氏は今後の防災、BCP対策の方向性を語った。

現場やグループ会社への展開など災害ネットの活用範囲を広げる上で必要となるのが、日頃からの慣れだ。いざ緊急事態が発生した際に、日頃経験していないことをスムーズに行うのはなかなか難しいはずだ。

「訓練の場合は、事前に使い方を説明してから始めることができますが、実際の災害の場合はそうはいきません。本番で十分に活用するには日頃から何らかの形で慣れていることが必要だと考えます。従って、平時の業務で日々報告するようなことや、日頃から練習になるような災害ネットの使い方を検討しているところです。システム自体は使いやすいので、特別な入力スキルのようなものは必要ありません。重要なのは慣れだけですね」と、伊藤氏は非常時でもスムーズに活用するために必要なポイントを挙げた。

最後にAZ-COM丸和グループ様のこれからの事業方針について伊藤氏は次のように説明した。

「中期経営計画にも明記しているとおり、まず、EC物流や食品関連物流、そして医療・医薬物流の3つのコア事業を中心に事業拡大していくこと、そして事業拡大を支える人材の確保・育成が当面注力すべき領域と考えています。また、昨年専門組織を立ち上げたDXについても、さらに積極的に進める方針で、今年8月には経済産業省から『DX認定』のお墨付きをいただきました。また、企業の経済的価値中心の時代から社会的価値がより重視されつつある時代にあって、当社もSDGsへの取り組みの一環として、環境問題や気候変動に対して物流企業としてしっかりと対応していく方針です」

気候変動の影響によって、大規模災害の発生リスクは年々増している。そのため災害発生時等のBCP対策は、各企業の経営戦略上でもより重要なポジションを占めつつある。加えて、物流事業者が担うサプライチェーンは、人々の生活や企業活動を支える社会的インフラとして不可欠なものだ。AZ-COM丸和グループ様では、より高度なBCP対策・体制を築き上げることで、自社の事業継続だけではなく、より堅固な物流基盤の構築にさらに尽力していく。

丸和運輸機関  大野氏、伊藤氏、小暮氏

※本事例に記載された情報は取材時点のものであり、社名、内容など閲覧される時点では変更されている可能性がありますことをご了承ください。本事例は情報提供のみを目的としており、BIPROGYは、明示的または暗示的を問わず、本事例にいかなる保証も与えるものではありません。

日本ユニシス株式会社は、2022年4月1日よりBIPROGY株式会社に商号が変更となりました。

*記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。